現在、鳥取に向かう飛行機の上です。天気は上々、穏やかな飛行となりそうです。鳥取大学で開催される産学官コーディネーター会議の取材と、鳥取大学のバイオの取材を予定しています。日本の素晴らしいところは、地方にも賢人が起居していることです。むしろ、東大などかつてのスターを集めるシステム、未来ではなく実績による選抜の弊害で、巨人軍のような体たらくとなっています。フレッシュな才能こそが日本を救います。
 さて、雨で一日遅れたテニスの全米オープンも明日の早朝に男子決勝を迎えます。今年のグランドスラムの最終戦を飾るのは、ナダルか、ジョコビッチか?準決勝で、フェデラーに2度もマッチポイントを握られながら、ひっくり返したジョコビッチが有利と考えています。最近、ナダルは連敗中であり、とうとうテニスでも世代交代が確定すると、私は思っております。なでしこジャパンも苦しい試合を世代交代を意識しながら、良く戦いました。最終戦で膝に故障を抱えながら出場した丸山選手がピッチに倒された時、ベンチに居た澤選手の表情は激戦の闘士ではなく、まったくおろおろする母親の顔でした。いつも主力でベンチでの観戦に不慣れなだけでなく、なでしこの基盤である優しさこそが強さであることを見事に表現していました。世界と戦うために、皆の心がまるで上質の織物のように紡ぎ合っています。しかも、全ての若手選手がインタビューで、オリンピックチームに残留できるようにこれから頑張ると応え、甘ったれた言葉は一言もありませんでした。まったく素晴らしいチームが日本に誕生しつつあります。元気を頂きました。ありがとうございました。
 着陸前にバイオに触れなくては、叱られます。
 先週、山口県光市の海軍工廠跡地の武田薬品光工場の取材に訪れました。現地の皆さんが皆温かく、取材も進みました。現在、臨床試験用の抗体工場の建物は完成、臨床試験用の抗体製剤を製造するためのGMPのバリデーションが進んでいました。という訳で、今回は抗体工場には一歩も踏み込めませんでした。光工場は現在、大幅な工事が進んでおります。製剤製造棟と新型インフルエンザワクチン用プラントの建設が進んでいます。インフルエンザワクチンの試験プラントの建物は完成、次いで製造用プラントの建屋の鉄骨が組みあがった段階です。
 武田薬品が生活習慣病のブロックバスター医薬品依存から、抗がん剤やバイオ医薬などへと、収益の柱を急速に転換しつつありますが、製造現場もそれに対応して、急速に変わりつつあります。実際、製剤製造棟と新型インフルエンザワクチンの製造棟の建設が進んでいる敷地は、元のビタミンの製造施設の跡地でした。武田薬品が急速に開発を展開している抗がん剤など、21世紀の医薬市場を占める医薬品市場は、降圧剤や高コレステロール血症剤などの粗雑な医薬概念ではなく、個人毎の遺伝的背景とライフスタイルに応じた個の医療となります。万人に効く、巨大医薬市場という幻想から我々は脱却しなくてはならないのです。
 必然的に、大量生産とスケールメリットによる製造業から、少量多品種の生産でも収益を確保できる知識産業へと変貌を迫られるのです。しかも、武田は今年、スイスNycomed社を買収、海外に10以上の工場を一挙に確保しました。価格競争だけではなく、少量多品種でしかも高品質生産を実現するしか、光工場は生き残れないのです。販売を取り下げた去たん薬、セラチオペプチダーゼ(私はファンでした)の製造ラインも、将来の抗体医薬工場の建設用地として確保されていました。
 日本の全産業が直面している、大量生産とスケールメリットによる収益確保というビジネスモデルの破綻を、光工場で実感しました。私たちは同じことを繰り返すだけでは国内市場が縮小する少子高齢化社会に突入してしまったのです。製造業資本主義の呪縛から離れ、皆さんの頭脳から新しい雇用を生む、新しいビジネスモデルの追求を、急がなくてはなりませんね。変化の遅れが我が国の致命傷となることを、明るい瀬戸内の光を浴びながら懸念しました。
 今週も、お元気で。