今週は皆さんにとって正念場となりそうです。
 たぶん、12月10日に開催が予定されている総合科学技術会議で、2010年度の科学技術予算の配分が決定されるためです。行政刷新会議の仕分けで、ばっさりと縮減された科学技術予算がどこまで復活するか、わが国の未来の試金石となります。是非ともご注目いただきたい。管副首相の手腕の通信簿ともなります。
 まだ暗いうちに、昨夜の風で積み重なった黄色い落ち葉を踏み分け、現在、近畿バイオインダストリーの年末のセミナーと日本糖鎖コンソーシアムの取材で大阪に向かっております。糖鎖の研究はいよいよ一つの山場を迎えています。質量分析器の急速な進展と糖鎖の回収技術の進展によって、細胞表面や糖たんぱく質の糖鎖の悉皆解析が可能になりつつあるためです。
 これによって、バイオジェネリック(厚労省はバイオ後続薬と呼びます)の品質管理や生物学的同等性の証明が一歩進むのは間違いありません。また、なかなか議論が進まなかった糖鎖の生物学的な活性の理解も深まるでしょう。将来はCA19-9やCA-125を凌駕する糖鎖マーカーや糖鎖自体を医薬品と開発できるかも知れません。
 たんぱく質性の医薬品が抗体医薬やワクチンなどによって定着した今、オリゴ核酸やペプチドが次世代のバイオ医薬となるでしょうが、第三世代の医薬品として糖鎖は極めて有望であると考えています。
 「神様が無駄なものを創るはずは無い」もしくは「進化の淘汰を潜り抜けてここまで糖鎖の種類が拡散しているのは、きっと何か機能があるはず」というまだ、根拠薄弱ですが、糖鎖の定量・定性分析の技術突破がこうした確信に合理性を与えてくれるものと期待しております。幸いわが国の糖鎖化学合成技術は世界的にも高く、生物学的機能解明の研究を加速する基盤となっています。
 米Cytel社やサミットグライコリサーチなど糖鎖ベンチャーはほぼ全滅しましたが、わが国ではまだ粘り強く生き残った企業や、協和発酵キリンの米Biowa社、塩野義製薬と住友ベークライトが合弁で09年に設立した米Ezose社など次世代の糖鎖ベンチャーも誕生しつつあります。
 抗体医薬やオリゴ核酸でもそうですが、最初の医薬品から本格的な成功まで20年の時間を必要としました。その間にはバイオベンチャーの絶滅を一度必ず経験します。糖鎖もいよいよ絶滅から立ち上がる次の10年に研究開発の段階が一歩進んだのではないでしょうか?
 これからが本当の勝負です。抗体医薬、核酸医薬で後塵を拝したわが国は、今度こそ勝ち抜かなければ後は無いと考えるべきです。
 さて先週お約束した、12月1日に開催された文部科学省のがん研究戦略作業部会の速報は、個の医療メールマガジンでお伝えしました。ブログに掲載してありますので、どうぞ下記よりご確認願います。
http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/
 まだ、個の医療メールマガジンを受信なすっていない方はどうぞ下記よりご登録願います。
http://passport.nikkeibp.co.jp/bizmail/p-med/index.html
 私が作業部会で申し述べた意見の骨子は、1)ヒトの生物学によるがん研究(げっ歯類の研究からヒトを対象とした基礎研究の追及)への転換、2)基礎だ応用だという区別は今や意味をなさず国家が支援する戦略研究は、原理原則の発見から患者さんの治療までシームレスに研究支援を行うべき(但し、好奇心に基づいた基礎研究は別の慈善ファンドや運営費交付金で行う道を確保する必要はある)、3)徹底した個の医療の追求(がん治療は放射線療法も含めて個の医療の時代に突入した。これを可能とする研究基盤の充実は極めて重要)、4)レギュラトリー・サイエンスと基礎研究の早期の接触が可能な研究体制整備、5)医療経済的解析を可能とする研究者と研究基盤の整備、6)患者や地域をがんの基礎研究に参画する研究マネージメントや研究テーマの追求(コホートスタディの重要性)、7)がんの研究戦略の明示と測定可能なそして国民に理解可能な評価法の開発、8)初等中等教育も含めたがん研究情報の提供と国民との最先端の情報共有基盤の整備、9)がんを撲滅する研究戦略の策定(急性疾患のがんを慢性疾患化するだけの研究は過程の研究に過ぎず、私たちはがんを集学的な方法で撲滅することを明確に目指さなくてはならない)、10)予防・早期治療へ研究の重心を移行させるべき、など。 文科省が支援する研究とはいえ、戦略的な研究である以上、がんの患者さんを治したり、がんの発生を予防することができなければ意味がありません。文科省のがんへの新しい研究支援の枠組みが、患者さんと国民の幸せを実現し、げっ歯類の苦悩をも癒すようになることを期待しています。
 さて、こればかりは蕎麦やの出前と混同されては困ります。
 皆さん、本当にもうすぐ締め切りです。このテーマの皆さんの関心が極めて高く、企画どおり、今議論すべきだというコンセンサスがあることに、確信を抱いております。
 12月21日の今年最後のBTJプロフェッショナルセミナーにお申し込みいただけましたか?掉尾を飾るのは「第二段階に入ったiPS細胞を創薬や再生医療にどう役立てるか?」というテーマです。皆さんとの激論を期待しています。
 もう本当に満杯札止め寸前です。どうぞ皆さん、下記よりお申し込みをお急ぎ願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/091221/index.html
 今週も、皆さん、どうぞお元気で。