また、関西に居ります。京都から奈良に移動する車内でこのメールを書いております。本当にバイオの中心は関西にあります。我が国のバイオで最も儲けているのはJR東海かも知れませんね。
 さて、まずは全豪オープンテニスから、男子は順調にフェデラーやナダルが勝ち上がっていますが、女子は波乱に富んでいます。中でも、復帰2試合目でランキングがまだ付いていないため、主催者推薦で出場しているベルギーのエナンと、昨年の全米オープンで劇的な復帰を優勝で飾ったクライシュテルスにわずか1ゲームを与えただけで完勝したロシアのペトロヴァが台風の目になっています。昨日、エナンはベルギーの新鋭、ウィックマイヤーを迎えて大熱戦を繰り広げました。ドローが厳しいために、ランキング上位と初めからどんどん当たるエナンは連日、フルセットマッチの激戦を生き抜いてきました。
 昨日も、若くて元気一杯のウィックマイヤーが小走りでチェンジコートを行っているのに対して、まるで老婆のごとくとぼとぼとベンチからエンドラインに向かっており、「大丈夫か?スタミナ切れでは」と心配が募るばかり。伊達と同じで、試合が続くと体力の回復が追いつかない。第一セットはタイブレークを制して、エナンが確保したものの、第二セットは連続して自分のゲームを落とし6:1でエナンが落としました。既にこの時、エナンは太ももをさすったり、転んだり、しゃがみ込んだり、明らかに脚にきている兆候を表していました。もうこれでエナンも終わりかと、寂寞とした思いにとらわれた第三セットでしたが、結果はなんと最後にサービスアンドダッシュを決めて、エナンの6:1で完勝でした。第二セットを捨てた勝負勘の凄さと死んだふりの見事さに、観衆も解説者も、多分、ウィックマイヤーも、そして私も勿論、唖然とさせられました。見事というよりも、何か騙されちゃった感じです。しぶとさの塊、エナンですが、唇の右には明らかにヘルペスの炎症があります。疲労やストレスのバイオマーカーです。彼女は自分自身をぎりぎりの淵に追い込んで、戦っている紛れもない証拠です。死んだふりぐらい、良いじゃないですか、立派な戦術です。
 さて、先週、皆さんに甘えて、中国語の翻訳ボランティアを募りましたが、大変大勢の読者からメールをいただきました。ありがとうございました。近日中にお願いいたしますので、どうぞよろしく願います。
 先週、関西に米国のホワイトバイオ政策に最も影響力のある研究者の一人が滞在していました。米Energy Bioscience InstituteのCris Somerville所長がの人でした。EBIは、大手石油会社の英BP社が10年間500億ドルを投じて、米国のカリフォルニア大学Berkeley校に設置した研究所です。2008年から稼働、現在300人以上の研究者が在席しています。
 「この研究所はBP社に対して次のバイオエネルギーのビジョンを提供するものだ。技術の研究も行っているが、それだけではバイオエネルギーの実用化には不十分、社会システムそのものを変えるような研究も行っている」とChrisさん。研究所というと、科学技術に偏重するイメージを持ちますが、EBIは来るべきバイオエネルギー社会の姿を考え、それに必要な技術体系や社会制度を提案することを目的としていました。
 実際、土壌から農業、バイオテクノロジー、精製・エンジニアリング、燃料開発など、バイオ燃料開発に関するすべてのプロセスを一貫して研究するだけでなく、15%の予算は社会経済学的研究に分配しています。
 BP社は単なる石油企業から現在、15億ガロンもバイオエタノールを供給する企業に変貌していますが、それでも石油事業に比べれば「バイオエネルギーは未経験分野」(Chrisさん)。それだけに、新しい技術や革新的なビジョンを提供するEBIはBP社の長期戦略には欠かせないものです。さらに、実務的にもEBIで発明された特許の権利はカリフォルニア大学システムにすべて帰属しますが、BP社は非独占的にアクセスする権利がありますし、さらには第一拒絶権をも保持し、追加資金を支払えば独占使用権も確保できる計画です。BP社の事業計画に関して、EBIは第三者として事業評価することも行っており、「BP社が大きな誤りをバイオエネルギー事業で行うリスクを低減できるのもメリットだ」とChrisさんは指摘しています。どうやら最近、そうした助言も行い、事業計画が変更された模様です。現在、これについては追加取材中です。今、日本で喧伝されることとは違う結末となりそうです。ご期待願います。
 バイオエネルギーの取材を進めていると、いつも思うのですが、はたして農地も無く、熱帯でもない、日本が一体どう貢献できるのか?
 若干この分野では自信喪失気味になりますが、Chrisさんが先週、三大学シンポで行った講演で、「次世代のエネルギー作物としてMiscanthasに注目している」と指摘、しかも、北海道苫小牧と熊本県の阿蘇で共同研究していることも明らかにしました。「スズキ」とChrisさんが発音するために、多数の聴衆は良く分からなかったと心配しますが、Miscanthasはまごうことなきススキのことで、日本の野原では良く見る風景です。日本のススキ資源とススキの栽培?あるいは雑草としての継続的な繁茂の歴史が、バイオエネルギーの研究開発に貢献できる可能性があります。
 日本での共同研究では、長期的にススキが炭素や窒素を土壌にどう蓄積するのか?ススキをエネルギー作物として大規模栽培した時の長期的な物質収支やエネルギー収支を確かめようとしています。持続可能な社会を目指すホワイトバイオですから、現在の米国農業(水田は別ですが)のように土地から栄養分を収奪し、荒廃を招くような持続不能なシステムを追及することはありません。苫小牧や阿蘇のススキが原の土壌の分析やバイオマスの分析が、今後、ススキを使った持続可能なバイオエネルギー生産体系の開発に貴重なデータを提供するはずです。
 明後日、北海道に向かいます。鍵となる研究者に取材できたら、また改めて報告いたします。日本にも環境バイオ、バイオエネルギー、そしてホワイトバイオの研究開発に決定的な貢献をする機会もある、と確信しております。
 先週は「皆さんも、それぞれ春の準備を始める時であると思います」と書きましたが
祝園のバス停はまだ冷え込みます。風邪をひかぬようと今週は皆さんにご自愛を願います。
 どうぞお元気で。