みなさん、こんにちは。先日、東京農工大学の養王田教授が土壌浄化関連のベンチャー企業を立ち上げたというので取材に行きました。そこで知ったのですが、国内の土壌浄化ビジネスはすごい勢いで伸びています。背景には、中小企業や個人事業者の土地売買に伴うニーズがあります。典型的なのがクリーニング屋さん。店をたたんで土地を売るのにドライクリーニング溶剤を浄化しなければならないケース
が多いようですね。
養王田教授の記事はこちら↓
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0070/
 ただ、土壌内の微生物を活性化したり、外部から微生物を投入する、いわゆるバイオレメディエーション技術はほとんど使われていないのが実態です。業界関係の方に伺ったところ、「バイオレメディエーションは伝家の宝刀であり、実際は使わなくとも技術を持っている企業だと土壌浄化事業を請け負いやすくなる」のだそう。環境省と経済産業省がバイオレメディエーション(特に、微生物を投入する技術)について指針を作っていますが、多くの企業が申請しているという状況ではなく、今のところ数社企業が伝家の宝刀を手にしただけというのが実情です。
 さて、バイオマスの話題ですが、米エネルギー省(DOE)は、2008年1月29日、バイオリファイナリー実用化のための新たなプロジェクトを立ち上げました。2007年から2010年までに、DOEが4社を対象として、バイオリファイナリーの小規模プラントへの開発助成を行うというもの。DOEからの産業界への補助は3分の1程度になる見られますが、予算は4年間で総額1億1400万ドルです。ただ、よほど募集が多かったのか、DOEは第2ラウンドも予定しているとのこと。米国のバイオマスブームと、セルロース系バイオマスへの期待を感じます。
 プロジェクトで開発されるのは、多様なバイオマスからエタノールなどの輸送用燃料や化学品などを製造するプロセスです。採択されたのは、トウモロコシ繊維、トウモロコシの茎葉、スイッチグラス、飼料用ソルガムから、バイオエタノールを製造する米ICM社、廃材からリグニンやフルフラールを製造する米Lignol Innovations社、農業・林業資材からエタノールを製造する米Pacific Ethanol社、廃材からディーゼル燃料を製造する米Stora Enso North America社の4社です。
 キーワードは、「小規模スケール」と「多様なバイオマス原料」というところでしょうか。このあたりの狙いや発想は、日本のバイオマス政策の参考にもなりそうですね。DOEは昨年も似たような開発助成を発表しており、Iogen社、Blue Fire社、Abengoa社、Poet社、Range Fuel社、Alico社の6社が採択されております。これらの企業では、徐々にプラントもできつつあり、セルロース系バイオマスの商業化が現実のものになりつつあります。輸送量燃料の石油からのシフトを明確に打ち出している米国は、予算もケタが違います。この予算でどこまでできるのか、注視していきたいと思います。
 最後に、今日のメールでは日伯エタノールの掛林さんにご寄稿をいただきまいた。面白いです。理由はお読みいただければわかるので、ぜひお読みください。
※※みなさまからのご意見、ご批判をお待ちしております。
mailto:nbt-e@nikkeibp.co.jp
                     日経バイオテク 記者 久保田文
◆BTJの関連記事◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           農業・環境関連の記事
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日立造船、北海道での実証実験プラント、
エタノール無水化システムを受注
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0068/
農工大の養王田教授ら、
土壌浄化関連技術開発でベンチャー立ち上げ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0070/
サントリー、青いバラを09年に発売へ、
安定的に大量生産できるかが事業の鍵
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0203/
農水省、生産調整に加え飼料用やエタノール用の需要増で、
多収性イネの原種種子を広く提供へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0276/
海外重要発表、米エネルギー省、
バイオリファイナリープロジェクト4件に1億1400万ドル拠出へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0184/
海外重要発表、DSM社とRoquette社、
バイオコハク酸生産のための実証プラントを建設へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0182/
海外重要発表、米エネルギー省のJGI、
バイオエネルギー研究に向けダイズのゲノム配列データを公開
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0179/
海外重要発表、Perdue AgriBusiness社、
低リノレン酸ダイズをPioneer Hi-Bred社から調達
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0314/
海外重要発表、Syngenta社とAthenix社、
トウモロコシとダイズの害虫コントロールで提携
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0313/
海外重要発表、KL Process Design Group社、
セルロース由来バイオエタノールの生産開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/0312/
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◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
         日伯交流百周年     ―― 日伯エタノール 掛林誠氏
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■ある架空の首脳会談
 日伯交流xx年目の某日某所、ブラジルの大統領(B)と日本の首相(J)の架空会話をでっち上げてみた。
B:日本は私が敬愛して止まない国だ。
J:ブラジルこそ、神に愛された国はない。素晴らしい大自然だ。世界が羨望する資源と食料の宝庫だ。
B:地震もないし、台風もない。神はブラジル人に違いない。しかし、神はブラジルで1つだけ誤りを犯された。貧しい民をつくりすぎ給もうた。貧困問題の解決こそが私の人生をかけた最大の仕事だ。
J:ブラジルの日系人社会150万人で、世界最大。日系移民の方々が代々ブラジルの農業や産業や経済に大きく貢献したと聞き、誇りに思う。
B:あとyy年で、日伯交流zz周年記念になる。働き者の日本人移住者がブラジルの発展の基礎を固めてくれたと深く感謝している。ブラジルはまだまだ発展せねば、貧困問題は解決できない。ブラジルの資源を上手に使いこなすためにも日本との絆を深めたいと心から願っている。
J:是非やろう。親日的なブラジルをこれからも大切にしたい。世界の課題に協力して立ち向おうではないか。
B:有り難い。日本の首相は大変だと同情している。ブラジルの22分の1しかない、小さな国土で、1億人以上の民を養う。優秀な日本人ならではのことだが…。
J:人はさまざま、人生はいろいろ、政治は一寸先が闇、中東には世界の願いが届かない。
B:日本のように石油の中東への依存が高くてはご心配であろう。中国や東南アジア諸国はこれからますます石油の輸入が増え、中東への依存も高まるし…。
J:だから、石油への依存を減らす、脱石油が私の基本政策だ。
B:さすがは首相だ。ブラジルは、太陽の恵みのエネルギー源であるバイオエタノールを自動車燃料として使っている。バイオエタノールをガソリンに混ぜるだけ。ブラジルでは25%のバイオエタノールが強制的に混入している。いくら経済大国とは言え、純粋なガソリンだけで走るなんて、今や贅沢すぎる。バイオエタノールを使う分だけ、石油の使用量は減り、中東への依存も減り、地球環境問題への貢献にもつながる。日本がブラジルからバイオエタノールを買ってくれたら、そのお陰でブラジルの貧困問題も解決できるかもしれない。
J:それはいいアイデアだ。日本にもいろいろ知恵を貸してもらいたい。
■そして後日談
 BはJからのゴーサインを待ちに待ったが、なかなか来ない。しびれをきらしていたところへ、駐日大使からの緊急報告。Jの「脱石油」論への反発が導火線となり、「バイオエタノール輸入はブラジル一国に依存するからエネルギー安保上無意味」論が政府・国会内で優勢となり、「諸物価上昇の主犯はバイオエタノール」論が出て、更に、「食料を燃料にするのはけしからん」論が圧倒するに及んで、バイオエタノール推進派の内閣は総辞職。Bは、「鉄鉱石も大豆も対日輸出分は減らして、中国に振り替えよ」と命じ、そして十字架の前に跪き、「願わくば、日本の首相はいつか日系ブラジル人に替え給え」と祈った。
■後日談の後日談
 バイオエタノールばかりか鉄鉱石や大豆が日本パッシングする中、初めて後の内閣は事態の深刻さに驚愕し、平身低頭団を急遽ブラジルへ派遣。中国分の一部をかなりの割増価格ながら購入でき、平身低頭団は大成功と帰国後発表。他方、地方分権化が進み、食料・エネルギー獲得に地方自治体が直接取り組み始める中で、某県の某市長に日系ブラジル人デカセギ系日本人が当選。
■今年は百周年
 さて、2008年1月1日、日伯交流百周年の年が始まった。この1年は、6月18日に首都ブラジリアで皇太子殿下のご臨席の下で開催される記念式典を頂点として、日伯両国で様々なイベントが繰り広げられ、サンバのリズムで大いに盛り上がることになろう。
 日伯交流99年目の昨年は、「日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議提言」(日本側代表:新日鐵の三村社長、トヨタ自動車の渡辺社長、三井物産の槍田社長)が発表され、ブラジルの航空機メーカーエンブラエル社製の小・中型機が日本市場の参入に成功し、ブラジルが日本方式のデジタルTVシステムを採用した。100年目の今年は、ブラジル国営石油公社ペトロブラスがこの3月から4月にかけて沖縄・南西石油の経営主導権を握り、アジアにおける同社のビジネス拠点にする。
 環境・エネルギー・経済発展が主要テーマとなる洞爺湖G8サミット時にはルーラ大統領の来日も期待される。バイオエタノール利用促進のための品確法と税制の改正が近々閣議決定され、今次の通常国会において、無事成立・施行の運びとなれば、石油連盟方式のETBE同様、ブラジル方式の直接混合E3も徐々に広まることも期待できる。今年が日伯関係の次の100年を占う試金石の年になることは間違いないなさそうである。
■次の100年は・・・?
 国と国との関係には、一面景気循環と同様、上がったり下がったりが繰り返すようであり、長期的には上昇・拡大軌道と下降・縮小軌道の2つがあるように思われる。これからの100年がどちらの軌道に乗っていくのか、いずれの軌道もその一部が既に我々の目の前には敷かれているように思われる。どちらの軌道を選択するかは我々でもあり、また、相手でもある。どちらの選択肢を選んでいくかは双方の器量が問われてこよう。
 それにしてもつい最近、「ブラジルでは森林破壊をしてまでサトウキビやらエタノールをつくっているというじゃないですか。ブラジルはひどい国ですね。世界への犯罪行為ですね」という、小首を傾げたくなるようなコメントに接した筆者は思わず背筋がゾーッとしてしまった。積極的に日伯の絆を強化していこうという直向きな努力が積み重ねられている一方で、「ある情報」が大いに曲げられながらしかも大量に流通してしまうことによって、知らず知らずのうちに「事実」として納得されてしまう現代。
 グーグルで第1次日本人移住者を100年前に運んだ「笠戸丸」を検索すれば、0.21秒で13100件がパソコン画面に出るし、当時約50日、約1200時間もかけて航海したものが、現代では飛行機でブラジルに行けば、機中内が約24時間。乗り継ぎでの待ち時間を入れても30時間強であり、100年前の40分の1になっている超便利な現代社会。どれだけ世の中が便利になっても、情報・事実を正確に把握し、判断し、構想を練り、実行していくという人間の営みは変わらず、その知恵も格段に進化するわけではない。
 いつの時代もどこの国も苦労してきたことである。そういう思いに至ると、日伯百周年という節目に当たり、直前の現象面だけに囚われることなく、物事の本質を見る眼を養い、長期的な視点に立って日本の未来のかたちを真剣に求めていくようにしたい。節目の年頭に当たり思いを新たにした次第である。
                        (日伯エタノール 掛林誠)