スカパーを除き、日本の放送局は本日早朝のサッカー・ワールドカップの3位決定戦を放映しておらず、ドイツがウルグアイに3:2で勝利したことを、インターネットで知るという寂しい状況です。しかし、ドイツの水族館のタコは今回も勝者を当てたのでしょうか?前回の個の医療メールで決勝戦いはドイツVSオランダになって欲しいと書いて、ドイツの蛸に負けてしまいました。スポーツライターとしての目は、どうやらなさそうです。これからもバイオと医療の専門記者を目指さなければなりません。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/pmn/mail_itiran.jsp 
 蛸に教わる、人生の道、パエーリャで恩返し。問題はテルアビブに美味しいスペイン料理があるかですね。この際、味などどうでも良いかもしれませんが。 ワールドカップになると何をさて置いても現地に長期滞在し、我が国のプロテオミックス研究を滞らせてきた産総研の夏目先生も、今年はプロジェクトの最終年度を意識したため、お台場暮らし。うーんっと考え込んだ結果の、同氏の予想はスペインの勝利。今回は私もスペイン、イニエスタの天才とチームの成熟さに賭けます。
 このメールをお読みになる頃は、多分、無事にイスラエルに到着しているはずです。本心からそうなって欲しいと願っております。今回はイスタンブール経由で、テルアビブに向かいます。トルコ人が参加しているNPOをイスラエル軍が攻撃したため、トルコが断交することを検討中だと報道されています。断交したら、私はどうなるのか?極めて先が見えない状態です。まあ、なるようにしかならない。このメールも止むを得ず、1回位お休みするかも知れませんが、その時はご容赦願います。順調に行けば、来週のメールは黒海を眺めながら執筆しているはずです。
 
 皆さんはご存知でしたか?リーマンショック後、最も早く経済が立ちあがった国がイスラエルであったことを。今回はこうしたイスラエルの謎と、バイオ産業やバイオ技術の最先端をこってりと取材いたします。止めてと言っておりましたが、イスラエル政府が殺人的なスケジュールを組んでおり、それもいささか憂鬱の種です。昔、豪州政府とオーストラリアの各州州政府が、私を缶詰にして15分置きに取材を入れ、すっかり頭がウニになり、まともな記事を書けなかった経験を思い出します。私の取材企画意図に沿った取材先以外はきっと上の空で聞かなければ、脳を保護することができません。記者として老練になったというべきでしょうが、失礼の無いようにしなければなりません。ともあれバイオ先進国からの最新情報をご期待願います。
 さてバイオです。
 ヒト幹細胞臨床指針はパブリックコメントが終了、先週の木曜日の厚生労働科学会議技術部会で承認されるはずでした。指針案が、ヒトiPS細胞の臨床研究を自家に限定したことが外れ、他家由来の細胞でも可能となったことと、別の指針、の成立を前提にしていますが、ヒトES細胞の臨床応用の道を開いたことで画期的な変化というべきものでした。これによって、事実上、我が国でiPS細胞とヒトES細胞の臨床研究の道が開かれました。当面は勿論、安全性確保の臨床研究が主流になるため、"iPS細胞やヒトES細胞による再生医療が解禁された"と大騒ぎするべきものではありません。しかし、今まで折角基礎研究で世界をリードしても、倫理や社会的合意形成の壁という訳のわからない障壁で、科学者や医師、そして患者がもやもやせざるを得ない状況は変わりました。これから粛々と臨床研究を進めて行くことが肝心です。
 と書いたものの、私も部会員の一人でしたが、先週の技術部会では正式承認されていないのではないか?と思います。どうしても安全性確保のため、iPS細胞の他家応用は慎重に対応すべきだという委員が一人いたためです。従来、他家に対して、自家が安全であると考えられてきたのは、自分が感染しているもの以外の感染の可能性が低いこと、また自分の遺伝的なリスク以外のリスクにさらされる可能性が低いためです。
 しかし、iPS細胞には、自家由来の細胞でも多様性があることが問題となります。増腫瘍性などに関係するエピジェネティックスのパターンや染色体の安定性などに多様性があるため、このリスクを制御しなくてはなりません。むしろHLAが適合した品質管理されたiPS細胞の方が、エピジェネティックスや病原体の混入などに関して、自家より安全、もしくは同程度以上に安全であるというのが、京都大学の山中教授らが、ヒトiPS細胞の細胞バンク樹立に奔走している理由です。
 私も、現在の細胞の品質管理技術とエピジェネティクスの解析技術の進歩を考えると、自家だけ臨床研究を認めるのではなく、他家由来のiPS細胞の臨床研究も同時に慎重に進め、経験を積むべきであると考えています。皆さんはどう思いますか?第一、脊髄損傷など自家の細胞からiPS細胞を作っていては、細胞移植のタイミングを逸してしまう疾患も多いのです。
 現在、部会長預かりになっている改正版ヒト幹細胞の臨床指針を、早急に告示すべきだると思います。

 さて、そろろそ飛行機に乗る時間です。皆さんは投票してきましたか?私は早朝に老人に交じり、投票を済ませました。結果は分かりませんが、日本が元気になる一歩を招く選挙結果となることを期待しています。勿論、連立もありということです。
 どうぞ、今週もお元気で。