みなさん、こんにちは。昨日から横浜にてBioJapan2007がスタートしました。世界中のバイオ業界関係者が集まっていますが、今年は特に中国や台湾などからの参加者が目立つような気がします。
 BioJapanでは、基調講演でデンマークNovozyme社のSteen Riisgaard社長兼CEOがバイオエタノールを始めとするバイオ燃料に向けた酵素事業の可能性について説明。その後の本誌とのインタビューでは、「4年後にもセルロース系バイオマス向けのセルラーゼを発売する」(Steen Riisgaard社長兼CEO)と話すなど、商業化に向けたセルラーぜの研究開発も最終段階にあることを認めました。インタビューの詳細は追ってご報告したいと思います。

 さて、本日のオピニオンは農林水産省末松広行企画評価課長にお書きいただきました。末松課長は、バイオマス・ニッポン総合戦略の策定にかかわったほか、環境政策課を務めるなど、国内のバイオマス施策を引っ張ってきた方です。国内のバイオマスは広く薄く存在しており、その存在量にも限界があることが指摘されていますが、末松課長のオピニオンはそれらを解決する可能性のある興味深い構想です。
ぜひじっくりお読みください。
 
                     日経バイオテク 記者 久保田文
 
◆BTJの関連記事◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           農業・環境関連の記事
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BioJapan2007、Novozyme社、
組織改変で製薬業界向けバイオ事業を強化へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7060/
 
Verenium社とCargill社、
共同開発が進展、食品関連の新規製品開発中
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7001/
 
米農務省、
燃料にも飼料にも使える新規ソルガムを開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/6998/
 
Monsanto社、
ブラジルのトウモロコシ種子会社、Agroeste Sementes社を買収
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/6999/
 
Virginia工科大学チーム、
低水分でも成長するコメ「HARDY rice」を開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7000/
 
Pioneer Hi-Bred社、
2008年栽培用の「HTF 」エタノールハイブリッド21品種を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/6976/
 
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◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
          バイオマスに関する国際協力の推進を
        ~みどりのクールアジアプロジェクト構想~
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 今回は、地球温暖化防止につながるバイオ燃料の生産を、東南アジア諸国が農産物を増産した分で賄えるよう支援する「みどりのクールアジアプロジェクト」の構想について記すこととします。
 
■農業協力
 東南アジア諸国では、そのアジアモンスーン地帯の気候条件を活用した農業を通じてその人口を養ってきました。これらの国々を経済発展させるためには、様々な手法が考えられますが、最もオーソドックスな方法が、現在の農業生産を増大させ、増加した農産物の輸出により外貨を獲得することでしょう。各国ともこのような考え方から農業生産の増大に力を入れています。
 
 この農業生産の増大を図るためには、灌漑施設の整備、優良な品種の導入、農業技術の向上、流通などの改革などが必要であり、現実にわが国の農業協力により、効果が出ている例もあります。この場合、問題になるのが、いわゆる「ブーメラン効果」です。農業協力により現地の農業生産が増大する→増加した農産物を輸出に向ける→わが国国内市場でわが国の国産農産物と競合する→わが国の食料自給率が下がる、ということで、なかなか協力を積極的にしづらい面があります。
 
■バイオマス資源争奪
 エタノールやBDFなどのバイオ燃料、ポリ乳酸などのバイオマテリアルの最近の動向を見ると、地球温暖化防止のための切り札として、世界各国で農産物からの生産が増加しているのはみなさん御存じのとおりです。このような動きは、東南アジアの諸国にも及んでいます。更に、EU、米国など各国は野心的なバイオ燃料等の目標を掲げています。
 
 このような状況の中、エネルギーやマテリアルの原料としての農産物を東南アジア諸国に求める動きが出てきています。アジアモンスーン 地帯の農用地をエネルギー生産のための土地として活用しようということで、既に各地でいろいろな動きが出ているようなのです。
 
 この場合、問題になるのが、いわゆる「食料とエネルギーの奪い合い」の問題です。低コストでエネルギー用の農産物が生産できるとしても、地域の食料を奪ってしまっては問題です。各国とも多くの人口を抱えており、食料の安定供給はエネルギー生産に優先させることが必要です。
■みどりのクールアジアプロジェクト
 これらの問題を解決し、地域の経済発展に協力しようというのが、みどりのクールアジアプロジェクトの構想です。すなわち、わが国は、その地域に対して農業協力をして農産物の増産を図ります。加えて、その増加した農産物を原料としたバイオ燃料・バイオマテリアル原料製造事業の実施にも協力します。農業協力については、これまで農林水産省を中心として官民で様々な実績があります。特に東南アジア地域はわが国の農業技術を活用しやすい地域でもあります。
 
 バイオ燃料等の製造については、わが国はそれほど最先端ではありませんが、本年度よりバイオエタノールについて1.5万KLクラスのプラント建設が始まる等十分な技術を有するに至ったと言ってよいと思います。特に、わが国国内で実際にプラント建設をする経験は、わが国の厳しい公害規制をクリアするなど、海外においてプラントを建設しても、現地において受け入れられるものになり得ると思います。
 
 現地においてのメリットを整理してみます。現地での経済発展に役立つのはもちろんですが、現地ではプラント建設に係る雇用も確保できます。できた製品は農産物と異なり需要は厖大にあります。東南アジアには未利用のバイオマスが豊富に存在し、これらを活用することで食料との競合の問題を避けることができます。協力をするわが国にとっても、協力の結果のブーメラン効果がなく、農業界として心配なく協力ができますし、CDM(排出権のクレジット)を得ることも考えられます。
■どのように進めていくか
 東南アジア諸国で考えた場合、コメ、タピオカ・キャッサバ等、パーム、サトウキビなどの農産物が候補となるでしょう。農業協力についは、これまでの蓄積を活用して、具体的なプロジェクト地域への重点的な支援を進めていきたいと考えています。バイオ燃料などを製造する施設の建設についても、資金と技術の両面から支援したいと考えており、製造技術を持っている各メーカーをはじめとするわが国の企業に協力を求めていきたいと思います。
 
 現在、候補となる地域については、各企業で調査している各地の状況と可能性を勘案してだんだん絞り込んで行きたいと思います。具体的に現地のニーズとわが国の技術とのマッチングを図るためには、官民合同の調査団の派遣も有効だと思います。各企業や関係団体でいろいろ検討が進んでいるようですが、農林水産省としてもこれらの情報も得つつ、早急に体制を整えていきたいと思います。
■バイオマス協力は日本の責務
 バイオマスに関する国際協力を進めることは、環境問題でイニシアティブを取ろうとしているわが国の責務でもあります。アジアの諸国の経済発展を支援する際に、公害問題や食料問題を引き起こすことなく、WINWINの関係での経済協力を進められるよう、関係者が知恵を出し合うことが大切だと思います。なお、本稿は東南アジアを想定して書きましたが、世界の他地域でも同様の考え方で進められる場合もあると思います。(農林水産省企画評価課 末松広行氏)