みなさん、こんにちは。私は今、分子生物学会に取材に来ています。ポスターやワークショップはもちろんですが、特に注目しているのは夕方に行われる「分子生物学会がいかに未来の地球環境に貢献できるか!」というフォーラムです。
 学問の分類からすると、酵素工学や植物工学、ゲノム科学などまったく異なる分野の研究ではありますが、地球環境というくくりで生体触媒、遺伝子組み換え植物、バイオリファイナリーなどの研究を進める方々が集まって、研究発表とディスカッションを行うとのことで、楽しみです。このメールには間に合いませんので、次号のメールでその模様をお伝えできればと思います。
 さて、本日は寄稿がありませんので、日米のバイオマス関連の研究開発(国家プロジェクト)について、考えてみたいと思います。米国では米エネルギー省が中心となって、07年に以下のような大型プロジェクトを立ち上げました。
・6つのバイオリファイナリー関連のプラントの商業化を後押しする研究開発費 
                           3億8500万ドル/4年間
・セルロース系バイオマスを使ったエタノールの生産など、バイオリファイナリー関
連の試験プラントの研究開発費             2億ドル/5年間
・エタノール発酵に利用する微生物の研究開発費     2300万ドル
・セルロース系バイオマスの糖化酵素の研究開発費    3400万ドル
・バイオエネルギー関連の3研究所を新設         4億ドル/5年間
 複数年にわたる予算もありますが、単純に合計すると、その研究開発費の合計は約10億5000万ドル。これは本当に莫大な額です。もちろん、国内で欧米と同様の規模の研究費を投じるのはなかなか難しいと思いますが、その分、国内ではバイオマス分野で必要とされ、かつ国内の強みをいかせる研究とは何か、戦略を立てる必要があります。
 国内の戦略を立てるに当たり、よく話題に上るのが日本の縦割り行政です。先述の通り、米国ではバイオマス関連の予算のほとんどをエネルギー省が拠出しています。一方、日本では同様の予算を農林水産省、経済産業省、環境省がばらばらに拠出しており、国としてバイオマスに関してどのような研究開発を行うか、その戦略が立てにくい状況にあります。
 と、ここまで書くとお気づきになる方もいるかもしれませんが、この日米の状況、医療や医薬品の研究開発についてもまったく同じことが言えます。米国では米国立衛生研究所(NIH)がそのほとんどを拠出していますが、日本では厚生労働省、経済産業省、文部科学省などばらばらです。この2つの似通った状況を見て思うことですが、国内では省庁の縦割りが悪いというよりは、規制する省庁=研究開発を後押しする省庁、が当たり前になっているという習慣が悪いのではなかと思うのです。
 省庁が管轄する規制(法律)をベースに成り立つのはごく自然なことです。ただ、日本では規制と研究開発がごっちゃになって存在しているので、こういうややこしい状況になってしまうのではないかと思います。規制をする省庁は多岐にわたるけれど、研究開発はこの省庁イニシアティブを取りましょう、と出口となる産業ごとにあらかじめ決めておけばこんなことにはならないのではないでしょうか。
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                     日経バイオテク 記者 久保田文
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