みなさん、こんにちは。関東には強い台風が近づいているようです。にも関わらず、本日午後、勉強会のため山形県鶴岡市に向かわなければならず、難しい判断(行くべきか、行かざるべきか)を迫れられているところです。
 さて、本日の「担当者より」では、引き続き、省庁の予算の話題を取り上げたいと思います。私はこれまで数年間、バイオの中でも医薬分野を中心に取材をしてきましたが、政府の予算に関していつも指摘されるのが、「財布が分散している」、ということでした。医薬品の開発を後押しするためのトランスレーショナルリサーチを進めようにも、基礎研究支援は文部科学省で、企業の支援は経済産業省で、病院などでの臨床の支援は厚生労働省でといった具合です。
 バイオマス分野の予算についても、似たような指摘がなされています。バイオマス、特に最近ではセルロースやソフトセルロースからエタノールを製造するための支援事業を、農林水産省、経産省、環境省がそれぞれ立ち上げているためです。
 とはいえ私が知る限り、状況は必ずしも医薬分野と同じではありません。というのは、医薬分野では各省庁、開発フェーズや支援する対象は違えど、最終的に「新薬開発を後押ししよう」という目標で一致しているのに対し、バイオマス分野では、農水省は国内の農業・農地の保護・活用、経産省は新産業の育成、環境省はCO2削減や京都議定書の目標達成に力点を置いており、その目標がばらばらだからです。
 先日、バイオマス分野の事業を担当するある省のある部署に取材に行ったところ、担当者の方は、他省のバイオマス分野の新しい大型事業の要求額や内容について、まったくご存知ありませんでした。予算を有効に使うためにも、この状況は好ましくないと思います。目標はばらばらでもいいですが、せめて外から見ても分かるような形で優先順位をつけ、各省庁が連携するべきではないでしょうか。
 石油を代表とする世界的な原料高などを背景に、今、バイオマス分野の予算に追い風が吹いていることは確かです。しかし、農業であれ化学産業であれ二酸化炭素削減産業であれ、事業の成果が何らかの形で持続されなければ意味がありません。10年後、バイオマスを過去の流行語にしないためにも、そろそろ目標の優先順位付けに向けた話し合いを始めてもいいのではないでしょうか。
                     日経バイオテク 記者 久保田文
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           農業・環境関連の記事
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資源エネルギー庁、
10月にバイオマス燃料で検討会立ち上げ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/6773/
フランスとイタリアの研究コンソーシアム、
ブドウのゲノム解読、染色体の倍数化を示唆
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/6764/ 
Dow AgroSciences社、
複数の除草剤に抵抗性のある品種を開発中
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/6765/ 
農水省が40億要求、
ソフトセルロース収集からエタノール変換行うプロ立ち上げへ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/6724/
経産省の概算要求、
一押しはセルロース系バイオマスで大型事業など
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/6668/
Monsanto社、
投資家向けの説明会でパイプラインなど紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/6632/
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http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/nbto/
◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        みんながやるまでやらない、日本?!
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■動き出した日本
 昨年、原油高を背景として、日本ではバイオ燃料への関心と期待が急速に高まった。しかし、今春は一変。一般紙では「米トウモロコシ高騰 食品・農地価格上昇に波及」(日経新聞)、「穀物価格高騰 食料生産と競合」(毎日新聞)、「独ビール値上げ」(フジサンケイビジネスアイ)、「エタノールに絞られ果汁飲料値上げ」(読売新聞)、「バイオ燃料、食卓に波風 マヨネーズ値上げ、ビール・牛肉も?」(朝日新聞)等々、風吹かずとも値上げはバイオエタノールが主犯という論調だ。さはさりながら、石油や化学の専門紙には、「メジャー バイオ燃料戦略に着目」(燃料油脂新聞)や「バイオマスコンビ構想実現へ」(化学工業日報)など、新たな展開への目配りも増えてきた。
 昨年5月に発表された「新・国家エネルギー戦略」から始まったバイオ燃料に関する政策論議は、今年4月、首都圏50カ所のガソリンスタンドでのバイオガソリンの試験販売開始、5月に発表された「次世代自動車・燃料イニシアティブ」と「輸送用新燃料利用拡大のための制度基盤検討会」の取りまとめ、「揮発油等の品質の確保等に関する法律」改正の方針決定へと順次進展し、8月、バイオエタノール利用促進のための揮発油税減免の税制改正要望を以って一応結実した。
 バイオ燃料は今や世界の潮流となってしまった感があるので、日本の出遅れ感は否めない。しかし、一旦動き出せば追いつくのはさほど困難ではなかろう。少なくとも来年からは、主要先進国の中では唯一、日本だけが化石燃料のみで車が走っているという状況だけは避けられそうか…。
■2008年は分水嶺
 第2次世界大戦後のパックスアメリカーナの下では、マスキー法の例の如く、米国での政策シフトが世界の流れをつくっていくというケースが少なくない。昨年1月のThe Advanced Energy Initiativeや07年1月の2017年ガソリン消費量の2割をバイオエタノールに転換する方針などは燃料転換の方向性を決定づけたとも言える。2月には、EUも2020年の燃料市場における
 バイオ燃料のシェアを最低10%とする義務付けを決定した。3月には米国・ブラジル・EU・中国・インド・南アなどの主要なバイオエタノール生産国がメンバーとなって国際バイオ燃料フォーラムが創設され、バイオ燃料の国際規格づくりを始めるそうだ。ブッシュ大統領がブラジル・ルーラ大統領と一緒にバイオエタノール・プラントを視察したり、バイオエタノールの国際市場をつくろうと意気投合すれば、EUも7月にはEU・ブラジルサミットを初めて開催し、双方の首脳・閣僚がこぞって、「国際バイオ燃料会議」に参加した。
 他方、来年は日本でも北京オリンピックに引けを取らない大舞台が設営される。まず5月に、アフリカ53カ国・地域の元首等が東京に一堂に会し、第4回アフリカ開発に関する東京国際会議(TICAD・IV)が開催される。6月には、ブラジル日本移民百周年記念行事がブラジルの首都・ブラジリアで開催されるが、その前後には日伯両国の首脳外交や大小様々な記念行事が繰り広げられよう。そして、7月のG8洞爺湖サミットに至る。この3つの共通テーマは、環境とエネルギーと経済発展である。
 孟子に「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」という言葉がある。環境先進国日本がリーダーシップを発揮しようとすれば、来年はまさに天の時であり、地の利がある。しかし、天の時と地の利に恵まれても人の和がなければ事は成就しないというのが孟子の教えである。日本が天の時と地の利を活かして、世界と将来のために何事かを為さんとすれば、政府・産業界・国民が一丸となって事に当たるべきではないか…。
■「3つのE」
 「3つのE」とは、環境保護=Environment Protection、エネルギー安全保障=Energy Security、そして経済成長=Economic Growthの謂いである。従来からこの「3つのE」の調和あるいは同時達成を日本のエネルギー政策の基本目標としてきているが、資源にも土地にも恵まれない日本が高度経済成長の過程で公害問題にも苦しんだ結果でもある。日本らしい「3つのE」は、最後のEを経済発展=Economic Developmentとすれば、地球環境と化石資源の限界が喫緊の課題と認識されるようになった今日の世界でも通用する。
 「省エネ技術の開発と、その海外移転の推進が日本経済にとっても地球環境にとっても大きなプラスになる」(日経新聞)のは宜なるかなではある。しかし、日本から世界へという発想と同時に、世界を日本へという発想もあっていい。経済発展を気候変動とオイルピークのコンテクストの中で捉え直すと、発展途上国の豊かなバイオマス資源を先進国がオープンに有効活用するということになる。バイオマス資源の有効活用が発展途上国の内発的な経済発展の契機となれば、世界の環境・エネルギーの改善にも貢献すると期待したいのだが、いささか単純すぎようか…。
■みんながやれば…
 国民性を表すジョークにはいくつかのバージョンがあるようだ。最近教えてもらったジョークは、沈没寸前の船から飛込みを勧めなければならない船長の悪知恵である。アメリカ人に対しては、「飛び込めば英雄になれる」と言い、英国人には「紳士たるものは」と格調高く言い、ドイツ人には「規則だ」と威圧的に言えばいい。そして、日本人には「みんなが飛び込んでいるぞ」と言えばいいらしい。
 バイオ燃料だけでは世界の難題を解決することはできないが、世界が1つになって、「バイオ燃料を上手に育てよう」(朝日新聞)という意志をもち、知恵を出し、協力し合えれば、有力なツールの1つにはなり得よう。資源小国かつ通商国家の日本だからこそ、化石資源を地下から採掘する前世紀型から地表でバイオ資源を再生させる今世紀型へと先手を打てないものか…。(日伯エタノール 掛林誠)