現在、台風に翻弄されながら松山に向かって飛行しております。一便早めたのが功を奏して、羽田をかろうじて飛び立ちました。後1時間も遅かったら台風15号のため、欠航だったと思います。しかし、空港で次々と欠航が決まり、赤く表示される便名を眺めているのは、血圧に宜しくはありません。皆さんも、台風は大丈夫でしょうか?このメールが届く頃、東京は暴風圏内だと思います。くれぐれも、台風だと張り切らず、ご自愛願います。
 先週、味の素が主催した「褐色細胞と抗肥満」のメディアセミナーに出席して参りました。何しろ第五の成長期を迎えている身としては、このタイトルを見逃すことは出来ません。身をこれだけ慎みながらも、何故か成長が止まらない理由が開陳されるかもしれないためです。
 こうした事情は私個人だけではありません。我が国はメタボ検診がスタートしたにもかかわらず、20代から60代の男性の肥満者の割合は増大しており、今や31.7%が肥満者(BMI=25以上)になってしまっているからです。味の素食品研究所の降幡研究員によれば、30代と60代の基礎代謝量(運動せずにじぃーっとしてても代謝される熱量)の差は1日当たり50Kcalあり、この差が丁度肥満の原因に相当するとのこと。成長しているというよりも、エネルギー消費が老化で縮小しているために、第5成長期が生まれているのですな。まるでデフレ肥満ともいうべき状態です。
 降幡氏は希望も与えることを忘れません。1日当たり50Kcalはたったおにぎり3分の1か、15分のウォーキング相当する消費熱量なのです。これならじっとおにぎりを見つめ、3分の一残したり、一駅前で電車を降りて歩けば、第五の成長期に歯止めをかけられるかもしれません。
 もう一つの肥満の原因として、褐色脂肪細胞の活性低下も注目されていました。実は体内で熱を生産する褐色脂肪細胞がヒトにあるかは、2009年まで確証がありませんでした。マウスの肩甲骨から肩にかけて存在する褐色脂肪細胞は体温を上昇させ、エネルギーを消費する脂肪細胞です。エネルギーを脂肪として蓄積する白色脂肪細胞とは敵味方の関係にあります。白色脂肪細胞は体重の10%から30%存在しますが、褐色脂肪細胞は体重の1%程度です。
 ヒトで褐色脂肪細胞があることを世界で初めて確認したのが、天使大学看護栄養学科の斉藤教授でした。被検者を19℃の部屋で2時間、氷水に足を漬けさせるという厳しい寒冷刺激を与え、FDG-PETでグルコース代謝が亢進する部位を画像診断したところ、ヒトでも肩甲骨から肩にかけて、グルコースを激しく代謝、発熱する細胞があることを発見しました。最終的に海外の研究者がバイオプシーを行い、確かに組織学的にも褐色脂肪細胞があることを突き止めました。問題は寒冷刺激を与えても、60歳台以上では褐色脂肪細胞の活性化が誘導され難くなっていることです。これが加齢による肥満の一つの原因と推測しています。味の素はカプシエイトという辛みは無いが、体温上昇を誘導する食品成分を47日連続的に与えたところ、褐色脂肪細胞が誘導されることを明らかにしました。唐辛子やカプシエイトなどが褐色脂肪細胞の活性化を通じて、肥満を抑制する新しい抗肥満食品となるかも知れません。
 やっと個の医療にたどり着きました。寒冷刺激によって褐色脂肪細胞が誘導される度合いには個人差があることも、斎藤教授らの研究で分かってきたのです。まさに肥満体質と言えるかもしれません。論文発表前なので詳細は教えて貰えませんでしたが、どうやら従来から肥満関連遺伝子と呼ばれていたUCP1などの遺伝子の多型と褐色脂肪細胞の誘導し易さには相関関係があるらしい。肥満関連遺伝子の肥満の誘導メカニズムが、褐色脂肪細胞を軸に説明されようとしています。
 ウォーキングにするか?食事制限にするか? ハムレットのような心境ですが、もし私の肥満遺伝子の多型が分かれば、もう少し悩まなくても済むかも知れません。
 肥満の抑止にも、個の医療の概念が重要となってきたのです。
 さて10月5日から7日まで、パシフィコ横浜で我が国最大のバイオ展示会、シンポジウムのBioJapan2011を開催します。当然、現在のバイオテクノロジーのエンジンの一つである個の医療も議論します。どうぞ下記のサイトより、お早目に事前の展示会入場登録とセミナーの予約をお急ぎ下さい。全て無料です。
http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/2011/
 今週もお元気で。