昨日、灼熱の筑波に組み換え花粉症緩和米の田んぼを見学に行ってまいりました。
 とくかく、日が肌を刺すように強い。汗を噴出しながらも、たまには地球上で猛烈な勢いで商業化が進み、既に我が国の栽培面積の4倍以上が作付けされている遺伝子組み換え作物の研究開発をチェックしなくてはなりません。何しろ我が国に輸入される農作物の60%以上はもう既に組み換え体に変わっており、一粒も組み換え作物を食べていないと力んでいるのは、現実を直視できない消費者と直視させない行政と一部の企業だけ。もうはっきり申し上げて、こんな主張はSFの世界のことに過ぎません。
 ハワイの組み換えパパイヤも、2011年7月27日に開催された消費者委員会食品表示部会で、個別のパパイヤにシールを貼って遺伝子組み換えと表示することが決まりました。これで我が国では初めて、消費者に見える組み換え農産物、しかも生で食べる農産物が今月には正式に厚労省の官報に掲載されて、商業化する段階までやってきました。今まで加工食品の原料として組み換え農産物が利用されており、消費者には見えにくいステルス組み換え食品だったのが、これからスーパーの店頭に出現することになります。ハワイではもう喜んで食べている日本人が、どれだけ賢い選択をするのか?ここは見ものであると思います。
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/110727_shiryou1-5.pdf
 さて個の医療でなんで組み換え農産物を長々と、そろそろ堪忍袋の緒が切れ掛かっているのではないでしょうか?
 実は花粉症緩和米は今年の収穫から本格的に薬事法に基づき、減感作療法の治療薬としての開発が始まります。認可が遅れたため7月に田植えされた組み換え稲はまだ、ひょろひょろと頼りなかった。前臨床試験に必要な花粉症緩和米が収穫できるのか、ちょっと心配です。農水省が前臨床試験と臨床試験フェーズ2aまで行う腹を括っております。果たして、お米が医薬品になるのか?毎年、有効成分であるスギの主要アレルゲンたんぱく質(Cryj1とCryj2)の含有量は米粒当り一定量を確保でき、医薬品の企画足りうるのか?加えて、水田でGMP生産が可能なのか?といった疑問まで、次々と出てくることはさておいて、この花粉症緩和米が一時は個の医療を目指したものの、それを放棄してなるべく多くの患者さんの花粉症を治療するために違う品種に変えていたことを、今回はご報告したいと思います。
 当初、農水省はCryj1とCryj2のたんぱく質のアミノ酸配列から、ヒトのT細胞が認識するT細胞エピトープをそれぞれ3つと4つ選択して、7つのT細胞エピトープを連結したペプチドを花粉症緩和米のお米の胚乳で発現する品種を開発していました。見事に、げっ歯類やサルでの安全性試験や有効性試験をクリアし、このお米を食べると花粉症が緩和されることを前臨床試験で証明していたのです。
 しかし、こうしたT細胞エピトープは皆さんもご存知の通り、個人のHLAによって認識する配列に個体差が出てしまいます。残念ながら農水省はこの事実を知らなかったのかも知れません。途中まで開発が進んでいた花粉症緩和米はまさに個の医療の花粉症減感作療法であったのですが、これでは数多くの患者さんに効果が及ばない弱点が残ります。実は当初、農水省は花粉症緩和米はあくまでも食品であり、薬事法の制約なしに開発する計画であったのですが、厚労省の猛烈な反撃によってその計画を撤回、改めて薬事法下で医薬品として花粉症緩和米を開発することをしぶしぶと認めました。農水省の無知であったと私も思います。もし食品であればカルタヘナ法と食品衛生法、JAS法などの下で開発が進んだはずですが、そもそろこの条件ではアレルゲンの危険性を排除するために、導入したたんぱく質のアレルゲン性をチェックする必要があります。花粉症緩和米はこの規制にも引っかかる可能性があり、土台、食品として開発することは袋小路に迷い込むことは避けられなかったと思っております。開発するなら、正々堂々と薬事法に挑戦すべきであります。
 やり直しの一番となった農水省ですが、さすがに考えました。このままでは花粉症緩和米が有効な人口は限られる。そこで結局、Cryj1とCryj2の全たんぱく質遺伝子を導入した花粉症緩和米が開発され、今年田植えとなったのです。実際には過敏反応を抑止するために、Cryj1は3分割しそれぞれ前後にペプチド配列を導入した3つの遺伝子として、また、Cryj2はやはり3分割して順番を入れ替えた1つの遺伝子として、合計4つの遺伝子を稲に導入して、米のたんぱく質の数%まで発現に成功しています。HLAによらず幅広い患者さんを救う可能性がこれで広がりました。一般的にアレルゲンの立体構造を変化させることによって、過敏反応などは低下するとも説明していました。
 日本人の約20%が花粉症で悩まされています。もしこの花粉症緩和米が実用化できれば、組み換え農産物に対する認識も大きく変わると思います。ただし、本当にお米が医薬品として認可されるか?という疑問に関しては、私は悲観的です。栽培地域やその年の作柄によってお米の中に含まれるスギアレルゲンの量は変動するからです。一歩譲って米粉にして、成分調整できれば、私は可能性大であると考えております。そうなると花粉症緩和米ではなく、花粉症緩和白玉になるのか?
 こんなことを考えると、暑さも加わり意識が薄れてまいります。
 いよいよお盆です。今週もお元気で。