みなさん、こんにちは。昨晩、あるニュース番組を見ていたら、国内のバイオエタノールビジネスの現状や問題点についてについて特集していました。要旨としては、二酸化炭素の排出削減効果を謳って国内市場にも導入されつつあるバイオエタノールではあるものの、普及に向け問題点は多いという内容です。
 問題というのは、バイオエタノールを含む燃料に2つの規格があること。ご存知の通り、経済産業省、石油連盟が推し進めるETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)を含むバイオガソリンと環境省が推し進めるE3(バイオエタノール3%混合ガソリン)の2つです。石油連盟は「流通のためのインフラを考えた時に、ガソリンスタンドなどへの設備投資が必要ないETBEが好ましい」と話し、環境省は「E10などを視野に入れるには、E3方式のほうが好ましい」と主張。番組ではどちらが良い悪いという議論はありませんでしたが、「一本化が望まれますね」ということでまとまりました。
 バイオエタノール導入の目的である二酸化炭素の削減効果などを考えると、確かに環境省の主張は一理あります。ただ、もしE3方式を進めていくのであれば、石油連盟が主張するインフラ投資の問題が表面化することは必至。大阪府のプロジェクトでバイオエタノール・ジャパン・関西からバイオエタノールを購入し、E3を販売しているガソリンスタンドは、もともと大手からガソリンを購入していたものの、その契約を打ち切り、ガソリンスタンドにも投資をして実証実験に参加しているようですが、現在ガソリンの値段も高く、どのスタンドも経営が苦しい中で、E3のためにインフラ投資するのは簡単ではありません。
 となると、E3方式を普及させるためのインフラ投資の一部を補助金などの形で政府が肩代わりするとかいった話が出てきそうですが、大きな問題なのは、そういった財政支援を行えるほど、今のところ日本でバイオエタノールを普及させるべきという(国民や官僚や産業界の)合意がなされていないということです。そしてインフラ投資の問題は、バイオエタノールの原料が食料から非食用作物や廃棄物になってもついて回ります。
 バイオエタノール、特にセルロース系バイオマスの利用などの実用化には、糖化や発酵のための技術開発が重要ですが、同時に原料の収集やエタノールの流通や混合のためのインフラ投資も同じぐらい重要です。この壁をクリアできるかが、今後日本のバイオエタノールの普及度合いを左右することは間違いありません。
 一方、08年の米国のバイオエタノール産業にもインフラの壁が立ちはだかりそうです。先日、米Purdue大学の農業経済の専門家であるWally Tyner氏が発表した予測によると、米国におけるバイオエタノールの生産量は急増しており、08年の終わりに130億ガロンに達する見込み。ただし、市場に出回るバイオエタノールは120億ガロンかそれ以下にとどまる見通しだというのです。
 理由は、トウモロコシをバイオエタノールにする能力が上がっても、製造したバイオエタノールを輸送し、ガソリンに混合するためのインフラ整備が追いつかないから。米国ではトウモロコシ農家などが共同で農場の近くにバイオエタノール生産プラントを作り、そこから鉄道をひいてバイオエタノールを輸送。各地でバイオエタノール用に作ったタンクなどを利用して、ガソリンに混合、消費者に供給されます。しかし、鉄道の整備やタンクの設置などが間に合わず、作っても使えないバイオエタノールが増えるだろうというわけです。
 そのため、Tyner氏は08年、米国ではバイオエタノール価格が下がり、バイオエタノールプラントの中には操業を停止するところも出てくると予想。また、生産してしまったバイオエタノールから輸出に回る分が増えるのではないかと見ています。もちろん、これで米国のバイオエタノール産業そのものにブレーキがかかるわけではありません。
 ただ、日本を見ても米国を見ても、バイオエタノールの使用量を増やすには、そしてバイオエタノール産業を成長させるには、原料供給、バイオエタノール生産、輸送、混合、供給のバランスが重要であり、中でもインフラ整備には巨額の投資と長い時間がかかるという認識は最低限必要なようですね。
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                     日経バイオテク 記者 久保田文
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