まさか、アルゼンチンがあんなにボロボロに切り裂かれるとは思いませんでした。ドイツの早さと強さには仰天しました。スペイン、ウルグアイ、オランダを合わせて4チームが、いよいよ地上最強のチームを賭けて戦いが始まります。ウルグアイのスアレス選手は、神の手セーブでガーナを粉砕。こうしたルール違反を許容してしまうサッカーの大らかさが、世界スポーツになる基盤でしょう。準決勝を勝ち抜けば、決勝にスアレス選手が再登場します。ウルグアイには勝って欲しいが、少し難しいかも知れません。
 ワールドカップのおかげで、すっかり影が薄くなったウィンブルドンですが、ナダルとセレナがそれぞれ優勝、こちらには番狂わせがありませんでした。ただ芝の王者、フェデラーがピークアウトしたことだけが明白となったことが、少し寂しい。が、これも成者必滅。いつかは通らなくてはいけない道です。
 さて、先週は中国で取材をしておりましたが、中国政府は真剣に国民皆保険への意欲を示しています。昨年、多分我が国を国民総生産(GDP)で抜き、今年、多分科学研究費の総額でも抜く、中国が発展途上国モデルからいよいよ先進国モデル、つまり福祉国家へとギアを切り替えようとしているのです。驚いたことに北京の中国食品医薬品局(SFDA)のビルの中には、「皆でご飯を分け合おう」といったスローガンのポスターがまだ貼ってありました。「ほどほどご飯を国民が食べられる」というのが中国の今までの国家成長目標でしたが、今や次の目標、国民総てが健康に暮らせるという次元に上がってきたのです。2010年には既に国民の80%を4種類(本当は国家公務員健康保険があるので5種類)の健康保険でカバーするまでになりました。本気であると思います。
 これも、国家がいつか通らなくてはならない道です。
 都市との格差拡大で不満のたまる農村部の慰撫のためにも、健康保険は極めて重要な手段だと思えます。もし、中国の国民皆保険が機能すれば、中国は内需という成長エンジンを手に入れます。また、製造業から医療や予防という新しいサービス産業に業態転換も可能になると期待しています。北京のスモッグを見ると、製造業で13億人の国民を食わせ、豊かにするのは、もはや環境の限界に近付いていると実感します。
 我が国の国民皆保険制度が、1961年に始まり、東京オリンピックはその3年後でした。北京オリンピックは2008年。中国政府は国民皆保険制度を、2011年度までに作り上げようとしています。3年前後しておりますが、オリンピックを開催できるまで成長した国家は、国民の次の要求に直面しなくてはならないのです。環境に加えて、健康がその要求の第一のものであります。
 現在、中国はGDP当たり2%の医療費がかかっていますが、2020年までに医療費を4%、そして介護や予防など医療関係支出で4%、合計GDPの8%の健康経済を実現すべく走りだしています。健康保険や医療関連施設・人材の整備に09年から3年間で8900億人民元(1人民元=14円とすると12兆4600億円)を政府が投入しました。
 突如出現した中国の医療市場に、我が国の企業はどう対応しているのか?
 大塚製薬、武田薬品、エーザイなど多数の企業が中国市場には既に参入しています。上海の中山病院に隣接した調剤薬局でも日本の製薬企業の処方薬が欧米のビッグファーマの商品群と中国の製薬企業のジェネリック薬群の陰に、ひっそりと陳列されていました。本当に探すのが大変なほど、残念ながら存在感はありません。日本の企業は未だに、中国を製造現場として認識しており、今後、急速に成長する地方の医薬市場への流通アクセスはまだ構築できていないのが現状です。
 中国の皆保険制度で、新たなビジネスチャンスが生まれることは間違いありません。第一は高品質のジェネリック薬。但し、SFDAの長官はバイオジェネリック薬という概念を持っていませんでした。バイオも化学合成の低分子医薬も同じ考えでジェネリック薬を審査する方針らしい。基本方針は特許薬と同レベルのジェネリック薬の品質確保でした。欧米のバイオジェネリック奨励と権利保護の波はまだ中国には波及していませんでした。
 第二は政府が音頭を取っている新薬開発です。遺伝子治療など、保守的な我が国では開発が難しい革新的な新薬の開発が中国で実は進められています。従来の欧米での臨床データが我が国での新薬申請の根拠になるモデルから、中国での前臨床試験や臨床試験で、我が国に新薬申請が行われる時代も迫っております。医薬品医療機器総合機構が、日中韓の3国の協力関係を築こうと腐心していることは、極めて正しい戦略です。遺伝的背景もほぼ均一な3国間で新薬創製の協力体制を敷くことは、我が国の企業だけでなく、欧米のビッグファーマやベンチャー企業にとっても、アジアの臨床試験の魅力を増大し、我が国から逃げていった国際共同臨床試験の呼び水となると期待しています。そのためには、我が国の医療機関、臨床試験の拠点病院と臨床試験に関わる人材の育成を急がなくてはなりません。
 中国は高齢化でも我が国を追っています。高齢化は、医学と医療制度が充実した国では必ず通らなくてはならないもう一つの道です。我が国はこの点で世界をリードしており、この利点を活用して技術革新とそのビジネス化を強力に進めれば、中国市場に関しても第三のビジネスチャンスとなると、直感しました。
 一人っ子政策とこんなに美味しい中華料理が合わされば、間違いなく中国が生活習慣病大国となるためです。中国政府の保険医療制度改革でも、生活習慣病の予防対策は重大課題の一つとなっています。中国もそれは認識しているのです。
 
 皆さんも食べ過ぎには注意。夏バテでそれどころじゃない?
 どうぞ、今週もお元気で。