現在、大阪に滞在しています。早朝の会合に出て、東京にとんぼ返りイスラエル大使館で取材をする予定です。大阪も光は春です。まさに節分です。豆を撒くだけの意味ではありません。
 さて個の医療ですが、個の医療でも紋切り型の対応は禁物です。
 現在までに実用化しているほとんどの個の医療のバイオマーカーが、HER2にしろ、K-RASやEGF受容体の変異にしろ、薬効を示す患者を鑑別するために役に立つというよりも、効かない患者の選別に有効なためです。
 乳がんの抗体医薬「ハーセプチン」が結合するHER2が陽性であったとしても、3割程度の患者にしか有効性がありません。現在は乳がん細胞の表面に露出しているHER2の数と有効性の関係が研究されており、HER2の量が少ない患者では、抗がん剤を結合したハーセプチンが有効であることが臨床試験で米Genentech社が証明しつつあります。しかし、それでもHER2陽性の患者の4割に有効性を示すだけであることは冷静に判断しなくてはなりません。生体内にはまだ未知の機構が存在し、がんに治療抵抗性を与えているのです。従って、個の医療が実用化したからといって、研究を止める訳にはいかないのです。
 ひょっとしたら個の医療の究極の姿は、非常に多数のバイオマーカーを測定し、ダイナミックに患者さんやがんの状況を見ながら、適切な医薬や治療を最適なタイミングで供給することになるのではないでしょうか?
 その意味では反対の例も考えなくてはなりません。例えば「アービタックス」やパニツマブのようなEGF受容体1に結合する抗体医薬は、K-RASに突然変異を持つ患者には効果がないとされていますが、本当にそうなのか?個の医療の実用化によって、いわば治療対象外とされる患者さんの救済に関しても、研究を進めなくてはなりません。こぼれ落ちた患者さんをさらに層別化して有効な治療法を探索する研究も重要となります。
 個の医療と一口で言いますが、あくまでも患者を救うための治療法を開発することが目的であり、患者を棄てることではないことは心に刻みこまなくてはなりません。
 今週も皆さん、お元気で。