本日は久しぶりに、編集部に居ります。これから横浜に向かいますが、中華街で盛り上がろうと考えているのに、どうやら夕方から雪の予報です。何とか、行き倒れに成らぬよう楽しんで参ります。今週も大阪と那覇を訪れなくてはなりません。
 全豪オープンテニスも、終わって見ればフェデラーとセレナが優勝、マレーや復帰間もないエナンを寄せ付けない強さを見せました。こうしたもはやベテランの域に達した男女二人のチャンピョンが、更に進化を遂げたことにまったくもって恐れ入ります。前回の全豪でナダルに完敗、思わず号泣したフェデラーが、今年はバックハンドのドライブを習得、ナダルに突かれた弱点を完璧に強みに変えてきました。また、昨年の全米でジャッジに思わずKill youと発言、途中棄権して、メディアに散々叩かれた屈辱をセレナもまた、最高のコンディショニングに調整し、エナンを一蹴しました。きっと全仏ではエナンが猛烈な闘志で、巻き返してくるはずです。こうしたドラマに、観衆も魅了され、記録破りの集客となりました。後二年後にはグランドスラム最大の大会である全米オープンを観客動員数で凌駕する可能性すらあります。まさに、成長する資源大国、オーストラリアを象徴する大会となりました。
 今月、怪我で欠場していた錦織も復帰します。全豪では中国選手がベストフォーに二人も進出、中進国の発展を印象付けました。まだ老大国に成るには日本は貧しすぎますが、錦織やその後続の成長を大いに期待したいと思います。ちなみに、車いすテニスでは日本人選手の国枝がマッチポイントを握られながら逆転、9連覇を成し遂げました。我が国の希望の星であります。10連覇も頑張っていただきたい。
 さて、先週からススキに頭を占拠されています。
 どうやらススキを原料にしたソフトバイオマスからのバイオエネルギー生産やバイオリファイナリーで、我が国が国際的に競争力を持てる可能性があります。ススキの育種選抜とソフトバイオマスを効率良く分解し、尚かつ酵母が苦手とするキシロースなどの5単糖も発酵することができるクロストリディム菌の遺伝子操作による改良が鍵を握っています。これに我が国が世界をリードしているメタボローム(代謝産物の悉皆解析)とシステム生物学を組み合わせて、最も効率の良いバイオエネルギーやバイオリファイナリー(バイオマスを出発点とした化学工業体系)を実現する戦略です。一部はNEDOなどが研究資金を投入して支援していますが、まだ全体的なプロジェクトの統合が行われていません。早期に我が国の独自戦略プログラムとして推進すべきだと考えます。今ならなんとか間に合うかも知れません。少なくとも相打ちには持ち込めそうです。さらに後で論じますが、ホワイトバイオの事業化のためには、社会システムの改善も必要です。技術だけでなく、我が国の社会にどう適合するか?海外への技術輸出はどうするか?など、同時に研究開発を進めなければ、実用化は実現いたしません。
 何故、ススキなのか?
 何と言っても、ススキは日本、中国、韓国などに偏在する東北アジア固有種です。したがて、丹念に調べれば、我が国には実は豊富な遺伝子資源が存在しています。この遺伝子源の多様性を活用することができるのです。例えば、ススキの遺伝子操作技術はまだ確立されていませんが、ある品種によっては遺伝子導入が可能になりつつあります。バイオの新技術の開発には、遺伝子源の多様性とアクセスの容易さが不可欠で、我が国はその点において、圧倒的に欧米に比べて有利であることを認識しなくてはなりません。
 但し、ススキは雑草として今までどうしてもぞんざいに扱われています。我が国ではススキは一回も品種登録されたことはありません。つまり、必ずしも意図的にススキの遺伝子源を収集したこともなければ、育種した経験もないのです。北海道大学が現在、200種程度のススキの遺伝子源の収集を行っていますが、我が国の政府はもっと支援をしなくてはなりません。ススキなどと馬鹿にせず、世界に通用する遺伝子源となることを認識して、もっと大規模に資源保護を行わなくてはなりません。しかも、欧米ではいくつかの企業がススキに着目し始めました。我が国のススキの遺伝子源保護は喫緊の過大なのです。
 
 ススキは単位面積当たりの生産性がトウモロコシなどを遙かに凌駕します。猛烈な生産性を持っているため、エネルギー作物として極めて有望な植物なのです。しかも、冬の間、地上部が枯れると、葉や茎の窒素やリンなどの栄養分が地下茎に転流し、蓄積されます。エネルギー植物の栽培のために、窒素やリン、カリなどの栄養分を肥料として与えなくてはなりませんが、ススキはそうした栄養要求性も低いのです。畑ではなく、荒れ野や耕作放棄地に栽培することができます。エネルギー作物が食糧と農地を奪い合ったり、森林を破壊して畑を作ることによる環境への悪影響や二酸化炭素の放出が懸念さえれていますが、ススキはそうした可能性が低い作物なのです。しかも、地下茎に炭素を蓄積するため、空中の二酸化炭素を固定する作用もあります。
 
 つまり、エネルギー作物として、究極の特徴を備えているのです。先月、米国で問題とされたのは、トウモロコシの害虫がススキに寄生する可能性が明らかになったためですが、それだけ欧米ではススキを栽培することが真剣に検討されています。
 問題はこうした欧米にとって新しい植物であるススキを大規模栽培した時に本当に二酸化炭素の放出を抑制し、エネルギーや物質を持続可能に生産できるのか?という実証です。実は、阿蘇の草千里では1000年以上も前から、ススキを管理して、ススキを萱として利用してきた歴史があります。山焼きや入り会いによる管理など人手をかけないと実はススキが原は維持できません。日本では、生態学的に最も安定(極相)は森林なので、森になってしまいます。世界でも、実は社会システムによってススキを1000年以上も持続的に利用してきたのは、日本以外にあまり知られていません。ススキの管理方法、つまり大規模栽培方法のノウハウが実は、熊本に蓄積されてきたのです。これは我が国の宝物です。草千里の土壌を分析すれば、本当にススキが1000年以上に渡り、二酸化炭素を固定してきたのか?歴史的な証明にもなるでしょう。
 北海道大学がこの研究を行っていますが、支援していのが、英国のエネルギー企業、BP社であることに、私は大いなる憤慨と心配を持っています。2010年度から、ススキの資源保護から利用まで一貫した総合的研究プログラムを、立案しなくてはなりません。農水省、環境省、経産省、文科省、国土交通省、この5省が総力を挙げて、今、取り組むべき課題だと思います。
 これからススキが原を見ると、心が豊かになる日本を創りましょう。
 今週もお元気で。