2010年も第三週に突入しましたが、敢えて皆さんに新年のご挨拶を。
 明けましておめでとうございます。
 過去二年は経済的に暗い年が続きましたが、今年こそ本格的に我が国を縮小から成長へと大きく転換しなくてはなりません。
 まさに、日本新生の年です。
 バイオ産業にとっても、2010年は新生の年となります。その意味を込めて、9月29日から3日間、パシフィコ横浜で開催するBioJapan2010を「バイオ産業新生の時」と銘打ちました。
http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/2010/exhibitorsite/
 ミレニアム計画でバイオに大幅な研究費が流入した2000年は、皮肉にも我が国の企業が創製したバイオ医薬の申請がぱたりと途絶え、その後10年間、少数の例外を除き、海外企業のバイオ医薬だけが販売申請されるという”バイオ医薬の失われた十年”の最初の年となりました。
 この10年間、猛烈な勢いで海外のビッグファーマはバイオ医薬創製基盤を拡充、遮二無二にバイオベンチャーのパイプラインやバイオベンチャー自身を買収し、売上げの25%以上をバイオ医薬に転換してきました。最も遅れていた米Pfizer社が、昨年、米Wyeth社を買収、バイオ医薬25%倶楽部への加入を果たしました。2008年のIMSの調査で、全世界の医薬売上げの11.4%をバイオ医薬が占めました。低分子医薬の市場低迷もあり、3倍以上の成長率でバイオ医薬は市場を伸ばしています。2009年には13%を突破したでしょう。今年は15%の大台に乗るかもしれません。いつまでも、低分子医薬にしがみついていては、成長の機会を逸することになるのです。
 ここ5年間はワクチン関連企業やバイオベンチャーの整理再編成も猛烈な勢いで進み、ほぼ第一世代のバイオ医薬(生体医薬、抗体医薬、ワクチン)の国際的な再編成は終了したところです。
 その間に我が国の製薬企業は、一体何をしていたのか?
 糖尿病と循環器疾患(スタチン系)のBest in Classの創製に酔い、化学合成医薬からバイオ医薬へのコペルニクス的転換に対応することが出来なかったのです。最後の果実を食べながら宴をしていただけ。気がついたら、ビッグファーマはもう残っておらず、バイオ医薬の開発に走っていました。
 ジェネリック薬に市場を食い荒らされる可能性が低い、バイオ医薬、中でもワクチン事業を入手したビッグファーマの収益の安定性は極めて高くなりました。我が国では、ある分析によるとここ2年で武田薬品の売上げの8割が特許切れとなるなど、日本の大手製薬企業は塩野義と大塚製薬を例外に、低分子医薬の袋小路に入ってしまいました。おまけに、新政権の長期収載薬価引き下げ政策が実現すれば、金城湯地だった国内市場の収益性も墜落することになります。
 30年もバイオを取材していると、日本の産業の致命的な欠陥を嫌というほど、目にします。我が国の製薬企業の2010年問題はまさにそれです。
 つまり、いつまでも世の中は変わらないという信念の下に、過去に成功したビジネスモデルの精緻化を図ることに膨大なエネルギーを割き、そして世界で最高の技術や製造能力を持つに至るのですが、その時にはその製品コンセプトはもはや時代遅れとなり、結局は世界一番の技術を持ちながら市場性を失うという企業行動を繰り返すという欠陥です。こうした馬鹿げた夜郎自大の企業戦略のために、収益ばかりか、雇用、それも新しい市場に適合しようとした革新派の人材を社内から流出させるという愚行も繰り返しています。
 富士フイルムはとうとう銀塩写真市場で世界一になりましたが、デジタル化により市場は急速に縮小しました。トヨタ自動車はラグジュアリーカーやRSVなどで世界一の自動車メーカーになりましたが、その時に世界市場の中心は中進国に移行、低コストの車の生産能力を欠き、HV車の収益性も低いため、塗炭の苦しみを味わっています。何故、最後のババを引いてしまうのか?
 日本の産業はことごとく「戦艦大和」化は避けられないのか?
 こうした日本の欠陥をなんとか直し、新しい日本を作るのが2010年の目標だと私は確信しています。
 そのためには、1)技術偏重から、アンメットニーズの解決へ、企業や大学のミッションを変えること、2)10年も同じ社会や市場状況が続くという予断を捨てること、3)日本の市場だけでなく、世界の市場を念頭に置いた研究開発を行うこと、4)継続より変化を尊重すること、5)世界の変化に対応できる人材の育成と早期に責任を与えること、6)不況になると国に頼って再建を願うことを止めること、7)そして夢見る能力と夢を実現する能力を持つ組織へと企業を変えること、が重要であると思っています。
 変化はすべからく善であります。
 CO2、25%削減努力も大いなる変化と捉えて挑戦する起業家精神と、もし無理だった場合の政治的な解決策を練る新政権の懐の深さを期待したいと思います。
 今年もどうぞ、皆さんが元気になる良い年となるように、私たちもとびきりのバイオ情報をお届けいたします。