現在、高松に移動する機上におります。
 昨夜、残念ながら生では見られませんでしたが、リーガエスパニョーラでバルセロナが仇敵、レアルマドリードを5対0で粉砕したというニュースを見て唖然としました。常に首位争いしている両チームの歴史から見ても、空前絶後ではないでしょうか?鍵はやはり天才メッシのゲームメーク。レアルマドリードのディフェンスを高速ドリブルと針の穴を通すようなキラーパスで切り裂きました。成長ホルモン分泌不全症であったメッシがあれだけ、大きくたくましく成長したのも、遺伝子組み換えによるヒト成長ホルモンの投与でした。才能故にクラブが、ブラジルの必ずしも豊かではない家庭からスペインにスカウト、メッシを成長させるプロジェクトチームを組み、彼に投資したのですが、世の中にはこうした高価な医薬品にアクセスできない人々が多く存在することも忘れてはならないと思います。
 イノベーションを促進するために、知財や商品化の独占は企業の投資を誘引するために止むを得ないと思いますが、特許期間が切れた後は人類共通の知財として活用するというのが、特許制度の本来の目的です。これを企業家も消費者も決してないがしろにしてはなりません。バイオジェネリックはその意味では必然です。品質を維持しながら価格破壊を行うことも、我々に必要な技術突破であると、最近、つくづく思うようになりました。
 皆さんは医薬品アクセスの問題は日本では問題ないと思っているかも知れませんが、それは大きな間違いです。例えば、造血ホルモンのエリスロポイエチン(遺伝子組み換えのバイオ医薬)が、我が国の健康保険では使用規制が厳しく、我が国の透析患者さんのヘマトクリット値(赤血球量の指標)は国際的には極めて低い値であったことを、今週火曜日に品川で開かれた糖鎖産業コンソーシアムのランチョンセミナーで聞き、ぞーっとなりました。ヘマトクリット値が低いほど、息切れなど患者さんの生活の質は劣化します。国民皆保険だから安心というのは大間違いなであることを認識しなくてはなりません。実際、窓口負担は米国に比べても、我が国は高く、受診抑制が現実のものとなっています。20年間続くデフレとリーマンショック以降加速した労働分配率の低下で、企業は収益は享受していますが、労働者の所得は低下しています。若年層の就業率の低下は深刻で、一部の調査では大卒の25%が就職が決まっていないという危機的状況を示しています。国民は間違いなく刻々と困窮の淵に追いやられているのです。経済的に余裕がないために、医療機関を受診しない患者を増やすことは、国民の健康を損ない、結局は医療費の増大を招きます。更に、健康に対する不安は社会の活力と安定をも損ないます。
 幸いにして、透析患者のヘマトクリット値は、血中半減期を3倍に延長したエリスロポイエチンの誘導体(N結合型糖鎖を天然型の3本から5本に増加)が商品化したため、我が国でも増加しました。医療費負担には限界がありますが、財務省の振りまく高齢化社会の恐怖のイメージによって、医療費を削減し過ぎることも、医療に技術革新を導入することを阻み、我が国の医療のガラパゴス化、つまり効能効果が低く、安全性も優れていない一時代前の医薬品や医療技術を墨守する医療を残存させます。
 状況を逆転するためには、GDPの2%程度を医療に導入し、電子カルテや個人健康情報管理システムを整備したり、医療機関の1次からの3次までの適正配分と配置を推進したり、医療関連人材の養成をしたり、国民に対する予防プログラムの提供したりするなど、朽ち果てようとしている我が国に医療インフラの再構築と国民の教育を行う必要があります。当然のことながら、長期収載薬価などとガラパゴス化した概念を排除し、ジェネリック薬に統合、薬剤費を引き下げつつ、革新的な医薬品には価格上の優遇と高額医療費補助の拡充により、同時に革新的な医薬品へのアクセスを改善することも必要です。勿論、医療の効率化には、現在、医師会や看護師会、薬剤師会など医療関係業界団体が握って離さない既得権の規制緩和も不可欠となると考えてい
ます。
 勿論、個の医療にも経済性が要求されるようになることは避けられません。低価格の診断技術の開発も重要です。また、患者選択による臨床試験費用の削減、患者選択による薬剤投与の無駄の排除などによる医療経済的恩恵の研究も必要です。個の医療の導入によって、国民の健康の質の改善と医療費総額の抑制は可能であると、私は信じています。また、そうならないと、個の医療は定着しないとすら、思いつめております。
 どうぞ今週も、皆さん、お元気で。