みなさん、こんにちは。私は本日まで広島で行われていた日本生物工学会大会へ取材に行ってきました。個人的には以下にもありますトヨタ自動車とトヨタ中央研究所の発表やファイトレメディエーションの発表などを興味深く取材しました。
 さて、本日のオピニオンは財団法人地球環境産業技術研究機構の湯川英明氏によるバイオブタノールの解説です。ブタノールをめぐる世界での研究開発は激しさを増す一方であることがおわかりいただけるでしょう。
 また、エタノールでは関連記事にもありますが、デンマークDanisco社やデンマークNovozyme社などが、セルロース系バイオマスの利用を前提にした研究開発、実証実験を続々と進めています。前回のオピニオンにはアジアのバイオマスを利用する新たな構想も出てまいりました。動きが激しい分野だけに、このメールやBTJのウェブサイトがみなさんの情報収集の一助となればと思います。
                     日経バイオテク 記者 久保田文
◆BTJの関連記事◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           農業・環境関連の記事
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日本生物工学会大会、豊田中央研究所ら、
発酵中後期に乳酸生産能上げるプロモーターを開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7211/ 
日本生物工学会大会、奈良先、阪大ら、
ミニバラによるビスフェノールAの水処理システムを開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7210/ 
Bayer CropScience社、
Senesco社より遺伝子技術をライセンス、イネに応用
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7198/ 
Danisco社、
ONG Energy社と共同で、次世代バイオエタノールのデモプラント建設へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7197/ 
POET社、米Indiana州でバイオプラントを竣工、
世界最大のエタノール生産会社となる
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7195/ 
Monsanto社とDow Chemical社、
クロスライセンスで8遺伝子を組み合わせたトウモロコシ種子開発へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7194/ 
Monsanto社、
ベルギーDevgen社にアジア種子ビジネスを売却し出資
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7083/ 
Bayer CropScience社、
マラリア撲滅のための新規研究プロジェクトの主要パートナーとなる
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7002/ 
Novozymes社、
ブラジルのサトウキビ技術センターと契約、第二世代のバイオ燃料開発へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7082/ 
Delaware大学、
イネのエピジェネティクス研究に研究費530万ドル獲得
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7081/ 
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http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/nbto/
◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        激化するバイオブタノールの研究開発競争
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 前回、次世代バイオ燃料としてバイオブタノールが激しい研究開発競争となっていると紹介した。今回は、バイオブタノールに関してもう少し詳しく解説しようと思う。
■ブタノールの燃料特性
 バイオエタノールと比較し、以下の利点がある。
・発熱量:この値は燃料におけるエネルギーと同意と考えてよく、ガソリンの9割強(エタノール:約6割)を示す。
・水への溶解性:エタノールは水への溶解度は高いが、ガソリンとは混和しない。このためガソリンとの混合使用時に相分離が課題であるが、ブタノールは水への溶解度がはるかに低くこの問題はないとされる。また、エタニールとガソリンとの混合燃料にブタノールをさらに混合することにより、相分離を解決しうるとされる。・オクタン価:燃料に関し素人的な理解としてはこの値は"ノッキングのし難さ"である。エタノールはこの値が高くガソリンと比べ高圧縮率のエンジン設計が可能である。ブタノールはエタノールよりこの値が低く、ガソリンと同レベルとされる。・腐食性:エタノールはこの点が欠点とされ対策が必要であるが、ブタノールはエタノールよりはるかに腐食性が小さいとされ大きな問題とはならないとされている。
 以上のように、ガソリンとの混合において、エタノールよりはるかに多くの利点が指摘されているがもっとも注目される特性は、軽油との混和性である。ヂィーゼルエンジン用の混和燃料として、既存の「バイオヂィーゼル(植物油原料)」を完全に代替しうる点である。前回紹介したように、パームやし栽培規模の拡大による熱帯雨林破壊、環境破壊のストッパーとして大きく期待されているのである。
■ブタノール製造法の歴史:"発酵ブタノール"今昔
 ブタノールは長い歴史を持つ"発酵アルコール"である。微生物によるブタノール生成の現象は、1861年にパスツールにより初めて報告された。その後、20世紀初頭、ハイム・ワイツマンによりClostridium acetobutyricumを用いた発酵法による工業生産が開始された。これが、糖を原料とし、ブタノール:アセトン:エタノールを6:3:1で生成するABE発酵であり、現在、英BP社が07年末より生産を始めると表明した製造方法と基本的には同じである。
 ABE発酵が大規模に実施されたのは、第1次大戦時の勃発による。火薬製造用にアセトン、航空機燃料としてブタノールが大量に使用され、この状況は第2次大戦直後まで続いたのであった。1950年代の石油化学の登場により、ABE発酵は衰退していったのである。
■バイオ燃料としての再登場
 ブタノールの持つ特性より、バイオ燃料としてあらためて見直され、今年度のブッシュ大統領による「ガソリン代替燃料生産目標 10年以内に1.3億KL生産達成」計画にはバイオブタノール生産も明記されている。すでに、数年前より、ベンチャーを含む民間ベースの研究開発の開始も各社より発表され、とりわけ、英BP社の生産開始表明および革新製法開発の基礎研究として500M$の投入発表等により大きく注目されている。
■ブタノール製造法の今後およびRITEの取り組み状況
 この発酵は、一言で言えば"大変複雑な代謝システム"によりABE(ブタノール、アセトン、エタノール)が生成されている。微生物細胞の分裂増殖期に、まず、酪酸、酢酸が生成され、分裂増殖が停止した定常期になり、代謝システムが大きくシフトしてABEが生成される。この代謝シフト現象は、微生物の生理学上から大変興味が持たれ、長年、要因解明研究が行われてきたが、まだ完全解明にはいたっていない。
 近年のブタノール生産研究は、米国農務省やイリノイ大などが精力的に実施してきた。イリノイ大の研究チームは、現状ではトップの生産性を報告しているが、生成濃度も2%、発酵も3-4日を要し経済性はエタノールと比較し大幅に低い状況にある。さらに、ABE発酵を行う微生物Clostridiumは絶対嫌気性であり、生育もきわめて遅いという工業的には大きな問題を有している。
 このため、経済性あるバイオブタノール製造法確立へ向けて、現在、2つの研究方向性がある。ひとつはABE発酵の改良であり、他方はABE生成機能を担う代謝システム遺伝子系を、該微生物種から工業的な優位の微生物種にバイオテクノロジーにて組み込んでしまおうとする研究である。多くの研究チームは当然後者に挑戦しているのである。
 この研究においての"決め手"は、Clostridiumの該機能を正確に解析し関与する遺伝子システムを特定、分離し、工業的優位性のある微生物種での機能発現に成功することにある。これまで、多くの企業、大学、ベンチャーが研究参画を表明している。しかしながら、これまでのところ、特許はまだ公開されていない 激しい競争が水面下で実施されているものと思われる。(財団法人地球環境産業技術研究機構湯川英明氏)
参考)なお、RITEでは既に、基本特許の出願済であり、今後は更なる改良に全力で取り組んでいる状況にある。近い将来、技術内容を順次公表していく予定である。また、早期の工業化を図るため、研究体制の強化を各方面との協議を実施している。