みなさん、こんにちは。世界で下げている株価とは対照的に、原油をはじめとする資源価格は高騰を続けています。天然ガスの世界も同様です。世界の需要が増えていることに加え、原油高も手伝って、天然ガスの価格は上昇傾向にあります。比較的低い単価で長期契約できる国内大手のガス販売会社はともかくとして、国内中小のガス販売会社にとっては、これは重大な問題です。
 最近、天然ガスの価格高騰にあえぐ国内のガス業界が注目すべき動きが出てきました。日本総研や出光興産、日本ガスなど11社が共同出資して合同会社バイオガス・ネット・ジャパン(東京都・港、代表社員は兼松)が設立されたことです。同社は、中小企業である吸着技術工業のゼオライトを利用したバイオガスの精製技術をコア技術に、畜産廃棄物や食品廃棄物を発酵させて発生するメタンガスの新しい流通網を作ろうとしています。
 従来から畜産農家や食品メーカー、レストランなどは糞尿などの畜産廃棄物や食品廃棄物を発酵してメタンガスを取り出すバイオガスプラントを持っていたものの、そこから発生するガスは、硫化水素、二酸化炭素などの不純物を含んでいました。高い純度のメタンガスがとれないため、専用のコジェネレーションシステムなどと組み合わせて電力などとして利用するしか出口がなかったのです。また仮に電気にしたとしても、国内の売電価格は低く、補助金を使ってバイオガスプラントを立てたものの、多くがフル活用しているとは言いがたい状況でした。
 吸着技術工業などが開発したバイオガス精製機は、メタンガスを95%以上の純度に精製することができるため、精製したガスは汎用機にも使えるほか、一定以上の量があれば天然ガス自動車、ボンベやパイプラインで流通させることもできそうです。当面、出資企業がバイオガスプラントやバイオガス精製機を販売し、バイオガス・ネット・ジャパンは輸送用ボンベの開発などを行う予定。
 同社は北海道の畜産農家や関東の廃棄物業者、鹿児島県の畜産農家などを巻き込んで、ガスを流通させるネットワークの構築を行います。これまでの試算では、限られた量のバイオガス発生量でもコストが見合うと見られており、全国に散らばって存在している少量のバイオガス発生源をつなぐネットワークを作れる可能性もあります。
 前述のような理由から、安価なガスを確保したいガス業界からも既に引き合いが来ているようで、バイオガスは国内の新しいエネルギーとして再び注目を集めることになりそうです。出口がととのってくれば、今後はいかにメタンガスを効率よく発生させるか、その条件や技術の研究が推し進められるかもしれません。
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                     日経バイオテク 記者 久保田文
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◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 2008年のバイオマス政策の動きの予想
  ~セルロース系、樹脂系、森林系への展開~ ―― 農林水産省末松広行氏
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 あけましておめでとうございます。 2007年は、バイオ燃料、とりわけバイオエタノールに大きな注目の集まった1年でした。農業の可能性を拓くものとして、地球温暖化対策に資するものとして、バイオエタノールは、世界中でその推進政策がとられました。 一方、急激なバイオエタノールの生産拡大の現実の前に、その問題点・課題についても指摘されるようになってきました。例えば、本当に地球温暖化の効果があるのか、とか、食料とエネルギーの取り合いが途上国を中心として新たな食料問題を引き起こすのではないか、というものです。
 2008年は、これらの状況をも加味して、バイオマス政策は少しずつ変化していくのではないかと思っています。 以下、新年に思いついた展開について述べてみます。
■バイオエタノールはセルロース系に力が注がれる。
 糖質、でんぷん質からのエタノール生産は、その基本的手法が酒造りと同じということから、早くから本格化し、効率を上げるために大規模な施設の建設が進んでいます。 上述のようにいろいろな問題が指摘され始めましたが、世界中にて、現在建設中の大型プラントがたくさんある以上、今後もしばらく糖質・でんぷん質からのエタノール生産は増加し続けると思われます。 しかし、貴重な食料と競合しない、セルロース系からのエタノール生産がこれからのカギになることは多くの人が指摘しているところです。
 2008年は、セルロース系からのエタノール生産が実用化に向けて大きく進展すると思います。セルロース系といっても、稲わらやトウモロコシの芯のようなソフトセルロース系と木質のようなハードセルロース系に分かれますが、まず、ソフトセルロース系について述べてみたいと思います。
 ソフトセルロースは、例えば稲わらで考えると、量はたくさんあり、十分に利用されていない。人間は食べられないが牛などが食べられることから考えても、その糖化アルコール発酵は、早期に実用的なシステム開発の可能性がある、という状況だと思います。 日本という土俵で考えても、コメの生産量よりも稲わらの発生量のほうが多いという現状です。
 この活用が図れれば、安価な原料からのバイオエタノール生産が可能になります。世界が実用的な技術開発にしのぎを削っているのも納得されます。糖質やでんぷん質からのエタノール生産では、世界からだいぶ遅れて実用化を迎えたわが国ですが、セルロース系の技術開発では、遅れることなく成果を出すことが期待されます。
 といっても、海外の開発には相当の資金が提供されているといいますから、それに打ち勝つことは並大抵ではないと思います。わが国でも、公的な研究機関のほかに、自動車会社、重電メーカーなどいくつかの企業が研究を進め、一定の成果を出しつつあるようです。 政府としても、農林水産省では、2008年度予算において、「日本型バイオ燃料生産拡大対策」として、「ソフトセルロース利活用技術確立事業」を予定しています。
 このような事業を活用して、欧米に負けない開発が進むことが期待されます。なお、1月25日(金)に「日本型バイオ燃料生産拡大対策に関する意見交換会」が農林水産省の会議室で開催されます。バイオ燃料施策の動向や、「ソフトセルロース利活用技術確立事業」の概要を説明するとともに、原料部門とバイオ燃料製造部門の担当者が一同に会するということで、現状について議論を深めるいい機会ではないかと思います。 既に80名以上の参加申し込みがあるようですが、興味のある方は問い合わせていただければと思います。
■樹脂に注目が集まる。
 実は、私は以前からバイオプラスチックの可能性についての思い入れが強く、職場の同僚に諌められることがよくありました。 バイオエタノールなどの燃料系としての活用は、やはり付加価値という点でなかなか難しい面がありますが、プラスチックの代替として使う趣旨系としての利用は、将来的に大きな可能性があると思います。
 これまで、バイオマスプラスチックとしては、ポリ乳酸が有名です。このポリ乳酸は生分解することなどとてもいい特徴がありますが、これだけは石油系のプラスチックが果たしていたすべての役割を代替することは難しいことがだんだんわかってきたと思います。
 2008年は、ポリ乳酸だけでなく、バイオ・ポリエチレンとかバイオ・ポリプロピレンなどのバイオ由来の汎用プラスチックが実用化に大きくカーブを切り、注目されると思います。バイオマスからエタノールを作って、それをエチレンにして重合させればバイオ・ポリエチレンということですから、単純な燃料利用よりも価値あるものとして製造する価値はあると思います。あと、木質の活用として、リグニン、リグノフェノールの活用も進んでいくのではないかと思います。
■森林系の活用が進む。
 バイオマスの活用でこれから注目されるのは森林系だと思っています。そもそもそのまま燃やしても燃料として活用できるもので、単純に粉体化・ペレット化を効率よく進めることで単純に活用する道が大きくなると考えられます。ストーブとしての利用については、既に現時点で燃料としては木質ペレットのほうが石油系より安価であるような例も多くあるようです。
 一方、ストーブは石油ストーブが極めて安価に提供されているのに対して、ペレットストーブはまだ高価だということが問題として残っています。森林系からのエタノールなどの生産も実用化に向けて大きく動くのではないかと思います。2008年の農林水産省の予算には、「森林ニュービジネス」の支援策ということで、これらの取り組みに対しての補助金が予定されています。
 このほからも、いろいろな動きがあると思います。最後に、今年は、北海道洞爺湖サミットの年です。サミット開催に向けて、様々なプロジェクトが出てくると思います。しばらくサミットに向けた動きに注目する必要がありそうです。以前、本稿で述べた海外への協力についてもサミットの大きなテーマになることが期待されます。
 これに関連して、バイオ燃料政策に関する国際シンポジウムがタイで開催されることが決まりました。洞爺湖サミットに先駆け、日本型バイオ燃料拡大対策をアジアへ発信するため、アジア各国のバイオ燃料政策担当者により、今後の課題整理や必要となる政府間協力について話し合おうというものです。2月25日と26日、タイ・バンコクのクイーンシリキット国際会議場で開催されます。参加の申し込み等は農水省のホームページをご参照ください。 シンポジウム開催に合わせて、民間企業主体の現地調査団の派遣が行われ、バイオ燃料分野におけるビジネスチャンスの可能性が検討されるとのことです。(末松広行)
タイのバイオ燃料事情現地調査のHPはこちら↓
http://www.jora.jp/txt/event/08thai.html