みなさん、こんにちは。エネルギーやプラスチックの原料が石油からバイオマスにシフトしていますが、農薬の世界でも似たようなことが起きています。化学合成の農薬からウイルスワクチンや生物農薬へのシフトです。今日はそれに関連した、防除資材の話です。実は今、農林水産省は農業現場で使われている農薬(農薬登録されているものを指す)以外の防除資材に網をかけるための仕組みづくりを進めて
います。
 これまで農業現場では、雑草や病害虫の防除のため、現場の知恵としてオリーブオイルを撒いてみたり、アルファルファを生やしてみたりといったことが行われてきました。ただし、中には毒性の物質を使う農家もいたため、食の安全の観点から、使って良い防除資材をリストアップしようということになったのです。
 それが先日までパブコメを募集していた特定防除資材です。毒性物質やまったく効果効能がないものについては特定防除資材から外す。一方で、効果が期待できるものについては、リストアップした上で今後安全や効果を確認する手続きを進めるように企業などに促そうというわけです。
 この動きはこれで悪いことではないと思います。ただし、現在一部で問題になっているのが、植物ウイルスワクチンです。これまで製剤として認められた植物ウイルスワクチンは国内に1つしかなく、それも既存の農薬の審査の枠組みで認められました。そのため植物ウイルスワクチンは特定防除資材として扱われないことになりそうです。しかし、農薬に比べて特定防除資材の審査の仕組みは多少ゆるやかなので、要は農薬か特定防除資材かによって実用化までのハードルの高さが異なるのです。
 となると、何が農薬で何が特定防除資材か、どうやって線引きするのか、ということになってきます。私は個人的には植物ウイルスワクチンにせよ、天敵昆虫などの生物農薬にせよ、それぞれにあった審査の仕組みが必要なのではないかと思っているのですが、パブコメの結果は現在農林水産省が整理中。今後、問題がどのように展開するか、興味を持って取材していきたいと思います。
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                     日経バイオテク 記者 久保田文
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◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    年始のシンポジウムはロッテルダムから
                ―― 地球環境産業技術研究機構 湯川英明氏
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 今年も昨年以上にバイオリファイナリー関連のシンポジウム等が予定されています。2008年のトップを切ってオランダ・ロッテルダムで開催された、EU自動車バイオ燃料・フォーラムに参加してきました。このフォーラムの概要をご紹介しましょう。
 
 会場はロッテルダム中央駅のすぐ近くのコンベンションセンターで、入り口にはSaaB社などのエタノール車が何台も並べられフォーラムの雰囲気upを演出。今回のフォーラムで最も注目されたテーマはsustainabilityですね。もっとも今回のフォーラムに限らずEUで開催されるバイオ燃料関連のシンポジューム等では、バイオ燃料のsustainabilityが主要なセッションの一つとなっているのは常のことですが。
 
 このセッション会場では、参加希望者が大変多く、なんとコーヒーブレーク後の、開始時間前に満席、立ち見で通路も一杯とかで、入り口に係員が立ち、"安全上これ以上の入場制限"されてしまいました。わたしは、そうとは知らず、ゆっくりとコーヒーを飲んで会場に向かい愕然! "このセッションを聞くのが主目的で日本から来た"と言っても、very sorry。押し問答していると、幸いにも、中から1人出てきたので、入れ替わりに何とかもぐり込んだ次第です。
 グリーンピース、WWFの講演では両機関とも、foodとの競合、熱帯雨林等の地球環境破壊を具体的な例示とともに取り上げ、当面の重要な施策として バイオ燃料のsustainability 評価、これと連動したtraceability制度の導入を提唱。これらの点は他の国際規模の環境NGOも同様の動きであり、さらに、EUブリュセルでもすでに実施への検討が行われています。
 少なくとも、EUは何らかの規制設定はそう遠くない時期に始めるでしょう。実際に基調講演として、オランダの環境関連担当の女性閣僚が、自国を含めたEUブリュッセルのバイオ燃料への考え方で、sustainabilityが第一優先であり、これなしの実施は意味がなく認められないとの考え方を述べ、会場から"EUのみが厳しい規制を先行させれば、米国企業、さらに今後はアジアの企業が事業を展開し、EU企業が遅れをとる心配がある"との意見が相次ぎました。
 これに対し、"その議論は過去30年以上すべての産業で行われ、すでに明白な結論が出ている。EUは短期的な視点でバイオ燃料を考えてはいけない。技術革新を成し遂げた企業のみがグローバル競争に勝ち残れる"とにべもない回答でした。この問題に限らず、EUは産業育成にまず理念先行型な取り組みですね。とくに、地球環境問題に関連しては、世界をリードすべく、新規技術による産業育成、該新規技術を世界に"普及"させる手段としての規制の強化策を明確に打ち出していくのが基本戦略となっていることに、十分注意していく必要がありますね。
 もう一つこのフォーラムで注目すべき講演がありましたので紹介します。米Genecor社の「Accellerase 1000」に関する今後の営業方針の説明です。要約すると、この製品の"スタンダード版"の直接販売と、顧客の工場内にセルラーゼ製造ユニットを設置して製造する、いわば共同製造形態です。これまでの同社の講演ではどちらかと言うと後者の方向性を強調してました。今回は、今後の該スタンダード版の製造量の年度計画を示して、直接販売の要望にも対応する方針も明確としたわけです。
 特に、後者の場合には、今後農家により、使用するバイオマスの種類and・or前処理方法により、最適セルラーゼ類の構成が異なることが予想されるわけで、いわばテーラーメイド製品を顧客ごとの工場内で製造により、製品の適性、コストを最適にするという考えですね。講演では現在の新製品サンプルは"スタンダード版"で、いかようにも顧客の相談に乗ると強調していました。これまで、ソフトバイオマスからの大規模生産計画が"相当数"水面下で協議されて、いよいよ今後急速に実現していくであろうことが、このようないわば"支援産業"の動きからも感じられた内容でした。
 バイオ燃料を含むバイオリファイナリーの動きは日本にいては十分感じられません。いつも皆様に申し上げていることですが、ぜひ、海外のシンポジューム等に参加され、生きた生の情報を得られることが肝要なことと強く強くお勧めいたします。また技術動向等も含め何なりと私どもRITEにご相談いただけますようお待ちしております。(湯川英明)