日本の夏は、イスラエルのNegev砂漠より酷いものです。気温は向こうの方が高いのですが、この湿度が問題です。湿気を含んだ空気の熱伝導性が高く、汗の蒸散も抑止するので、まったく日本の夏は過酷な夏になっています。皆さんもどうぞご自愛願います。
 武田薬品の取材があまりに面白くて、長引き、昼ごはん抜きでこの原稿を現在書いております。せめてもの気晴らしに、市ヶ谷の駅のホームで江戸城の外堀を見ながら書いておりますが、熱いのは変わりません。小学校の頃、真緑に緑藻が繁茂した外堀で、プランクトンを採取していたことを思い出しました。あの頃の夏はもう少し過ごしやすかったのではなかったか。ひょっとしたら単なる過去の美化、つまりノスタルジーなのかもしれませんが。
 バイオでも、いよいよノスタルジーいる場合ではなくなってまいりました。
 民主党政権は、2兆円を確保し、成長戦略などに振り向けると、2011年度の予算編成方針の一部を発表しました。誠に景気の良い話で、バイオ研究にも予算増が望めるかのごとく期待を抱かせました。
 しかし、調べてみるとびっくり。財務省はこの財源をねん出するために、文部科学省に大幅な予算縮小を迫っておりました。実際には、国立大学の運営費交付金と私学助成金を8%から10%カットするという目論見で、大学の総長クラスが今や、霞が関に陳情合戦を繰り広げ、この無定見な予算カットを阻止すべく、この暑い盛りに汗をかいております。
 少なくとも3年間、このカットが続けば、某国立大学総長の試算では、初年度に文学部と法学部が消え、二年度目に理学部、医学部が消え、最終年度には工学部しか残らなくなるというほど。これは国立大学と私立大学の存亡の危機であることは間違いありません。
 今まで、運営費交付金1%カットを続けていた国立大学の我慢の限界、物理的節約の限界を超えてしまうのは間違いないでしょう。もし、こうした予算縮減が現実なものとなれば、大学教官のリストラが避けられません。
 しかし、考えて見れば、これは好機かも知れません。
 国立大学や私立大学の存在そのものが、少子高齢化によって過剰状態にあるためです。いつまでも社会は大学を支えるべきであるという主張は、社会貢献や人材育成に関して、国民の要請にこたえ切れていない大学の現状を鑑みると、単なるノスタルジーであるのかも知れません。
 但し、一律カットという現在の我が国の行政手法はただ我慢を強いるだけですから、進歩が期待できない。自分だけは解職されないだろうというノスタルジーにすがり思考停止するだけです。政府は国立大学や私立大学への資金投入を見直すというならば、大学制度全体を見直し、整理再編成するべきです。そうすればOECD諸国の中でも質の低下が著しい我が国の大学教育を復活する起爆剤となります。もし、これで国民が大学は社会に必要だと改めて認識すれば、資金投入も増える良循環を作り上げます。
 このメールで何回も言っていますが、大学改革には予算増ではなく、予算カットと、政府から規制の緩和を組み合わせて行うことが必要です。
 まさに、天は自ら考える大学を助くる。
 もう皆さん、ノスタルジーに浸っている時間はありません。
 さて、コンセンサスエンジンにアクセスなさいましたか?
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 お暑いですが、皆さん、お元気で。
  Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満