みなさん、こんにちは。花粉が猛威を振るっています。ここまでくるとちょっとした兵器みたいなもので、仕事になりません。昨日はマスクを付けたまま、三菱総合研究所で行われた「第3回 海洋バイオマス・シンポジウム」を聞きに行きました。会場は満員。かなり多くの人が海藻を使ったバイオマスエタノール製造の可能性について、話を聞きに来たようでした。
 南極に9回も行ったことのある、水産総合研究センター遠洋水産研究所の永延幹男研究室長の話では、南極に関する科学的なデータを見てもやはり温暖化は進んでいるようだとのこと。興味深かったのは、英国のある研究者が海の深層水を利用して、それを引っ張り上げ、藻類の森を作って二酸化炭素を減らせる可能性があると指摘しており、永延研究室長もその可能性を否定していなかったことです。
 一方、褐藻のホンダワラ科海藻の養殖をしている京都府立海洋センターの竹野功璽氏は、人工的に採集した海藻の幼胚をコンクリートブロックに植えつけて、一定期間培養し、さらに1年半ちかく大型水槽で攪拌育成して海面で養殖することに成功。竹野氏は藻場を育成する研究をしています。ただ、日本海の場合、外海に行くほど(海藻が育つようなところでは)栄養塩が少ない上、海藻はしけの多い冬から春にかけて収穫しなければならず大量生産は現実的に難しそうだとの見解を表明していました。
 会場からは、「で、バイオエタノールは大量に作れるのか?」という質問が複数投げかけられました。もちろん技術的には(コストをかければ)海藻からエタノールを製造することは不可能ではないでしょう。実際、竹野氏も養殖した海藻を使ってバイオエタノールを製造したことがあり(研究のメインではないものの)、できなくはありません。ただし、そのために海藻を大量に養殖、収集することはできるのか。「海藻→バイオエタノール」には、生産の段階で高い壁が立ちはだかっています。
 海藻の利用という意味では、英国の研究者のように、バイオエタノールへの変換エネルギーや変換コストによっては、海藻を大量に養殖しても、エタノールにせず、単に二酸化炭素の吸収源として利用するという考え方もあるでしょう。また、別の見方をすれば、海藻の養殖(藻場の再形成)は魚の消費量が世界的に増大している今、天然魚の漁場を確保する意味でも求められています。
 しかしながら、多くの人の関心はエタノールの一点に集中。前回のコメからバイオエタノールを作る話もそうですが、このような状況を見るにつけ、エタノールを作れればOKということではなく、エネルギーやコストの収支、さらには一次産業をどうするかということとセットで考えなければならないのでは? と思ってしまう今日この頃です。
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                             記者 久保田文
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