昨日のカーリング、誠に残念でしたが、相手が上手でした。ショットの精度と戦略をより向上させなくてはなりません。世界の壁は誠に厚い。ここは謙虚に研鑽を積むしかありません。体格の差があまり響かないこのスポーツこそ、勝機はあります。しかし、あれだけ長時間集中するためには、強靭な体力と強靭な精神を涵養しなくては無理。キレやすい子供たちでは土台勝負になりません。やはり、北のスポーツですね。我が国の社会をより健全にしなくては、金メダルは難しいかもしれません。チーム青森(クリスタル?命名の根拠が薄弱です)には、残りの試合も全力を尽くしていただくことを期待します。
 さて、現在、浜松に向かっております。浜松医科大学と浜ホトの取材です。果たして画像診断でどこまで精神疾患を診断できるか?フォトニクスの聖地であるで、どこまで技術開発が進んでいるか?楽しみです。画像診断やバイオマーカーの開発が、真の意味で精神疾患の治療薬や精神の状態の対症療法薬の開発に繋がると期待しています。 
 さて、個の医療です。
 先週、遺伝子マーカーは心血管疾患リスク予測の精度を向上させないという発表を、米Brigham and Women’s Hospitalの研究者がJAMA誌2010年2月17日号で報告しました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9014/
 NIHが行った全ゲノム解析の結果から、心臓血管病のリスク(高血圧や高コレステロール血症など)に関係する遺伝変異を取りだし、それらの変異の組み合わせによって、心臓血管病の発症リスクを予測できるか、1万9313人の白人女性を対象に解析したところ、残念ながら有意な結果を得られなかったのです。
 具体的には、101個の心血管疾患に関する突然変異(SNPs)の組み合わせを行っても、今まで臨床で使われている伝統的な危険因子の一つである若年性の心筋梗塞の家族歴を上回る結果を得られなかったのです。つまり、手間暇かけて、遺伝子解析を行っても得られる利益は少ないという結論です。
 しかし、皆さん、これでがっかりしてはいけません。これはGWAS(全ゲノム連鎖不平衡解析)で得られた疾患関連遺伝子マーカーでは、実は良くある典型的な結果なのです。第一世代のこうした研究で見つかる疾患関連遺伝子は、集団中に5%以上存在しなくては検出されない限界があります。そのため、現在の段階では、疾患関連遺伝子や生化学検査などの診断所見を組み合わせて、何とか疾患の発症予測に貢献する診断方法を開発する努力が全世界で展開されていますが、現在の段階ではリスクの高い遺伝変異が高頻度に存在するファーマコゲノミクス関連遺伝子変異(薬の副作用や薬の効果を左右する遺伝変異)を除き、ごくわずかの遺伝子変異しか、疾患の発症予測には現段階では役に立っていないというのが現実です。まだまだ、私たちは研究を進めなくてはなりません。
 個の医療の遺伝疫学的研究の知恵袋であるスタージェン情報解析研究所の鎌谷所長はこの研究成果を下記のように判断しています。()内は私が老婆心ながら付け加えました。
 
 「これは妥当な結論だと思います。心血管疾患に関与する個々の遺伝子(変異)の効果サイズ(疾患を引き起こすリスク)が小さく、これまで知られた遺伝子では家族歴の情報よりはるかに小さい効果しかないのだと思います。若年性心筋梗塞発症の家族歴はかなり強い要因だとすると、他にまだ見つかっていない小さな効果サイズの遺伝子(変異)が多く残っているか、頻度がより低く効果サイズの大きな遺伝的多様性が多くありGWASでは見つからない可能性があります。あるいは、若年性心筋梗塞発症の家族歴と言う要因に、生活習慣などの要因が含まれている可能性もあります。発症予測にはあまり寄与しないものの、個々の要因の集団への影響(populationattributable risk)については書かれていませんか?一般に1%の寄与しかない要因でも、そのリスクの除去により疾患が25%低下すると言うことが言えます。そのように治療のターゲットになりうるということは言えると思います。 また、心血管疾患以外では個々の遺伝子の効果サイズが大きい例もあるので、このような例では発症予測に寄与する可能性があると思います。 例えばPGxに関連する遺伝子がそうでしょう」
 疾患関連遺伝変異を持っているからといって、すぐに疾患になると悲観的になることはありません。現段階では臨床上有用な発症予測法を我々は入手できていないのです。家族歴以上に強力な遺伝変異の組み合わせには、今のところ私たちはたどり着いていないのです。もっと疾患の発症予測となる遺伝変異をどうやって見つけるのか?特に、環境によってゲノムが化学修飾して遺伝子発現のパターンが変わる、エピジェネティックスを突っ込んで研究しなくてはならないのかも知れません。
 いずれにせよ、これから第一世代や第二世代のGWASで多数の疾患関連遺伝変異が見つかってくるでしょうが、これが本当に疾患発症予測に使えるかは、疾患の種類によって大きく異なります。疾患はいずれにせよ、遺伝素因と環境素因(ライフスタイルも含め)によって発症するからです。遺伝と環境の寄与率は疾患によって変化します。
 これから暫くは、落胆の連続でしょうが、今回の研究のように多数の患者を対象に疾患遺伝変異の臨床的な有用性を評価する研究は絶対不可欠であります。失敗の果てに、きっと特定の病気で疾患関連遺伝変異によって発症予測できることが実証されると信じております。
 失敗はまさに成功の糧。粘り強く参りましょう。
 今週も皆さん、お元気で。