みなさん、こんにちは。今年も残すところあと1週間となりました。
 今週は政府レベルの動きが激しい1週間でした。インドネシア・バリ島で行われていた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)が閉幕。会議ではポスト京都議定書の数値目標は定まりませんでしたが、交渉期限を含むロードマップが採択されました。
 また、米国ではエネルギー修正法が成立。修正法には、バイオエタノールを含む再生可能燃料の利用促進や、セルロース系バイオエタノールの利用拡大などの目標が盛り込まれており、「20 in 10」(ガソリンの利用を2017年までの10年で20%削減する目標)に加えて、バイオマス利用に向けた強力なエンジンとなります。
 ただ、バイオエタノールや再生可能燃料に関する動きとして興味深かったのは、米エネルギー省(DOE)と米農務省(USDA)中国国家発展改革委員会(NDRC)が、バイオマスの利用・研究促進に向けて提携したことです。提携の背景にはポスト京都議定書などの温暖化対策があるわけで、将来、温暖化ガスの排出削減を求められるであろう中国が、本格的にその手の研究(中でもバイオマス関連の研究開発)に乗り出すようです。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/9180/
 一方、国内では08年度からバイオエタノールやエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)に課せられていたガソリン税(1L当たり1.6円)が減税される見込みです。さらに、経済産業省はバイオエタノールやバイオディーゼルをガソリンに混ぜる事業を行っている事業者に登録や品質確認の義務を課す揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)の改正に向けて準備を進めています。国内でもようやくバイオエタノールやバイオディーゼルを利用する枠組みができてきました。国内の動きに関しては、農林水産省の末松広行氏の寄稿にも触れてありますので、ぜひお読みください。
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                     日経バイオテク 記者 久保田文
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           農業・環境関連の記事
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政府、
2008年度からバイオエタノールやETBEに減税措置導入へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/9285/
資エネ庁、品確法を改正へ
狙いはバイオ燃料の品質管理
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/9288/
海外重要発表、POET社、米Ohio州でのバイオエタノールプラントの竣工式を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/9305/
海外重要発表、GTC社のトランスジェニック・アンチトロンビン「ATryn」、
FDAより希少薬の指定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/9248/
海外重要発表、DuPont社、
国連気候変動会議でエネルギー効率向上と温室効果ガス排出削減について講演
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/9249/
海外重要発表、Pharming社、
トランスジェニックC1阻害剤、承認得られず再審査請求へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/9181/
海外重要発表、米国と中国、
バイオマスの研究開発で提携
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/9180/
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◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 バイオ燃料拡大に向けての政府の動きについて
  ~税制でどのような支援措置を行うか~   ―― 農林水産省 末松広行氏
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 私は今でもバイオ燃料関係で講演をすることが多いのですが、その際には、各国の政府等の支援措置についての説明をしながら、少し寂しい思いをしていました。当時の説明ぶりは、次の通りです。
 「ブラジル、米国、欧州、各地域において、バイオ燃料の支援については、様々な対策が取られています。これらについては、だいたい4つのパターンがあります。第一は、バイオ燃料生産についての研究開発・施設整備に関する支援、具体的には補助金です。第二は、バイオ燃料に関する税金の減免です。この減免については、バイオ燃料自体についてのものとバイオ燃料を生産する施設等や企業に隊うるものとがあります。第三は、バイオ燃料の混合に関する規制です。具体的には、一定量のバイオ燃料を使うことを義務付けることによって需要を創出するものです。
 第四は、自国の農産物からのバイオ燃料生産を奨励する措置です。関税で他国からのバイオ燃料に大して障壁を設けたり、自国の農産物からのバイオエタノールに対して支援をしたりします。もちろん、すべての対策が必要なのではなく、状況に応じた対応がなされることとなります。さて、我が国ですが、我が国においては、バイオ燃料の製造施設を建設することについては、一定の補助金があります。これは農林水産省だけではなく、実験・研究的なものについては環境省、経済産業省においても措置されています。あと、税金等についてもよく質問されるのですが、これに対しては「『実態があるのか?実態を作ってから措置すべきではないのか?』という議論もあり、なかなかうまくいっていないのが現状です。」としか答えられませんでした。来年度に向けた税制改正の議論が進み、今年は少し説明の仕方を変えられそうです。
■バイオ燃料そのものにかかる税制
 来年度の税制改正において、バイオエタノール混合ガソリンについてガソリン税が減免される予定となりました。予定というのは、今後、国会での審議を経て決まっていくということなので、現段階では政府レベルでの考え方ということです。措置されるのは、バイオエタノール混合ガソリンに係るバイオエタノール分のガソリン税を免税にするということです。ガソリン税は1リッターあたり53.8円かかりますが、エタノール分についてはこれがかからないということです。販売されるのは3%混合されたものになりますので、混合されたガソリンとしては大した価格低下にはなりませんが、ガソリンとエタノールを比較した場合、大きな意義があると思います。
 このような税制は、ブラジル、アメリカ、ヨーロッパ各国とも講じていて、我が国もこれらと同様の措置を講じることにより、エタノールの対ガソリンに対する競争力が強化されることとなると思います。また、この減税を活用して、ガソリンの供給者がエタノールの供給に対して前向きに取り組んでもらう効果も期待しています。今回、この税制が実現に向けて動き出したのは、関係省庁の足並みが揃ったことが大きいと思います。農林水産省、経済産業省、環境省が一致して要求できた背景としては、経済産業省及び石油業界が、様々な議論があるなかで前向きに努力したことが大きいと思います。
■バイオ燃料製造設備に係る税制
 我が国でバイオ燃料を生産するためには、そのための製造施設が必要となってきます。この施設については、固定資産税等の税負担があり、これを軽減することによって国内でのバイオ燃料製造が進むことが期待されます。このような観点から、バイオ燃料製造設備に係る課税標準の特例措置が講じられる予定となりました。
 これは農林水産省が要求したものですが、実験の段階を過ぎて実際に企業的にバイオ燃料を作る時代にはぜひとも必要な税制ではないかと思います。具体的には、固定資産税を3年間1/2にするという内容です。例えば、製造設備取得価格が25億円の施設の場合、固定資産税は初年度約3500万円、次年度約2500万円とかかってきます。これを3年間1/2にするということなので、約4000万円の特例効果が期待できます。(これは試算の一例で必ずこうなるということではありません。)
 この税制は、バイオ燃料製造に関して、農林漁業者とバイオ燃料製造事業者との連携を促すためのメリット措置でもあり、これに関する法律の成立を前提としています。法律については、現在検討中ですが、「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律(仮称)」というような感じのものになると思っています。国内でバイオ燃料を作るためには、関係者の協力が不可欠であり、私たちはこのような新たに施設をつくる際の参入リスクの軽減に資するものと期待しています。この税制の対象についてですが、バイオエタノールだけでなく、バイオディーゼル、バイオガス、木質ペレットも対象設備にしようと思っています。農林水産業とのかかわりが必要ですし、製造事業者と農林漁業者が共同で事業計画を作成し、法律に基づいて認定してもらうことが必要となります。
■その他
 このほか、ETBE(バイオエタノールとイソブテンを化合したバイオ燃料)を輸入する際の関税についても、減税措置がとられる予定です。これは経済産業省が中心となって要求していたもので、バイオエタノールの普及のために措置されるものです。なお、バイオディーゼル関する軽油引取税については、引き続き検討されることとなりました。不正軽油の問題等があり、税制としては難しい点があるということだと思います。
■バイオ燃料関係予算
 バイオ燃料関係予算も、今、大詰めの状況になっています。農林水産省、経済産業省、環境省、それぞれ特徴を活かした要求についていろいろな議論が行われています。これについては、また、改めてご報告したいと思います。
                         (農林水産省 末松広行)