前回のメールで夏のスーパークールビズは、オーストラリアのように半ズボン、Tシャツで行こうと提案したのですが、無粋な環境省は職員向けのガイダンスで、半ズボンを拒絶した模様。仕事の効率を考えれば、まったく馬鹿げた話です。Tシャツと半ズボン姿でも、他人に不快に与えないためには、相当身体を鍛えなくてはならないのですが、そこまで目配りをせず、判断した模様です。ガイダンスを仮に守っていても、ただ、茹で上がったタコのような暑苦しさの職員を許すのは美意識が足りない証拠です。「暑苦しいから出社に及ばず」。この業務命令を今年の夏ほど渇望することはないでしょう。以下に環境省のガイダンスを示しますが、事実上、省内で蔓延していたサンダル履きを、さり気なく公認するなど、こんなとこまで既成事実化による権限の拡大に奔走してしまうのは、官僚のDNAですね。
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=17496&hou_id=13775
 そもそも制服ではないのですから、環境省や会社が個人の権利に干渉することは問題です。もう5年前になりますか。知人の経産省の優秀な官僚はタンクトップに、ショートパンツにサンダルで闊歩しておりました。美人なら許されて、我々の半ズボンは駄目なのか?確かに毛脛丸出しは見苦しいかも知れませんが、サッカー選手の鍛えた脚は美しい。節電を機会に、男子の服装にも多様性を認めるべきです。多様性の拡大こそ、新しい日本が目指す復興の姿であると確信しています。
 さて、個の医療です。昨日、東京の永田町のキャピトル東急ホテルで、米国製薬工業協会が開催したセミナー「日本の新しいワクチン政策の創出」に参加しました。福島原発事故がまだ終息しない段階で、来日していただいた米国のワクチン政策のキーマン、米Pennsylvania大学のStanley A.Plotkin名誉教授と英国保健省予防接種部のDavid Salisbury部長には頭が下がります。日本のワクチン政策のキーマンである国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦センター長と細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会の高畑紀一事務局長を交えたパネルディスカッションは大変勉強になりました。
 同じ民主主義国家でありながら米国と英国は対照的なワクチン政策を取っていました。米国はワクチン接種は国家が義務付けしており、少なくとも学童では就学前のワクチン接種が学校に入学・通学する条件となっておりました。背景には軍隊でのワクチンの接種(義務付け)が行われており、ワクチンに対する理解や体験を両親が持っていることもありました。ワクチンの広報や教育を政府や関連学会が国民や両親が熱心に行ってことも加わって、国民のワクチン接種率は極めて高い数字を示しています。ワクチンの接種費用に関しては、保険会社がカバーしていない国民に対して受給資格を問わず、連邦政府と州政府が費用負担していました。
 一方、英国は強制接種ではありませんが、必要なワクチンを政府が買い上げ、無償で国民に提供しています。英国の皆保険制度(NHS)を通じて、ワクチンの接種などにかかる医療費も、保健省が支払います。英国保険省が子供の両親に対する教育や詳細な調査、そしてメディアキャンペーンによってワクチンの接種率を95%以上に保っています。どのプロセスにも強制や義務付けが無いにも係らず、高い接種率を保っている最大の理由は、英国が登録医制度を取っていることです。家庭医が、患者の状態を把握しているため、ワクチン接種が必要な児童を容易に選択し、ワクチンを受けませんかと勧誘できるためです。英国で臨床試験が円滑に行われている理由と同じ、良好な医師と患者関係が背景にあります。我が国の国民皆保険制度は、いつどこでも誰でも医療にアクセスできる優れたシステムですが、高度で見栄えのよい大病院に患者が殺到、良好で親密な医師患者関係を喪失するという欠陥があることが、ワクチンや先端医療には手痛い状況となっております。
 日本はどうか?日本のワクチン制度はまったくツギハギだらけで、予防接種法の改訂の度に、国は両親にワクチン接種の責任を押し付ける制度改革を進めています。その結果、予防接種法による定期接種(定期接種1類と2塁)と任意接種、そして痘瘡が該当する予防接種法の臨時接種、それに国の事業として一時的に行う特例措置として新型インフルエンザ、パピローマウイルス、Hib、肺炎双球菌のワクチンが混在するという大混乱状態。こうした制度上の混乱と予防接種法をいくら読んでも、国民の安心と安全を守るために国家がワクチン接種の責任を取ると言うミッションが読みとれないことも加わり、国民のワクチンの接種率は先進国では極めて低い状況にあります。水痘、ムンプス、B型肝炎、インフルエンザ、Hib、結合型肺炎双球菌、肺炎双球菌、パピローマウイルス、狂犬病、A型肝炎、ワイル病、黄熱病などが任意接種です。もう我が国でほとんど発生していない病気(ワイル病や黄熱病など)はともかく、それ以外の任意接種のワクチンの定期接種化を早急に検討しなくてはならないと思いました。医療経済的にも、その方が医療費全体では安上がりとなるのではないでしょうか。
 現在、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会で、予防接種制度の見直しが進んでいます。奇しくも、3月11日、この分科会開催中に東日本大震災が発生、流会となってしまいました。今までの議論の中間とりまとめがなされないまま、2カ月が過ぎましたが、5月26日午後3時から予防接種部会が再開されます。この部会で迅速に制度改革を立案することを、大いに期待したい。我が国の医療を変える一歩に、ワクチンの制度改革は繋がるはずです。
 今週もどうぞ、お元気で。