Biotechnology Japanでは、このたび新たにBTJ/GreenInnovationメールの配信をスタートすることになりました。BTJ/GreenInnovationメールは、現在、世界中で化学プロセスによるものづくりから、微生物や生体分子を使ったバイオプロセスによるものづくりへの転換が進んでいることに注目して、政府やアカデミア、企業の動きをお伝えすることを目的に立ち上がったメールマガジンです。毎週木曜日、週1回のペースでメールマガジンを発行します。
 メールでは政府、アカデミア、企業のオピニオンリーダーによる寄稿を中心にお届けします。BTJ/GreenInnovationメールへ寄稿をお願いしているのは、以下の方々です。それぞれの方に月1回、寄稿の執筆をお願いしておりますので、ぜひお読みください。
 ―財団法人地球環境産業技術研究機構 湯川英明氏
 ―日伯エタノール株式会社      掛林誠氏
 ―農林水産省企画評価課       末松広行氏
 さて、第1回のメールでは、財団法人地球環境産業技術研究機構の湯川英明氏に、昨今のバイオ燃料ブームとその問題点、解決策について寄稿していただきました。「バイオ燃料の今」を理解するのに役立つ内容になっていますので、この分野に縁のなかった方にもご理解いただけるのではないでしょうか。今後はご自身の研究内容についても解説いただく予定です。
 また、オピニオンリーダーによる寄稿のない週には、日経バイオテクの記者が、最近の取材内容からさまざまな情報をお届けします。8月も下旬に入り、そろそろ来年度の概算要求がまとまりますので、近々各省のバイオマス関連施策などを解説できればと思っています。どうぞご期待ください。
                     日経バイオテク 記者 久保田文
◆BTJの関連記事◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
         連載・グリーンイノベーション
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連載・グリーンイノベーション、
アルカリ使った前処理と糖化発酵法を開発する森林総合研究所
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発酵生産で界面活性剤を作る産総研の北本グループ長
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※※記事全文をお読みいただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。
⇒ http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/nbto/  
◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
          バイオ燃料の光と影
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■1.バイオリファイナリー・フィーバー in 米国
 「バイオリファイナリー」は、バイオマスからのバイオ化学品、バイオ燃料の生産を意味するDOE(米エネルギー省)発信の造語である。IT産業と並び、第2の産業革命と位置付られ、新規産業創成への期待は大きい。プロパンジオールなど、工業化計画が目白押しのバイオ化学品の状況は改めて紹介するとして、今回はバイオ燃料に話題を絞りたい。
 米国におけるバイオエタノール生産は急増し、本年末もしくは来年初めには2500から2800万KLに達すると予測されている。この値は、日本のガソリン使用量約6000万KLの半量に相当する。原料となるトウモロコシは、全生産量の2割に達することから、これに起因するさまざまな影響が日本のメディアにも連日のように報道されているわけである。
■2. バイオ燃料の"影"
 日本では食糧問題得の影響が大きく報道されているが、バイオ燃料への批判はこれに止まらない。多くの要素が指摘されているが、主要な点は以下となる。
  A 食料資源との競合
  B 二酸化炭素削減効果は?
  C Ethics問題
  D 環境破壊(熱帯雨林破壊等)
 また、これらの批判の対象は、Aはトウモロコシ等デンプン・糖質系原料からのバイオエタノール生産、Bは主としてトウモロコシ原料のバイオエタノール生産、Cは主として中南米地域のバイオエタノール生産、Dはアジア地域のパームヤシ栽培(既存のバイオディーゼル原料)となっている。
 Aはすでに報道されているように、食飼料用途農産物を原料とすることによる、価格上昇、および他の農産物生産からの燃料原料生産へのシフトが要因である。BはLCA(ライフサイクルによる評価)評価で、トウモロコシ生産に要する投入エネルギー・資源材料の大きさが問題とされる。Cは要因が複雑であるがサトウキビ栽培に従事する農民への極端な低賃金や、チャイルドワークの存在などが指摘されている。Dはもっとも緊急に解決すべきとされている課題である。いずれも企業がビジネスとして取り組む際には、CSRの観点から判断が重要であり誤ると経営に大きな影響を与える問題である。
 これらの問題に対し、特にEUは活発な議論を交わし、バイオ燃料に関し、「サステイナブル・バイオ燃料」が前提との認識を示し、バイオ燃料に対し「トレーサビリティー」を実施すべきとの意見も強い。
■3. 技術革新による"影解消"への取り組み
 上記のA、Bは、主として「現状技術による生産状況」を解析しての批判が主となっている。すなわち、可食資源バイオマスからの製造であり、栽培面積あたりのバイオ燃料製造量も低いこと、バイオ変換工程(糖からのバイオエタノール生成)の生産性も低いことなど、環境負荷、経済性の両面から大きな課題を有することはよく知られている。
 これらに対し、EUや世界的規模の環境NGOは、そろって「技術革新による解決」を促進すべきと主張している、すなわち、非可食資源バイオマス(セルロース系)からの生産の早期実現・拡大である。栽培土地面積当たりの倍燃料生産性は桁違いに向上し、栽培に要する投入エネルギー・資源材料は大幅に軽減され、さらにバイオ変換工程の生産性も飛躍的に向上される。
 Dの課題を解決するには、さらに大きな技術革新が必要とされる。すなわち、既存バイオディーゼル(植物油由来)に置き換わる、「バイオブタノール」生産の実現である。
■4. 今後の動向
 セルロース原料からのバイオエタノール製造法に関しては基礎研究段階はすでに過ぎ、工業化の検討段階となっており、米国では2-3年以内に年産数万KL規模のセミコマーシャルプラントの稼動が計画されている。基礎研究レベルにおいては、バイオブタノール研究(かつてのアセトン・ブタノール発酵ではなく、工業的な微生物種による製法)が水面下で進行しており、今後続々と研究状況の発表がされよう。
 われわれRITEも、最近、研究のブレークスルーに成功したことを発表している。もちろん、バイオブタノールもバイオエタノールと同じように、非可食資源バイオマス(セルロース系)からの製造である。ブタノールはエネルギー密度が高いことなど物性としてエタノールにない特性があり両バイオ燃料は補完的な位置付となるとされる。
 面白い現象として、EUでは「次世代バイオ燃料」はセルロースからのバイオエタノールを意味するのに対し、米国ではバイオブタノールであることを付記して今回の話を終わりとしたい。(財団法人地球環境産業技術研究機構 湯川英明)