東京では遅咲きの八重桜がはや満開だというのに、被災地の三陸地方は本日、降雪の予報です。避難所生活が長期化すると、感染症のリスクも増大します。一日も早く暖かくなって欲しい。
 さて、個の医療です。
 先週の末、ソメイヨシノが満開の京都で開催された京都乳がんコンセンサスで、英国Cambridge大学Addenbrooke病院のJohn R. Benson教授が発表した結果が、極めて興味を引きました。どうやらこの10年で乳がんのリンパ節郭清術(乳がんの転移を予防するために、転移の経路となるがん病巣周辺のリンパ節を切除する術式)に革命が起こったことを裏付ける証言でした。今まで積極的にリンパ節郭清を行い、術後に患者さんにリンパ液の漏洩による腫れなど生活の質の低下を強いていた状況が変化していました。リンパ節郭清の程度と乳がんの予後にあまり相関が見られないという報告が蓄積してきたためです。
 精密に転移のリスクのあるリンパ節だけを郭清する手術に重きを置かれるようになりました。最近ではがん病巣の最も近傍に位置し、転移したがん細胞が最初にたどり着くリンパ節(センチネルリンパ節)を、病理学的に検査して、転移がん細胞の有無を確かめて、リンパ節の郭清を行うかどうかを判断するようになりました。これで転移と患者さんの上腕の浮腫などのQOLの低下を予防することが可能になったのです。
 但し、問題、それも極めて大きな問題が一つありました。それは乳がんの手術中にセンチネルリンパ節を採取して、病理検査を行い、転移があった場合に、患者さんは再手術を受けなくてはならない、重い負担でした。これを解決したのが、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を駆使した術中のセンチネルリンパ節検査です。乳がんは上皮性なので、上皮細胞に特異的なサイトケラチン19のmRNAなどを測定してがん細胞を検出します。これなら約30分で結果が出るため、手術中にリンパ節郭清の判断ができます。
 現在、シスメックスが開発したOSNA法と米Veridex社のGeneSearch法が世界市場を席巻しています。実は術中センチネルリンパ節検査が実用化の以前の2008年7月までには75%の患者さんのリンパ節郭清は再手術で行われていたのが、発売後の08年8月から12月までの段階で、20%に激減、65%以上の患者さんが手術中に郭清を行うようになってたとBenson教授は指摘しました(Cutress RI et al, J.Clin. Path,2010)。まったく劇的な変化です。だ特定の病院のデータだと思いますが、少なくとも患者さんの再手術を回避できるというような大きなメリットを証明できた個の医療は、急速に医療現場に普及することを証明するものです。
 個の医療もなかなかお役に立つようになったではないですか。
 医師限定で恐縮ですが、コンセンサスエンジン消化器がんで「コドン13変異を有する切除不能・再発大腸癌に抗EGFR抗体を臨床導入すべきか」 、コンセンサスエンジン乳がんで「閉経後のホルモン療法」と「Ki67 indexを用いた治療法選択」の最新コンセンサスをそれぞれ公開しました。どうぞ下記よりアクセス願います。
●コンセンサスエンジン消化器がん
https://bioce.nikkeibp.co.jp/consensusengine/
●コンセンサスエンジン乳がん
https://bioce.nikkeibp.co.jp/breastcancer/
 今週もどうぞ、お元気で。