明けましておめでとうございます。
 あっと言う間にお正月休みが終わり、皆さん、また激務に戻られたのではないでしょうか?
 今年も湘南で初日の出を拝みましたが、元旦は水平線に雲がかかり、ハンバーグのような日の出となりました。100年ぶりの不況に喘ぐ今年を象徴していたのかも知れません。但し、2日目は快晴の空に群青の海から日の出がぽっかりと浮かびました。今年後半には景気も回復する可能性を示す識者も多いのです。
 問題は、その時に日本が新しい世界情勢に対応できる社会に変わっているか?
 我が国の新生を担う世代が育っているのか?
 医療で言えば、総ての患者を一律に治療するブロックバスターから、個の医療へどう、現在の医療システムを転換するか?が今年の課題となります。しかも、米国が急速にObama大統領の下、個の医療化を進め、新薬審査もバイオマーカなしには、事実上受け付けてもらえないような状況が生まれているため、我が国も急がなくてはなりません。2009年に総合機構がバイオマーカー相談を始めました。皆さんもどしどし、バイオマーカーの相談を持ちかけるべきだと思います。
 さて、これは皆さんにとっても素晴らしいお年玉になると思います。
 個の医療や先端医療を開発するための新しい枠組みが我が国でも芽を出しました。NPO法人 日本IDDMネットワークという1型糖尿患者の患者団体が、1型糖尿病の治療につながる先進的な研究に対し研究費の助成(第2回目)を、今年1月4日から開始いたしました。この研究費こそ、大切に活かさなくてはなりません。是非とも、皆さん、積極的にご応募いただきたいと思います。
http://www5.ocn.ne.jp/~i-net/top.html
 患者さんの医学研究への共同参画が我が国の大きな課題でした。総てを知っている訳ではありませんが、患者さん自らが自らの病気の克服のために資金や試料を提供する試みは我が国では、欧米と比べて大きく遅れています。
 米国のバイオや医学の学会などでは、入り口付近に多数の患者団体が展示ブースを設け、臨床試験への協力を訴え、さらには研究資金の提供も行う活動を良く見かけます。若年性糖尿病研究財団(JDRF)やThe Michael J. Fox Foundation for Parkinson's Researchなどが有名ですが、他にも本当に多数の患者団体が、医療関係者と共同して、新しい医療技術や新薬の開発に関与しています。
 我が国では、医療の供給者側の声が大きく、なかなか患者さんが関与することが少なかったのですが、それも徐々に変わりつつあります。医療の供給者側ももはや患者さんの協力なしには、がんや成人病など生活習慣病の病気は治せない、あるいは予防できないということを強く認識するに至っています。文部科学省のポストがん特定研究を企画する委員会も、積極的に患者団体からのヒアリングを昨年から今年にかけて行っているのは、その端的な証拠です。
 日本IDDMネットワークの前身は1995年に患者さんと家族が設立した全国IDDM連絡協議会で、2000年8月にNPO法人日本IDDMネットワークとしてスタートしました。2005年8月に来日したJDRFの幹部と会った日本IDDMネットワークの井上理事長が、JDRFが行っている研究助成活動に感銘を受けて、2005年から創設を決定、その後、3年以上かけて寄付金を募り、09年から研究費200万円を「1型糖尿病の遺伝子治療を可能にする膵臓特異的遺伝子デリバリーシステムの開発」(大阪大学)と「膵島移植におけるドナー特異的調節性T細胞を用いた免疫寛容誘導」(徳島大学)に授与しています。
http://www.saga-cs.org/IDDM/2008jyosei-osaka.pdf
http://www.saga-cs.org/IDDM/2008jyosei-tokushima.pdf
 この資金を得られることは、医学・薬学研究者にとって、私は大変な名誉であり、研究費以上に、研究者のやる気を起こさせるものだと思います。まさに、患者さんの願いを、自分の研究でかなえる、ただ好奇心故の研究とは一線を画する本当に幸せな研究になると、私は確信しています。
 昨年からWBCにも出場した阪神タイガースのエース、岩田稔投手が1勝する毎に10万円を寄附することを決定、肩を壊したため7勝に留まりましたが、宣伝効果もあり、日本IDDMネットワークへの寄附が増加しています。自らも1型糖尿病患者でインスリン注射は手放せない岩田投手の行動で、3年かかった研究助成の寄附と同額以上の寄附がたった1年で集まるまでになっています。まだまだ、小さい動きかも知れませんが、この小さな動きが、どうしようもなく硬直した日本を変える大きな力を秘めています。
 今ある仕組みを維持することではなく、現場のニーズを直視して、新しい日本の仕組みを創り上げる1年が始まりました。
 東京も冷え込んでまいりました。今週もお元気で。