アジアチャンピョンズリーグも決勝ラウンドの出場チームが決まりました。皮肉なことに欧州のチャンピョンズリーグほど、日本では報道されませんが、10年後の世界のサッカーを考えれば、欧州、南米に匹敵するほどアジアのクラブサッカーのレベルを上げることは重要です。結局、我が国の4チーム全部が決勝リーグに進出しまた。決勝ラウンドの日程を見ると、なんと初戦でセレッソ大阪とガンバ大阪が対戦するという不運です。大阪ダービーはきっと盛り上がるでしょうが、これはもったいない。5月25日と26日に開催する決勝リーグにご注目願います。
http://www.j-league.or.jp/afc/schedule02.html
 さて、バイオです。 
 Natureオンラインに2011年3月13日に掲載された米UCSDのYang Xu氏らの論文が話題となっております。つまりiPS細胞に抗原性があるという論文です。確かに、今まで自分の細胞から誘導したiPS細胞は拒絶反応が無いという大雑把な議論を展開してきたので、今回の論文は驚きかも知れませんが、このメールでも報道している通り、iPS細胞の泣き所は同じ個人の線維芽細胞から由来したiPS細胞にも極めて幅広い多様性がある点です。これが材料とした細胞の多様性とiPS細胞技術によるエピジェネティックスの初期化プロセスの不完全性による遺伝子発現プロファイルの多様性の2つの理由によって生じることは、京大グループなど世界中の研究者が指摘しているところです。
 そのため臨床研究に必要なiPS細胞は患者さんの皮膚の一部をいただければ誘導できるのではなく、誘導した後に最も臨床的に応用可能な安全で、分化誘導能を持った細胞を選抜するというプロセスが不可欠なのです。今回の論文の成果は、抗原性という観点からも臨床応用の前には選抜が必要だということを指摘したという意味に留まります。
 実際論文を見れば、UCSDのグループが同系のマウスの胎児皮膚細胞に染色体に組み込まれないベクターを使って誘導したiPS細胞の80%が、拒絶反応なしに、移植された同系マウスの体内でテラトーマを発生させています。米Salk Insituteを含む、San Diegoグループは、iPS細胞とES細胞の遺伝子発現の差を根拠に、あくまで差があると言い張っておりますが、これは山中教授が前から言っている通り、iPS細胞の不完全なリプログラミングそのものであります。しかし、こうした研究から山中4因子以外に初期化をファインチューニングする因子が発見され、より完全な初期化のプロセスを明らかにされることは重要です。但し、これはあくまでもES細胞が完全な初期化であると神格化していることにも繋がりますので、注意が必要です。いずれにせよ、初期化という今まで神秘のプロセスのベールが次々とあばかれていたことは事実ですね。
先週の金曜日のバイオファイナンスギルドで議論しましたが、完全な、あるいは標準的なiPS細胞はありうるのか?実は不完全な初期化と言いましたが、細胞は工業製品と異なり均一ではありません。常に、多様化するように分化、適応を繰り返しています。ES細胞のように分化がコミットされ、発生分化というレールを辿るように規制された細胞とは異なり、iPS細胞はその多様性を発生させるメカニズムこそ初期化本質なのかも知れません。iPS細胞の多様化を規制し、ES細胞のような発生・分化のエスカレータに乗せるのが、次の挑戦となることは間違いないでしょう。
 問題は時代主義を取り、この研究を持ってiPS細胞は不完全であり、臨床応用を凍結すべきだと言う先滑りの議論を行わないことです。目前の疾患に悩む患者さんをどう救うか?ここに重点を置いて、リスクとベネフィットを十分に議論して前に進むことが、私は人道的だと考えているからです。勿論、こうした革新的な治療に対等な立場で患者さんが開発の当事者として参加することが、前提条件となります。
 
 iPS細胞に関しては、もはや一喜一憂する段階は終わったと思います。
 最後にお願いです。日経バイオテク副編集長の河野が下記のセミナーを企画しました。メッセージを下記に掲載いたしました。皆さんどうぞご参加願います。
「分子標的薬の創製と開発の最前線」をテーマにしたセミナーを今年も6月17日に開催することにしました。場所は東京・品川のコクヨホールです。現在、分子標的薬の主流はキナーゼ阻害剤ですが、今年のセミナーではmiRNAやたんぱく質間相互作用といった次世代の標的も取り上げています。セミナーの詳細と参加申し込みは以下のサイトをご覧ください。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/110617/
 今週もどうぞお元気で。