みなさん、こんにちは。今年もあっという間の一年でした。
 編集部ではクリスマス明けは、毎年、各省庁に予算案の取材に走り回ります。私も昨日は文部科学省、本日は経済産業省に行ってきました。バイオマス関連では経産省、環境省、農水省が事業を立ち上げ、概算要求を行っていましたが、やはりバイオマスの利用には追い風が吹いており、予算案の金額はどれも要求額と大差ないなという印象でした。
 中でも注目されるのは、経済産業省の新エネルギー対策課、化学課、生物化学産業課が手がける「バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発」です。この事業は、「新エネルギー技術研究開発」の一部事業として行われますが、概算要求で29億円を要求し、予算案で28億円がつきました。事業ではセルロース系バイオマスを原料に、化成品や燃料などを製造するバイオマスコンビナートの立ち上げに必要な技術開発を後押しします。
 目標とする出口には、プロピレンやエチレン、世界で研究開発が活発化しているブタノールなどが掲げられており、原料調達の方法から、糖化・発酵、触媒開発まで、他分野の技術を複合的に組み合わせることが求められます。私の理解では、この事業のポイントは、世界で通用する技術を開発することだと思っています。もちろん経産省が大きな声でそういっているわけではありませんが、セルロース系バイオマスを使うこと、海外でも研究開発されている、またはまだあまり手がつけられていない物質の製造を出口として設定していることなどから、その可能性が十分にあるというわけです。
 一方、国内の状況に合わせて新しい事業を立ち上げるのが農林水産省です。新規事業としては、概算要求で40億円を要求していた「ソフトセルロースの収集・運搬から利用までの技術開発」に32億3700万円がつきました。これらの事業の詳細や公募のスケジュールなどはまだ決まっていませんが、それらの情報は日経バイオテク・オンラインでも順次お伝えしていきたいと思います。
 さて、BTJ/GreenInnovationメールは、今号で年内最後となります。08年は1月10日から配信をスタートしますので、引き続きお読みいただければ幸いです。また、来年に向けて、このメールでこういった内容を取り上げてほしいなどのご意見がございましたら、ぜひお寄せください。冬休みの宿題にしたいと思います。
 では、来年もよろしくお願いします。よいお年を!
※※ご意見・ご感想などはこちら。
mailto:nbt-e@nikkeibp.co.jp
                     日経バイオテク 記者 久保田文
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https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/9306/
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◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   2007年を振り返って  ―― 地球環境産業技術研究機構 湯川英明氏
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 皆様こんにちは 今年も早いもので師走。あっという間の1年でした。年齢のせいもあるかもしれませんが、バイオリファイナリー分野のすさまじい展開に圧倒された感がありますね。
 今年は昨年以上に、「バイオ燃料」が盛んに報道され、産業界の興味も一気に高まり、関連する講演会は満席、さらに一般市民の認知度も驚くほど高くなりました。日本のこのような状況は昨年のブッシュ大統領の一般教書でのバイオ燃料に対する積極的な政策の報道から始まったわけで、メディアの影響力もさることながら、どっと流れる日本社会の特性と言うべきでしょうか。驚くばかりです。さて、今年を振り返ると、バイオリファイナリー分野では以下の4つが特筆されます。
―その1:米国の企業(ベンチャー、大手企業)による、セルロースよりのバイオエタノールの大規模パイロットによる生産計画が続々と明らかにされたこと(本メールの10月25日号をご参照ください)。
―その2:「次世代バイオ燃料」の目標(定義)が明確になったこと。米国ではバイオブタノールであり、欧州ではセルロースからのバイオエタノール製造。(本メールの9月27日号をご参照ください)。
―その3:欧米大手化学企業による、石油化学工業からグリーン化学工業への「転換」計画が明らかになったこと。(本メールの11月22日号をご参照ください)
―その4:バイオ燃料の今後の急拡大に対する「影」の面が大きく取り上げられたこと。(本メールの8月23日号をご参照ください)
 上記の全体から感じることは、ものすごい大きな流れ、まさに産業構造のパラダイムシフトが現実となろうとしているのではと感じます 前世紀の末に米国がバイオリファイナリーとITを21世紀の新産業 米国経済の牽引力と位置付けした「先見性」が正しかったとされる日が遠くないのでは?とも。これらの背景、推進力は、もちろん地球温暖化に対する世界各国、市民の危機感です。
 米国は政治の舞台では京都議定書の批准すら躊躇していますが、現実の産業界の動きはまったく異なります。もちろん環境倫理観だけで動いているわけではなく、バイオリファイナリーの持つ高度な経済性、急速な技術革新等に対する認識によるものです。さて、上記4つの視点から来年、2008年の動きを予想してみましょう。
―その1:セルロースからのバイオエタノール製造: 各ベンチャーや企業の技術力の優劣が見えてくる。
 今年の、各社の製造計画表明では、技術内容の明示はされていない。技術ポイントは、C6、C5糖の同時利用ができるか、「発酵阻害物質」の影響をどのようにして免れるかにある。9月27日発信で述べたように、現状はガソリン価格があまりに高く、「そこそこの技術」でも経済性が出る可能性はあろうが、今後はまさに、燃料としてのバイオエタノールに対する評価が始まるわけです。
 環境意識の高まりを受けて、バイオエタノールも、単に価格だけでなく、どのように作られたか、つまり、コーン原料と、セルロース原料に対する評価が異なることが予測されています。セルロース原料を前面に出す経営戦略ですね。また、米国エネルギー省(DOE)の助成を申請している場合には、DOEは技術内容を開発ステップが上がるたびにチェックしその後の助成の可否を決定していくとしていることから自ずと技術優劣・内容が見えてくるでしょう。
―その2:バイオブタノールの研究開発競争に参加する"企業・研究機関"の顔ぶれがそろうとともに、各企業・機関の研究の方向性が明らかとなるでしょう。いわゆるABE発酵の改良法、工業微生物を用いるプロセス、あるいは、新規な微生物の探索などでしょう。
 英BR社の研究参加表明をはじめ各社(研究機関)の研究内容が学会発表等を通じて次第に明らかとなるでしょう。われわれRITEも来春から研究成果の発表を国内外の学会で開始する予定です。
―その3:グリーン化学工業はその技術内容が明らかとなっていくでしょう。バイオ燃料と比較すれば生産規模も小さく、スケールアップのリスクも低いため、基礎研究の完成から時を経ずして直ちにプラントへの組み込み、生産が開始となるでしょう。数年前までは予想もしなかった、グリーン化学工業の近未来の全容が見えてくるでしょう。この分野でもわれわれ地球環境産業技術研究機構は研究開発に注力しています。
―その4:バイオ燃料の影に対する、国際的な取り組みに関する議論が活発となっていくでしょう。日本ではまだ分野の議論が進んでいない感じですが、企業経営の上では、大変大きな問題となるわけですから、欧州委員会の動向など注目する必要があるでしょう。"影"を解決する技術革新の奨励を伴って、建設的な議論展開が期待されます。
 以上が私の『予測』です。まあ、プロ野球の順位予測が当たらないのと同じ程度で皆様に見ていただければと思います。ではまた。
                  (地球環境産業技術研究機構 湯川英明)