現在、関西に滞在しておりますが、春のように暖かい。日本の四季も激しくなってきました。大阪ではもうイチョウが散っています。新型インフルエンザの患者は11月2日から8日の週で15万7626例に上りましたが、実は10月最終週よりも感染患者数は減りました。過去の季節性インフルエンザの感染経過を見る限り、一度ピークアウトした感染は減少を辿ります。これから気をつけなくてはならないのは、季節性インフルエンザの感染かも知れません。あれだけワクチン接種で大混乱しましたが、このまま無事にこの冬を乗り切れることを祈っております。勿論、この天が与えた時間の猶予を生かして、ワクチン接種を進めなくてはいけません。
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/weeklygraph/01flu.html
 しかし、ワクチンにも医薬品と同様に副作用の問題があります。このリスクをどうやって最小にするか、患者とその家族、そして医療関係者の腕が問われています。
 カナダのマニトバ州政府は、英GlaxoSmithKline社の要請を受けて、同社が細胞培養で製造した新型インフルエンザ・ワクチンの特定のロット(17万接種分)の接種を2009年11月23日中止しました。この製造ロットのワクチンを接種した患者に6例のアナフィラキシー様副作用が報告されたためです。この発生率は、同社の他のロットと比べて高かったことから、接種中止の要請となりました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/7060/
 新型インフルエンザワクチンは通常、鶏の受精卵でウイルスを増殖させますが、同社のワクチンは培養細胞で増殖、免疫力を高めるため、同社独自のアジュバントAS03を添加しています。そのため、他の新型インフルエンザワクチンの抗原量の4分の1の接種で済むという特徴があります。
 従来法の新型インフルエンザの製造能力は、鶏の受精卵の確保量に制約を受けますが、細胞培養なら大幅な供給量増強も可能です。細胞培養ワクチンは期待の星だったのです。この副作用の原因を精査して、再発を防がなくてはなりません。現在のところ、副作用発生が特定のロットだけだったので、GSK社は新型ワクチンの世界的な供給をストップしておりません。わが国の厚労省は、カナダへの調査団を派遣、12月21日に予定されている新型インフルエンザワクチンの特例承認をどうするか?判断すると発表しています。
 ワクチンでも、個の医療が重要となっています。幼子に副作用が出るリスクを告げられて、迷わない母親や少ないでしょう。今までに受精卵に由来したたんぱく質や抗原によるアレルギー症状などは報告さえており、ワクチンの接種の際にも、「卵アレルギーなどの経験はありますか?」と問診する手はずとなっております。しかし、今回は細胞培養であり、特定のロットだけにアナフィラキシー様症状が出たとするならば、細胞培養由来の何らかの夾雑物の混入か、アジュバントに対する過剰反応なのか?原因を追究してもらいたいと思います。もしアジュバントに対する過剰反応であるとするならば、副作用を起こした患者さんの間に共通した遺伝的な背景も推測されます。
 ワクチンにはつきものと、諦めるのではなく、徹底的に原因を究明、対策を打ち立てていただきたい。今後のワクチンの安全性確保にも重要な貢献をすると考えています。幸いGSK社はゲノム創薬の元祖のような企業、患者のゲノムDNAにももうアクセスしているのではないかと期待しています。副作用を起こした患者さんには誠にお気の毒ですが、是非ともご協力いただき、共により安全なワクチンの開発を進めていただきたいと願っております。
 今週も皆さん、お元気で。