現在、梅雨の明けた那覇に滞在しています。昨日、飛行機を出た直後の熱気はもう間違いなく夏、そして亜熱帯でした。現在、沖縄は地政学的な位置を利用して、東南アジアのハブを目指しています。今月、第一号上場案件として、メビオファームの上場が行われるプロ向け株式市場、TOKYO AIMも沖縄県名護市に誘致する動きもあります。これから沖縄は、かつての大沖縄時代のように、東南アジアの流通や金融の中心地への動きだそうとしています。戦後の例外的な歴史を払拭し、歴史的そして地政学的な必然に従って、さらにはアジア経済の復権の波に乗ろうとしていました。元気のない内地に沖縄から喝をいただきたいと想い、昨夜は太鼓を打ち鳴らしておりました。
 さて、テニスの全英選手権、ウィンブルドンが始まりました。技量と体力では相手を遥かに凌駕していた森田あゆみは、勝利が見えてきた瞬間に自滅しました。恵みの雨で中断を得たものの、彼女の脆弱なメンタルは逆襲を許しませんでした。それにつけても伊達君子の強さよ。フィットネスもメンタルも完璧に調整してきた。全仏でスランプを口外した彼女の姿は、がははの笑顔に変わっていました。サッカー、セリエAの長友選手も同僚の選手のメンタルの強さが一流の技を支えていることを喝破、入団直後のスランプを乗り越え、レギュラーを確保しました。日本の若手選手も筋肉だけ鍛えて、脳と心を鍛えることを怠っては、世界に通用しません。我が国のバイオ研究者も脳だけ鍛えても駄目。フィジカルとメンタルも強い、グローバル人材を創らなくては日本だけでなく、自らも幸せになることができませんね。
 さて、今週は医薬基盤研究所の運営委員会があり、そこで東京大学医学部の辻教授とお会いしました。相変わらず先端を走るグローバル人材です。7月から東京大学医学部付属病院にゲノム医療の拠点が本格稼働するとのこと。DNAシーケンサーも備えた医療拠点です。これは基礎研究ではなく、実際の診療や医療にゲノム科学を適用する試みです。前にもこのメールでも申し上げましたが、欧米の先進医療機関では、患者のゲノムの全解読がまだ実験的ですが始まりつつあります。我が国でもやっとその先駆けが現れたのです。
 ゲノム解析のコストが技術突破により劇的に低下しています。今は全ゲノム解読は50万円から30万円程度まで価格破壊が進んできました。来年にはこの半分も夢ではありません。現在はがん患者を中心に、後天的なゲノム構造の変化を解読して治療選択を可能とする研究が進んでいます。実際、慢性骨髄性白血病の化学抗がん剤で一度完寛した後の再発で、第八染色体にゲノムの脱落が観察されたり、診断や治療の手掛かりが陸続と報告されています。近い将来、患者のがんのゲノム構造を見ながら、薬剤を選択する時代は間違いなく来るのです。
 辻教授は神経内科の教授です。実は全ゲノム解析はがんだけではなく神経疾患の原因遺伝子の探索にも貢献します。ヒトゲノム計画を推進したFrancis Collins米国衛生研究所所長が指摘した失われた疾患遺伝子の探索に全ゲノム解析が利用できることは今や確信に変わりました。人間集団に頻度高く存在しているSNPsを活用したゲノムワイド連鎖不平衡研究(GWAS)では解析が困難であった、頻度の少ないSNPs(レアヴァリアント)が支配する疾患遺伝子を、患者のゲノムを丸ごと高精度解析することによって発見しようという戦略です。そして「ゲノム解析した疾患でほぼ必ず疾患リスクの高い遺伝子を発見できた」と辻教授は興奮していました。
 がんからアルツハイマー、そして精神神経疾患の克服へと、バイオテクノロジーは歩を進めています。この行軍の協力な武器に全ゲノム解読がなる。なんとも心が明るくなります。但し、ゲノム情報を実際の医療機関の中でどうやって扱い、患者のプライバシーを護るか。一層の医療関係者の教育と患者とその家族も含めた啓発が必要となることも、忘れてはならないと思います。医学の進歩が新たな差別を生むのは、余りにも悲しく絶対阻止しなくてはなりません。
 最後に、第29回の内分泌代謝学サマーセミナーが仙台で開催されます。最新の内分泌学の発表だけでなく、東日本大震災で被災した医師らから、今後の医療に対する対策に関するセミナーも開催されます。どうぞ下記よりアクセスして、復興支援のためにもご参加願います。
http://plaza.umin.ac.jp/~steroid/summer/
http://plaza.umin.ac.jp/~steroid/summer/program_detail.pdf
 今週もどうぞ、お元気で。