今、日本は水浸しですね。
 別に雨だからではなく、田植えのために田んぼに水が満たされているためです。現在、仙台で呼び出しを受けて、東京にとんぼ返りしている最中ですが、車窓から眺める田園風景は、まるで鏡を張ったように田んぼがきらきらと光っています。今年はアイスランドの火山の影響などもあり、冷夏になる可能性がありますが、是非とも日本の育種者が創り上げた稲が逆境を跳ね返してくれると願っています。
 さて個の医療です。
 個の医療にもいよいよ第2世代DNAシーケンサーが本格的に貢献する時代がやって来ました。そして今年末から来年にかけて登場する第3世代の一分子DNAシーケンサーも大きなインパクトを与えることは確実です。エピジェネティックスの解析や、第2世代ではPCRやDNAシーケンス技術などのバイアスで解読できなかったヒトゲノム配列も詳細に解析できる可能性が出てきたのです。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0703/
 一昨年の今頃、オーダーメイド医療実現化プロジェクトの後継プロジェクトを議論した場で、「まだまだ解析精度が悪く、第2世代ゲノムシーケンサーは疾患関連遺伝子の探索には使い物にならない」といった意見を聞きましたがが、今やそれは完全に時代遅れとなりました。
 Lancet誌5月1日号に米Stanford大学と米Harvard大学のグループが健康な男性の全ゲノムシーケンスを行って、この男性が持つ疾患リスクや医薬品の副作用のリスクを丸ごと解析した結果を発表しました。現在までに遺伝的背景が明らかな55の疾患と薬剤の副作用や代謝能力を網羅的に解析したのです。今後、GWASや全ゲノム解析による疾患遺伝子の研究が進めば進むほど、より詳細に患者さん毎の疾患や副作用のリスクを推定することが可能となります。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0659/
 ゲノム解析のコストがもう5分の一になれば、本格的なパーソナルゲノミクスの時代が間違いなくやって来ると、確信させる研究成果です。カルテの裏に、患者さんの全ゲノム情報が付加される時代がもうすぐなのです。しかも、これは遠く離れた外国のことではありません。日本人の全ゲノムシーケンスも既に一部ウェブ上で公表されています。年内には5人以上のシーケンスも完了します。次世代シーケンサーの技術突破は、装置を購入すればすなわち技術移転可能(ただし、膨大な情報処理とそこから疾患などのリスクを解析するソフト開発は別)であるため、米国で起こった技術革新は日本に直ちに波及することを忘れてはなりません。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0698/
 しかし、ゲノム情報の公開、患者さんへの説明と同意、ゲノム情報の活用の方策などには、日本固有の社会的・文化的要素を考慮しなくてはなりません。是非とも次世代シーケンサーが生み出す貴重なヒトゲノム情報を社会のコモンズ(共有資産)として活用する制度や市民の理解を得るための活動を今から始めないと、技術革新を我が国ではまったく利用できていない組み換え農作物(GMO)の二の舞となるかも知れません。GMOの悲劇は我が国の国民がGMOの最大の輸入国でGMOなしには生活できない状況であるにも関わらず、自分はGMOを食べていないと考え、自分の近くにGMOを開発したり、栽培したりすることを嫌悪しているという、まるで国外から見たら漫画のような状況にあることです。企業も政府もGMOでとった愚民政策を繰り返すと、ゲノム医療で我が国の技術革新力が低下し、その結果、GMOのごとく海外企業の知財に我が国の国民の健康を守ることを委ね、医薬品の収益が海外に流出し、我が国では新薬開発に必要な研究資金のクリティカルマスを確保できない状況を招くことを認識しなくてはなりません。我が国は昨年、サンマリノに世界最長寿で肩を並べられてしまいました。このままでは、ロシアのように平均寿命が低下する事態も懸念されるところまで来ていることを、どうぞご理解願います。
 先端研究者をお招きし、次世代シーケンサーの技術革新について皆さんと議論するBTJプロフェッショナルセミナーを、6月11日午後、品川で開催いたします。
 個の医療にもはや次世代シーケンスは不可欠、実はこのセミナーでは第3世代のシーケンサーに関しても最新情報を提供いたします。米国Life Technologies社の開発担当者が来日し、来年発売を予定する新型シーケンサーの全貌も発表されます。
 どうぞ皆さん、お早めに下記よりお申し込み願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/100611/
 皆さん、お元気で。