厚労省がどうも変な動きをしています。それも医療イノベーションをあたかも加速するような振りをして。
 厚労省の再生医療検討会で確認申請の廃止を決めたとの報道がありました。廃止の前提には薬事戦略推進事業への振り替えがありますが、こうした措置が本当に、再生医療の実用化の促進につながるとは到底思えません。
 むしろ、臨床試験前にある程度、安全性と臨床試験計画の妥当性を議論する機会を失うのではないか?私は大学での臨床研究であろうとヒトを対象とした臨床試験は国家や独立した機関が全例、事前審査して管理すべきであると考えており、再生医療や幹細胞医療、遺伝子治療などは、臨床試験・研究の全例管理体制を敷くための布石であると評価しておりました。こうした流れを逆行させるのが今回の流れです。
 しかもその理由が資金と時間が掛かる為とは一体どういうことなのか?国民を対象とした臨床試験・研究は当然のことながら、リスク・ベネフィットのバランスを考えて、最適の全臨床試験と臨床試験計画を建てるべきであり、そこのコストを削減することが重要ではないと考えます。
 むしろ、非合理的にコストと時間を要求され、なおかつ、臨床試験の結果を見て、当初合理的と判断されたエンドポイントに到達していても認可されるかどうか分からないという、不合理性とる確実性を削減する制度改革でなければならないのです。この本質を間違うと、ただの看板の架け替えだけにだまされることになります。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/7266/
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/7123/
 では事前確認を代替する薬事戦略推進事業の薬事戦略相談がそれを解決できるのか?
 問題は現在の事前相談でもそうですが、そこで確認された臨床試験デザインでも、必ずしも製造承認申請に十分だという責任を医薬品医療機器総合機構は取ってくれないことです。勿論、臨床試験をやっている間に、KRASの突然変異のような新薬の薬効に関係する科学的な事実が発表される場合は仕方がないのですが、単なる担当者が違うための考え方の違いによる追加試験の要請などは、合理的とは言えません。
 むしろ米国食品医薬品局の特別プロトコール合意(SPA)のように、フェーズ3の臨床試験デザインとエンドポイント、そして副作用の許容などで合意を得て、臨床試験を行った場合、当初の定めていた安全性と有効性を臨床試験で証明できれば、販売認可を下すという仕組みが必要です。加えて、我が国の医療イノベーションを阻害する最大の原因は、医薬品医療機器総合機構の一貫性のなさばかりでなく、実は総合機構で安全性と有効性が認めら他にも係らず、厚労省が最終的に許認可の権限を離さず、二重の審査を行っているという体制にあると私は思います。
 現在、内閣官房に設置された医療イノベーション推進室で、厚労省の新薬や医療機器の審査に係る部署と総合機構を合体させる日本版FDAの創設が議論されています。薬事戦略相談よりも、ここが改革の本命です。理想的には、薬価を決める権限も厚労省から奪うことが重要です。但し、ここは厚労省の本丸にも関係しますので、必死の抵抗が予想されます。
 日本版FDA創設とSPA制度、加えて審査官の法的な免責(個人が訴訟の対象とならず、政府のみが訴訟対象となる。その代わり、厳密な内部規律と利益相反の管理が不可欠。但し、紋切型の管理では無く、どんどん審査官として民間企業から採用する、またそのために待遇改善も不可欠)の3つを整えるだけで、現在の仕組みにベンチャー割引を導入すれば、医療イノベーションが加速すると思います。
 薬事戦略相談事業でSPAを実施するというなら分かりますが、権限も有効性も明確でない薬事戦略相談をとうてい、前進だと評価することはできません。国民の安全を守りつつ、医療イノベーションを加速することを本格的に根本から厚生労働省は議論する必要があります。
 今週もどうぞお元気で。