今年最後のBTJプロフェッショナルセミナーにもうお申し込みになりましたか?毎年、最もホットな話題を取り上げ、皆さんと議論することを楽しみにしております。
 今年のテーマはiPS細胞。なんだiPS細胞か?と思ったあなたは実は時代遅れです。ブームが終焉した今こそiPS細胞を議論する時期が来たと考えます。実はヒトiPS細胞の研究は今年の春まで、樹立方法の研究に集中してきました。iPS細胞の樹立に必要な条件や手法がほぼ揃ったといっても良い状況となったのです。今年、iPS細胞は幅広い科学研究への展開と再生医療や創薬研究への応用を真剣に考える第二段階に入ったのです。
 今回のセミナーでは徹底的に現在のiPS細胞を検証し、第二段階に移行するための問題を浮き彫りにし、今後のロードマップを描きたいと考えています。幅広い皆さんのご参加を期待しております。残席本当に僅かとなりました。どうぞ、一年を後悔で終わらせぬように、お早めにお申し込み願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/091221/
 現在、東京駅日本橋口のサピアタワーで第二回「イノベーション創出若手人材養成」シンポジウムを取材しております。会場は満員、日本全国の大学から300人以上の参加者がすし詰め状態になっております。
 新政権の事業仕分けで、予算縮減を迫られている大学の危機感は極めて高いといえるでしょう。この事業は珍しく、事業仕分けでも良い事業と認定され、他の大学院・ポスドク支援プログラムほどは叩かれませんでした。事業仕分けの結論はしかし、「予算縮減」。関係者に聞くと、予算半減とか3分の1縮減というコメント無しの縮減は極めて優遇された結論だとのこと。
 確かに「1円でも縮減」です。
 「イノベーション創出若手人材養成」プログラムは、大学院教育を変革し、企業でイノベーションを創出する人材や地方自治体などで地域のイノベーションを起こす社会企業家を育成しようというプログラムです。
 具体的には企業への長期のインターンシップや留学などの支援に加え、企業の支援を受けた形で企業の人材が大学で教えるなどの試みも行われています。一言で言えば、アカデミアの人材を充足する大学院から、社会や企業に変革もたらす人材の育成へと、大学が大きく開かれる、もしくは開かせるきっかけとなるプログラムです。
 大学の開国がわが国が生き残るためには絶対必要です。
 さて、個の医療です。
 昨日は文科省のがん研究戦略作業部会に呼ばれて意見を申し上げました。
 そこで、がんの放射線療法でも個の医療化が猛烈な勢いで進んでいることを教わりましたが、これは来週の楽しみにしていただき、本日は個の医療もまだまだ有頂天になってはいけないという戒めを申し上げたい。
 作業部会で千葉大学医学系大学院臓器制御外科学の宮崎勝教授は鋭い指摘をしました。胆管癌の完全切除例と不完全切除例、手術不能例の生存率曲線を示し、完全切除では5年生存例は36.6%、不完切除例では5.6%、そして手術不能例では0%であると発表しました。現在、胆管癌ではゲムシタビンとシスプラチンの併用化学療法が使用されていますが、手術不能例では5年生存率に影響を与えない程度の有効性であることを指摘しました。
 胆管癌にも今後、標的医薬が開発されると思いますが、手術に勝る治療成績を本当に期待できるのか?今の段階では極めて自信がありません。
 むしろ大腸がんなどでは現実のものとなりますが、手術不能な大腸がんに抗体医薬「アービタックス」(セツキシマブ)を投薬して、腫瘍を縮小させた後に、手術で切除し、完治を目指すことが、患者の10%程度ですが、可能となりつつあります。
 がんを標的医薬によって慢性化するだけでは、患者さんの負担も膨大となりますし、猛烈な勢いで商業化が進んでいる多数の標的薬を考えると、国民医療費にとっても大きな負担となってしまいます。
 表現は微妙ですが、がんの標的医薬を第二の人工透析にしては、絶対いけません。
 アービタクスの例では、こうした手術適応可能な患者さんをどう選ぶか?が、問題となります。アービタックスは皮疹など副作用がかなりきつい医薬品です。個の医療化がこの医薬品の価値を最大化するためにも、どうしても必要だと思います。
 今後、手術、放射線療法との組み合わせなどによる標的医薬の実用化が進むでしょうが、その際に、是非とも個の医療の開発も忘れてはならないということです。
 がん治療薬の分野では、新薬開発と個の医療がまったく同一の意味を持つとさえ、私は思っております。
 今週も皆さん、お元気で。