なんでこんなに冷え込むの?
 花冷えといっても限度があります。これでは花凍えになってしまいますね。皇居の堀の桜も2分から3分咲きで留まっています。このままではせっかくの花の桜色が褪せるのは必定、少し冴えない春となりそうです。
 フィギュアスケートの国際大会でジュニアから男女のシングル全てで我が国が優勝しました。これは日本スケート連盟のジュニア育成プログラムの成功を示しています。素晴らしい成果、です。
 しかし、緊張の糸が途切れたキムヨナがあんなにもあっけなく転倒を繰り返すことを見ると、この大会はオリンピックとは決定的に違う。「オリンピックの悔しさはオリンピックでなければ晴らせない」と真央ちゃんが明言している通り、4年後のソチでこそ日本の強化策の真価が問われます。「そちに任す」なんて冗談を言っている場合では、毛頭ありません。
 さて、バイオでも国の強化策が研究のインフラとなり、国際競争力に決定的な影響を持つことは言うまでもありません。政府・総合科学技術会議や日本学術会議が本当に日本スケート連盟より有能なのか? ノーベル賞以外に、オリンピックや国際大会が無い分、評価が国民に分かり難いことにかまけて、今まで安住してきたつけを支払わなくてはなりません。ノーベル賞は種目数がオリンピックやパラリンピックと異なり少な過ぎて、科学・技術全般を評価する指標にはなりえないと、私は思います。
 新政権がこれから夏にかけて行う科学技術政策・体制の見直しで、もっとも重視されるのが、国民の理解と納得です。国民から科学支援を受けるために、どうやって科学や技術の意味と面白さを国民に伝えるか?今まで文科省など霞ヶ関方面にだけ目を向けていればよかった科学者や技術者たち、それから永田町と財務省にだけ説明すれば良かった官僚たちも、一斉に頭を抱えています。
 実のところ、私たちのメディアもそうした悪しき構造の虜となっており、時には情報独占とのバーターで、官製の情報を垂れ流していたことを反省しなくてはなりません。また、学術成果の取材に関しては、敬して遠ざけており、難しいほどありがたい、というマゾヒズムに浸っていたのも問題でしたね。これからは、新しい科学報道も皆さんと一緒に開発しなくてはいけません。
 さて、第一次の予算仕分けによって危機感を抱いたアカデミズムが、メールによる文科省へのパブコメで反旗を翻したことに続き、日本学術会議が明らかに仕分け対抗策を打ち出してきました。カミオカンデのような大型施設計画に加えて、バイオのゲノムデータベースなどの大規模研究(大きなハードを必ずしも必要としないが、大規模なチームを長期間にわたって運営する科学研究)を取り上げ、以下の6つの提言を行っています。皆さんも是非とも、日本学術会議のホームページに詳細な報告書と、今後我が国が取り上げるべき、科学プロジェクトに関する資料がありますので、チェックしていただきたい。科学を志す皆さんにとって決して無視してはならない情報です。
 日本学術会議の具体的な提言は以下の通りです。
提言1 学術の大型計画のマスタープラン策定と科学的評価に基づく推進策の構築
提言2 従来の「大型施設計画」に加えての「大規模研究計画」の確立と推進
提言3 大型計画と基盤的学術研究、およびボトムアップ的な基礎科学の大型計画と トップダウン的な国策的大型計画の、バランスの良い資源投資と協力的かつ総合的 推進による我が国の学術の強化
提言4 大型計画の政策策定プロセスにおいて、科学者コミュニティからの主体的な 寄与が十分に行われる体制の確立
提言5 科学者コミュニティによる大型計画の長期的検討体制の構築
提言6 学術の大型計画の推進を通した、多様な関心と能力を持つ人材の育成と教育 体制の確立
 この真摯な取り組みには満腔の敬意を表します。提言は是非とも実現していただきたいがが、いかにも古臭いにおいがするのが問題です。時代の変わり目なのですから、従来の既得権にとらわれた官製・慣性の法則を打破しなくてはならないのに、まったく残きに堪えません。本当の知性は、既得権を飛び越え未来を洞察するものです。もし、日本学術会議が現在ある情報を精密に整理し、その方向性を示すだけなら、それは知性ではなく、単なる事務能力を示しているに過ぎません。
 現在の我が国の科学が直面する本質的な変化、軍事や政府調達ドライブによる科学研究から、健康と環境というまったくの平和・民生ドライブによる科学研究に変わろうという状況を、とても見通しているようには思えない。立国モデルが変わろうという今、求められる新しい知恵とそれを国民に返すメカニズムの提言こそ、私が望んでいたものでした。
 きっと日本学術会議の方からも反論があると思います。できればインタビューなどさせていただければ、私の蒙も啓けるかも知れません。どうぞよろしく願います。
 今週もどうぞ皆さん、お元気で。