現在、北京に滞在中です。当地の気温は-1℃。日中は10℃くらいまで上昇する予報ですが、とにかく寒い。Brisbaneで引いた風邪のせいもあるのでしょうが、とにかく寒い。湯沸かし器を含めあらゆる手段を含め動員しても、部屋は薄ら寒いまま。本当に五つ星ホテルなのか?身体を温め喉に良い、お気に入りの生姜キャンディを齧りながら、なんとか皆さんにメールしております。
 少なくとも北京には反日ムードはありません。かろうじて売店の雑誌の見出しに「釣魚島(尖閣列島の中国名)危機」といった言葉が躍っている程度です。まあ、日本でもキオスクの夕刊紙にはこうした過激な言葉が露出されているのに似た状況です。良く管理された暴動であるのかも知れません。
 今回の北京の滞在は、BioJapan2010でも講演していただいた北京医薬バイオ中心の雷所長が、組織委員会の一翼を担っている国際会議、北京国際医薬産業フォーラム2010の取材と講演のためです。北京国際飯店に缶詰となっています。
 北京市政府はポストオリンピック後の景気落ち込みに対抗するために、新産業としてバイオと製薬企業誘致を打ち出しています。今回の会議はそのための技術移転に関して、世界中から製薬企業関係者を集め、議論する場です。欧米のビッグファーマやベンチャー企業、アジアや中国の製薬企業関係者が集結しています。
 但し、誠に残念なことに、当初の講演者のリストには日本の製薬関係者、及び日本の製薬企業の中国現地法人の関係者も誰も載っておりませんでした。バイオ年鑑の作業を北京のホテルでしながらも、この会議に絶対参加しようと意欲を燃やさざるをえなかったのです。2年前から始まった中国の保険医療改革によって、人口13億人をカバーする国民皆保険制度が誕生します。少なくとも新規に2兆円のジェネリック市場が誕生し、沿岸部の富裕地帯では日本以上にブランド医薬の市場が拡大する機会が生まれつつあるのです。
 この新しい成長性の高い市場に、我が国の製薬やバイオ企業がアクセスしない訳にはいかないと思います。過去何回もの痛い目にあっていることも事実ですが、中国もやっと資本主義市場と整合性をとっても国家が壊れないところまで成長して参りました。まだ、中国の食品医薬品局などを訪問すると「皆でほどほどにご飯をたべましょう」といったスローガンがあることも事実ですが、極端な貧困が問題となった状態を脱し、国民が飢えることを心配しない国に変わりつつあるのです。これからは生活を豊かにする欲望が国民の中に急速に拡大するでしょう。これが今年、我が国を抜きGDP世界第二位に躍り出た中国の実態であろうと思います。
 いままで一部の富裕層が引っ張っていた経済から、いよいよ中間層による国家の成長が始まる段階に入ったのです。地方での反日暴動なども、生活の豊かさを求める国民の発露なのかも知れません。その意味で、中国政府にとって健康問題は、間違いなく21世紀の大問題なのです。飢えが終わったら、国民は健康に関心を移すからです。中国政府が2年前から国民皆保険に踏み出したのも、こうした国民の欲求の変化に対応するためです。中国では歴史的に国民を飢えさせた王朝は滅びました。飢えを克服したため中国政府は次の国民の欲求(政治的危機)を健康であると認識したと考えます。日本でも1961年に国民皆保険が成立、その後、高度成長社会が実現しました。
 実は中国は日本を良く勉強しています。国民皆保険制度も徹底的に調査していました。昨夜のTVでは米国などからの元切り上げの圧力をどうかわすか、日本のプラザ合意の円高の対応策を日本に来て取材する番組を放映していました。
 それなのに何故、今回の会議で日本の製薬産業は無視されたのか?これは日本にとっての大問題ではないでしょうか?日本こそ中国の健康産業・医薬産業のベストパートナーであると主張すべく準備中です。実際、遺伝子操作では我が国のバイオベンチャーがこぞって中国で臨床開発を選択しています。我が国の厚労省が遺伝子治療など技術革新にそっぽを向いているため、遺伝子治療を次の医薬産業の柱として成長させようと振興策をとる中国になびいたのです。厚労省の反技術革新政策のリスクを回避するためにも、我が国の製薬企業やバイオ企業は欧米に加えて中国という出口や臨床開発の拠点を確保することは重要であると真摯に思っております。
 いずれにせよ、いまや国際的な経済問題を議論するのはG20です。皆さん、G20に参加して国名を全部は言えないのではないでしょうか?世界が欧米日の先進国中心から、G20まで多極化した現在、古臭い欧米中心の世界観は捨てなくてはなりません。
 北京はやっと夜が明けてきました。清々しい朝日です。
 皆さん、今週もお元気で。