東日本大震災に被災なすった地域の皆さんにこころからお見舞いを申し上げます。一刻も早く、日本の総力を挙げて、皆さんの安寧が確保しなくてはなりません。そして、その次は地域の復興です。まさに日本の危機ですが、ここは日本人の底力を示さなくてはなりません。まだ冷え込みが続いているようですが、是非ともご自愛願いたいと思います。
 さて、個の医療メールも大震災の余波で、先週はメールを休刊いたしました。申し訳ない。まずは被災地や緊急連絡のためにインターネットのキャパシティを確保するためでした。どうぞご容赦願います。
 東京電力福島第一原子力発電所の事故処理も昨日、4つの原子炉に全部外部電源の接続工事が完了、冷却用の電源確保に前進がありました。とはいうものの、原子力発電所から40Km離れた飯館村の環境放射線量は2日前より半減しましたが、更に減る傾向は出ていません。ここはもう暫く、集中して冷却と放射性物質の封じ込めに専念していただきたいと願っております。
 現在、東京新宿区で執筆していますが、通常の20~30倍の放射線量が21日から観測されています。急性の健康被害が出るには現在の10万倍の放射線量が必要なので安心して通勤していますが、なんとも鬱陶しい状況です。生物学的には延々と放射線の被害に閾値があるのか?それとも微弱な放射線被ばくを重ねて行くと一次関数的に健康被害が増大するのか?二つの立場から論争が続いております。
 しかし、最近のバイオテクノロジーの研究成果の結果、放射線によるDNA鎖の切断の修復メカニズムが分子レベルで明らかにされて参りました。これらの成果から考えると、微少な放射線に暴露されて細胞の核内のDNAが切断されても、細胞内で修復酵素群の働きによって、DNAの障害が修復されることが分かってきました。勿論、個体レベルの前向きのコホート研究で決定的な証拠は掴まなくてはなりませんが、そんな危ない研究は許されませんので、細胞レベルからの推測ですが、放射線に対する健康障害には放射線量の閾値が存在すると考えざるを得ません。1μシーベルトなら修復されえるという情報をウェブ上で見ましたが、本当かどうか、確信が持てません。いずれにせよ、細胞内のDNA修復能力には当然限界もあり、現在、TVなどで簡単に累積放射線量が健康被害の目安となるといっても、どれだけのスピードで線量を蓄積したかも重要ではないかと思っております。同じ累積線量でも長時間に亘るほど、細胞内の修復酵素群の活躍の時間も与えられることになります。また、同種の細胞が多数存在する場合、放射線障害による細胞機能低下に対する抵抗性も示すことになります。
 さて放射線障害にも、個人毎に感受性の差があるのか?
 残念ながらこの答えはYESでしょう。勿論、DNA切断の修復酵素は多種存在しているため、一つの修復酵素に突然変異があり、活性が低下していたからといって、他の修復酵素群が働くため単純ではありませんが、DNA修復酵素の活性に個人差があることを考えると、放射線障害の感受性にも個人差があることは明白です。放射線の被曝量と死亡率のグラフを見ても2シーベルトで5%の死亡率が、3シーベルトでは死亡率50%、7シーベルトでは致死率100%となり、個体によって放射線の感受性の強弱があることが読みとれます。
 しかし、そうは言っても、皆さんや私が放射線障害に抵抗性を持っているのか?もしくはその逆か?放射線を浴びなくても分かる方法はあるのでしょうか?DNAの修復に関係するBRCA1や2、p53などの遺伝型から推定するにはまだデータが不足しているのかも知れません。
 いずれにせよ、こんなことを毎日心配しなくて済むように、一刻も早く原子力発電所の事故対策が進むことを期待しています。自らの生命を掛けて奮闘している現場の皆さんに、心からの敬意と感謝を込めて。
 今週もどうぞ、お元気で。