本日はこれから高知に飛び、松山に抜けて東京に戻ります。
 龍馬の脱藩の経路を辿ろうという試みではありません。現在、構築中のウェブの新システムを開発するために、全国を飛び回り、40代を中心とした腕の良い外科医や腫瘍内科医のネットワークを形成中です。来年早々にも皆さんにご披露したいと考えております。一見したところ、良くあるウェブサイトのように見えますが、これはまったく新しいウェブメディアとなるはずです。
 情報過多に悩む、あなたを救うコンテンツです。どうぞご期待願います。
 しかし、消化器がんの有能な若手専門医の分布は極めて偏在しています。個の医療の普及以前に、どこに住んでいるかで、がんの治療成績が決まる現実にはなんとも悩みます。特に、東北地方や北陸地方、山陰地方など日本海側にはネットワークに参加していただくべき、若手専門医がリストアップされていません。急速に発展するバイオ医薬や標的医薬を活用するためにも、最新の情報を構造化して皆さんにお伝えする必要をひしひしと身に染みて感じます。なんとかせねば。
 さて個の医療です。
 究極の個の医療の一つであるiPS細胞ですが、この臨床応用のためにも実は、個人の多様性が大きな壁として立ちふさがりました。
 先週、横浜で開催された、日本分子生物学会で京都大学iPS細胞研究センターの高橋講師らがその一端を発表しました。
 iPS細胞を樹立するためには、支持細胞(フィーダー細胞)が必要です。通常はマウスの胎児由来の線維芽細胞の初代培養細胞(MEF)を使用しますが、当然のことですが、ヒトiPS細胞にMEF由来のマウスタンパク質などの抗原が混入し、患者さんに移植する際に、抗原抗体反応を惹起してしまいます。このフィーダー細胞を患者さんから採取した繊維芽細胞で置き換えて問題を解決しようと、高橋講師らが試みたところ、ヒトiPS細胞を樹立できる患者さんと樹立出来ない患者さんに分かれてしまったのです。14人中、3人は樹立できなかったのです。この3人から採取した繊維芽細胞は培養した限りは、特に変わった点はありません。見かけは健全な繊維芽細胞に過ぎないのです。
 まだ理由は不明ですが、iPS細胞を樹立するために適したフィーダー細胞となる繊維芽細胞を提供できるかどうか?患者さんに個人差があったのです。容易に想像できるのはフィーダー細胞が供給する代謝産物や成長因子などが不足しているか?あるいはiPS細胞の樹立を阻む物質を生産しているのか?
 いずれにせよ、マウスのフィーダー細胞や他人のフィーダー細胞由来の抗原を排除するためには、自分の繊維芽細胞を活用できれば言うことはありません。今後何故、iPS細胞を樹立できないフィーダー細胞となるのか?その原因を突き止めればフィーダー細胞不要の完全合成培地も夢ではないかも知れません。但し、現在までの経験では、フィーダー細胞無しでヒトiPS細胞を樹立すると、何故か染色体が不安定となり、細胞分裂を重ねると染色体異常が蓄積してしまいます。
 フィーダー細胞の個人差には、iPS細胞の再生医療への応用の鍵を握る、何かがあると思います。是非とも徹底的に研究していただきたいと期待しています。
 最後に、12月21日午後、東京品川で「第二段階に入ったiPS細胞の臨床応用と創薬研究の課題」を議論するBTJプロフェッショナルセミナーを開催します。上記の問題など、本当にiPS細胞を再生医療に応用するための落とし穴を徹底的に洗い出して議論します。明日のiPS細胞研究を把握した方には必見です。
 但し、もうほぼ事前申し込みで会場は満杯です。今週中にも締め切る勢いですので、どうぞ下記よりお早めに願います。締め切りの場合はご容赦願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/091221/
 今週もお元気で。