テニスの全豪オープンが始まりました。
 今年の話題は、ベルギーのエナン選手が1年8カ月の引退を切り上げ、再びコートに勇姿を現したことです。エナンは世界ランク1位で、突然引退を表明し、関係者を仰天させましたが、まるで「引退」という言葉を忘れたか如く、カンバックしました。伊達選手もそうですが、女子テニス選手の引退は信用がならない。昨年、引退した杉山選手が今回、衛星放送で解説を担当していますが、彼女も来年あたりカンバックしたとしても、もう誰も喜ばないでしょう。
 すっかり身体を絞り込んだエナンは全豪オープンの前哨戦で、Sidneyで行われたメディバンク国際テニスオープンでは、決勝戦まで楽々と進出、昨年一足先に引退からカンバックし、全米オープンテニスで劇的な優勝を遂げたベルギーにクライシュテルス選手には負けたものの、好調さを印象付けました。全豪オープンでも、幼いころからライバルであったベルギーの2選手が、台風の眼となる雲行きです。
 片や結婚・出産、カンバック、エナンは離婚・引退・カンバックと家庭事情には大幅な差がありますが、同時期に生まれた天才の二人は生涯のライバルとして、新たなテニスの高みに挑もうとしているのです。これだからテニスは面白くて止められない。
 現在、三大学連携シンポジウムのため、大阪に滞在しています。神戸大学、大阪大学、京都大学が連携して、さまざまな課題を取り上げて議論するシンポですが、今年は「バイオテクノロジーによる持続可能な社会」を議論します。朝から夜まで、ずっぽりとホワイトバイオ漬です。21世紀のバイオの有望分野ですが、オミックスやシステム生物学など、基盤となる技術群はすべて、レッドバイオ(医療・健康関係のバイオ研究)から起因したものです。どうやら技術革新の連鎖は、戦争→健康→環境・農業へと連なり始めました。戦争を放棄した我が国では、健康→環境・農業→健康→ の技術革新連鎖の回転で、成長する戦略が重要です。
 さて、個の医療です。
 地獄の沙汰も金次第とはいいますが、個の医療の技術革新も我が国の国民健康保険制度やそれ以外のビジネスモデルに適合し、売上を上げ、収益をさらなる研究開発へ廻す正のフィードバックに乗せることが出来なくては、とてもではありませんが持続可能な事業活動にはならない。つまり、研究に終わり、我が国の国民が個人ごとの特性に沿った適切な医療を受ける機会は実現しないということです。
 その意味で、2010年1月14日に開催された、厚労省の先進医療専門家会議の決断は、個の医療が我が国で定着する大きな後押しとなりました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8024/
 これは先進医療で取り上げている技術の中から、健康保険でカバーする技術や製品を選択し、最終的に診療報酬を決定する中央社会保険医療協議会(中医協)に具申するものです。今回の会議では、抗EGFR抗体医薬投与前におけるKRAS遺伝子変異検査(EGFR陽性の治癒切除不能な進行又は再発の結腸又は直腸がんに係るもの限定)と乳がんと悪性黒色腫のセンチネルリンパ節の同定のための遺伝子診断が、保険適用妥当であると具申されました。いずれも、個の医療を実現する重要な遺伝子検査であります。これで今まで実験的な医療であった個の医療が、さらに幅広く標準治療として利用される道が開かれました。
 今年は気象庁の暖冬という予想を覆し厳しい冬となりました。しかし、個の医療の普及にはひそかに春の兆しが訪れているのです。
 今週も皆さん、お元気で。
  Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満