現在、イスラエルのTel Avivに滞在中です。本日の地中海は少し波が荒いです。
 昨日は南のNegev砂漠のバイオクラスターを取材、ここでもバイオによって急速に砂漠が近代的な工業都市へと発展しつつあります。Ben-Gurion大学に隣接して建設中の工業パークを、鹿島建設の米国子会社が開発していることも判明、日本のグローバル企業もなかなかやります。
 今朝はこれから北部のバイオクラスターの取材に出かけます。何故、イスラエルのバイオクラスターは僻地に存在するのか?謎は深まるばかりですが、取材でばたばたしており、帰国まで個の医療の本来のメールを書く時間があまりありません。どうぞご容赦願います。暑く乾いた砂漠で長期間取材するのは結構大変、ラクダがうらやましい。
 一つだけ。実はBen-Gurion大学にはベドウィン族の遺伝子解析を行っているプロジェクトがあります。南部の砂漠地帯で暮らす15万人のベドウィンは閉鎖社会であり、近親婚が65%以上もあます。しかも5世代にわたって家系を首長が記憶しております。このため、正確な家系図と近親婚による遺伝子変異の集積を合わせれば、多様な疾患遺伝子の探索に必要な情報が得られます。
 実際には、大変気の毒なのですが、近親婚によって劣勢ホモで発生する新生児や小児の遺伝子疾患が多く、Ben-Gurion大学に隣接した病院を受診することが多いのです。この小児とその家族からDNAを採取し、現在、米Affymetrix社の200kチップで一塩基多型(SNP)を解析しています。現在までに、10個以上の疾患遺伝子を同定していました。大学では首長に聞き取り調査を行いベドウィン族の家系データベースも作成中でした。
 アイスランドでも同様な状況(近親婚率は低いですが)にあり、倒産はしましたがアイスランド国民の家系データとSNP解析で、遺伝子疾患を見つけるDeCode社が誕生しました。その意味では、イスラエルのNegev砂漠は南のアイスランドと言えるかもしれません。むしろ近親婚が多い分、従来の集団遺伝学的な研究では見つからない希少な疾患遺伝子を把握できる有利さがあります。
 Ben-Gurion大学の現在の学長は小児科の医師であり、ベドウィン族の遺伝子解析プロジェクトを大学全体で支援しております。振り返ってみると、我が国では総合科学技術会議がゲノムコホートを重点施策に取り上げておりますが、ただ、日本人の遺伝的均質性を頼りに、漠然とプロジェクトを策定しても、アイスランドやベドウィンに対抗することは難しいでしょう。一体何を探索し、どう研究を進めるのか?その問題意識を明確にすべきでしょう。ただ登録数をのみ誇るのでは、英国が現在進行中のBiobank UK(50万人を登録、長期に前向き観察、しかも英国NHSの電子カルテ情報も活用する)とは対抗できません。
 知恵の絞りどころです。イスラエルの砂漠の中で、痛感したところです。日本のゲノムコホートはどうやって、ベドウィンやバイキングの子孫たちと戦うのか?
 
 さて、コンセンサスエンジンにアクセスなさいましたか?
 当面は医師限定ですが、7月21日からこのバーチャルな議論を公開します。公開後1週間は質問も受け付けておりますので、医師の方はどうぞ下記よりご登録願います。「コンセンサスエンジン消化器がん」というのが、現在開発中のメディアの正式名称です。
https://bioce.nikkeibp.co.jp/consensusengine/
 今週も世界は動いています。皆さん、お元気で。