現在、鴨川の畔でこの原稿を書いています。本日の京都は風があり、埃っぽい。花粉症だったら耐えられない状況です。桜の芽も堅く、柳の新芽もやっと出たばかり。まだ眠り足りない様子です。春間近。菜の花を除き、花の端境期でもあります。京都市内で菜の花畑は期待すべくもなく、寺や神社は華を欠いています。
 目下の最大の関心事は、小児用ワクチン接種後に報告された乳児の死亡例です。細菌性髄膜炎という小児の重篤な、時には死に至ったり、後遺症が残る感染症を防ぐため、昨年11月から我が国でも公費助成で多数の市町村で接種が始まりました。
 使用されたワクチンは、ファイザー社の肺炎球菌ワクチン「プレベナー」と、サノフィパスツール社のヘモフィルス・インフルエンザ(Hib)「アクトヒブ」だ。2011年1月末現在、プレベナーは110万人(215万回)、アクトヒブは155万人(308万回)に接種されています。これらのワクチンの接種は世界保健機構も勧奨しており、安全性は認められていました。
 が、これらの2種のワクチン、もしくは他のワクチンと同時に接種した1~3日後に、乳幼児の死亡5例が報告され、厚労省は3月4日に接種を一次中断しています。3月8日に開催された厚労省の専門家会議は、「医学的にはワクチン接種と乳児死亡の関連は必ずしも認められていない」と判断したものの、尚、情報収集が必要と接種中断を維持しました。
 5例中3例の小児には心臓病の持病があり、残る2例なども誤嚥などの疑いが残っています。我が国では小児の突然死も年間150例ほど報告されており、今回の死亡原因がワクチンかどうか、慎重に判断して、接種を再開しなくてはなりません。困ったことに、患者さんの免疫系や抗原暴露の履歴、そして併発疾患などの多様性のために、ワクチンには低い頻度ですが副反応が避けられません。より安全なワクチンの開発が進められていますが、患者の多様性の壁が完全に安全なワクチンを阻んでいます。
 一方で、ワクチン接種を止めてしまうことで、細菌性髄膜炎にかかるリスクを我が国の小児で増大することも事実です。ワクチンの普及で細菌性髄膜炎のリスクが社会から減少すれば、夜間救急でくたくたになっている小児科医の環境も改善いたします。しかし、副反応とワクチンのベネフィットを秤にかけてワクチンを接種しなくてはなりません。製品の安全性は当然のことながら、医師や両親も副反応が起きるリスクを理解して、接種を選択したり、接種後のフォローアップを心がけなくてはなりません。健康な子供に接種するために、親としては実に悩ましい問題です。
 Toll様受容体の研究から、自然免疫の仕組みが急速に理解できるようになりました。小児ワクチンの重篤な副作用を支配する自然免疫系の遺伝子変異などの探求は加速的に研究を進めなくてはならないでしょう。小児ワクチンの接種時に、少量のDNAの採血と保存も是非とも検討すべきだと考えています。ワクチンは社会と個人に感染症から逃れるという恩恵を与えるものです。しかし、健康な小児に副反応というリスクを晒すことも事実です。一人の不幸でも抑止するために、何としても個の医療を適用しなくてはならないと思っています。皆さんはどうお考えでしょうか?
 今週もお元気で。