早起きして、このメールを書いています。ここから1kmも離れていないホテルで、午前11時から民主党の代表選挙が行われます。この選挙結果いかんでは10月に予定されているバイオジャパン2011の講師選抜にも影響が出ます。政治の不安定さに振り回されるのは、もうそろそろ食傷気味です。今回の民主党の代表も、粘りに粘っても1年3か月しかその座を保てなかった菅首相の任期半ばの辞任に伴うもの。新代表の残り任期も1年と短く、2年後には正解再編成必至の衆議院選挙が控えています。しかし、こんなことで東日本大震災の復興と国際的競争力を失いつつある日本の建て直しができるのか?2日間の瞬間芸で代表を選んでいるようでは、どうしても悲観的にならざるを得ません。
 さてバイオです。先週の個の医療でも報道しましたが、米国食品医薬品局(FDA)は個の医療の実現に不可欠な標的医薬とその標的の有無を鑑別するコンパニオン診断薬の同時承認を軌道に乗せました。
http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/2011/08/207658.html
 FDAは2011年8月17日、悪性黒色腫の画期的な治療薬「Zelboraf」(vemurafenib)を、この医薬品の標的である変異型BRAFたんぱく質(BRAF V600E)を検出する診断薬「cobas 4800 BRAF V600 Mutation Test」を同時認可しました。また、8月26日には非小細胞肺がん治療薬「Xalkori」(クリゾチニブ)と診断薬「Vysis ALK Break Apart FISH Probe Kit」も同時認可しました。米国では自由薬価であるため、翌日から発売されています。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/1178/
 標的医薬の元祖ともいうべき乳がんの抗体医薬「ハーセプチン」では新薬認可と診断薬の認可は確か半年程度ずれ込んだと覚えております。従来は診断薬と新薬の開発プロセスは異なっており、また同じ企業やグループで診断薬を開発可能な企業はスイスRoche社と米Abbott社程度であり、新薬と診断薬の同時認可は困難と業界では言われておりました。その常識を、FDAはひっくり返してしまったのです。FDAは1980年代から個の医療の準備を重ねておりましたが、とうとう約30年の年月をかけて新しい創薬基盤を形成することに成功したのです。この潮流を我が国の製薬企業は勿論、厚労省やその委員会を形成する有識者達も真摯に理解する必要があります。臨床開発に早期にバイオマーカーを選別、患者選択を可能とする診断薬開発のスタートも切る総合的な新薬・診断薬開発体制を敷くことができるか?そして、我が国の医薬品と診断薬の審査体制と許認可体制(担当部局や審議会)の再構築が必要だと考えています。コンセンサスエンジンでのがんの専門医の議論を聞いていると、今や新薬と診断薬はがんの治療現場では、表裏一体です。今さら、過去の遺産である新薬と診断薬別々の審査や認可体制を墨守すること自体が我が国のがん医療の障害となりつつあることを、認識しなくてはなりません。時代は急速に移り行くのです。取り急ぎ、標的医薬の新薬と治療薬に限定して、審査と認可を行う体制の整備を今行うべきだと思っています。今や抗がん剤は世界同時販売申請が当たり前になりつつあり、我が国の後進性と患者さんに対する不利益がより鮮明になる可能性があるためです。合わせて薬価と診療報酬(診断薬の価格を決定)も同時に決定する仕組みも、当然のことながら望ましい。出来ない理由を山の如く、厚労省とその関係者は書き連ねることはできると思いますが、米国では可能となっています。しかも、患者本位に考えるならば、これは早急に実施しなくてはなりません。単なる事務手続きの担当者が時代の流れに棹さすことは、誇りある仕事に対する誠実な対応とは私は思っておりません。ご奮闘を期待したいと思います。
 今週の日曜日まで札幌で開催されていた臨床化学会を取材していました。ここでもコンパニオン診断薬は喫緊の課題です。基調講演で三重大学の登教授が、今後のコンパニオン診断薬の許認可プロセスに関して、薬事審査と先進医療審査、そしてその間に診断薬の品質管理を担保するNPO法人を組み合わせて、審査を加速する新たな体制を提案しました。詳細はバイオジャパンで報道いたしますので、どうぞご期待願います。
 今週は関東に台風が直撃する予想です。金土と山形県鶴岡市でバイオファイナンスギルドの実習を開催する計画ですが、羽田から飛行機が飛ぶのか、どきどきしております。
 ともあれ皆さん、お元気で。