ここのところの寒暖の大きさで、東京のイチョウもあっという間に、黄色くなりました。学生のころは銀杏をバケツ一杯かき集めて、塩焼きにするのが楽しみでした。新鮮な銀杏の美味さは、手のかぶれを忘れさせるものです。
 この時期になると、銀杏のちょっと臭い香りを思い出し、東京の街が美味しそうに見えてしまうのは、きっと私だけではないでしょう。
 来年のサッカーワールドカップ南アフリカ大会の全出場メンバーが確定しました。今年のフランスはいまひとつ弱く、アイルランドとの最終戦で、かろうじて1対0で出場権を確保いたしました。ジタンが君臨していたころが懐かしい。
 しかも、この一点が問題です。フランスのフォワードのアンリ選手が、ゴール前でハンドの反則を犯しながら、得点が認められたためです。インターネット上では、アンリの手でゴールを決めるフラッシュゲームやアンリの手にスパイクを履かせた合成写真などが多数アップされています。試合後のインタビューで「確かに手は使った。しかし判定は審判の問題」とあっさりアンリ選手が白状したことも、非難の的となりました。アルゼンチンの代表監督となった、かつての名選手、マラドーナのハンドによる得点(アンリよりあからさまな手シュート)が、神の手によるゴールという伝説になりましたが、これだけフランスの新聞も叩いているところを見ると、大衆の支持を集めるカリスマ性をアンリ選手が欠いていたのかもしれません。結局、国際サッカー連盟が、審判の判定通り、フランスの勝利を認め、騒ぎは終息しつつあります。
 日本人はルールに従順ですが、サッカーは戦争です。審判にばれなければ、やりたい放題のやりあいが実際には行われていることも事実。ワールドカップの嫌な側面です。「日本人にはマリーシャが足りない」とブラジルでスポーツ大臣までやったジーコが指摘していますが、狡猾さや狡さを、日本の武士道精神とどう調和させるのかが問われています。ただし、戦うなら、戦いは勝たなくては意味がありません。
 2010年度予算の事業仕分けに関しても、あれは何の戦いだったのか?敵は誰だったのかを明確にしなくてはならないでしょう?
 今回の事業仕分けを見ると、各省庁を跨いだ予算の重複、官僚の天下り団体への事業の丸投げなどが焦点になっておりました。ただし、官僚や関係者の舌足らずの答弁の結果、子供手当てや農家への直接所得保障の財源を確保するため、基本的に予算縮減の方針には極めて抵抗力が弱かったのが残念です。
 特に「科学の成果を見せろ」という金色夜叉の仕分け人に対して、科学の波及効果や、企業と政府の研究開発投資の差について説明をすべきであったと思います。仕分け人の出自を見ると、結局は大企業のバランスシートを改善する能力に長けた人材ばかり。既存の産業の合理化の議論には能力を発揮するでしょうが、新産業創造といった評価には能力不足です。また、一部、科学の専門家らしき方もいらっしゃいましたが、科学研究が必要であることが前提であり、個別研究の良し悪しは議論しないという事業仕分けの場で、発言は浮いていましたね。自分達が利用されているということに気がついていなかったのが残念。近視眼、視野狭窄の専門家は、全体のシステムを議論する場合では道具として利用されてしまうことも、是非とも皆さんご承知願いたい。
 結局、官僚が予算配分するシステムでは説得力に限界があります。稲ゲノム計画で農水省が結局、1日も早くゲノムを解読する科学者の常識に逆らい、当初の計画通り年月を掛けて、稲ゲノム解析を完了させたのも、毎年研究費が保障されていることを優先したためです。組織維持のために科学予算を投入する倒錯した世界がわが国にはいたるところに存在します。
 ここは是非とも、米国科学財団(NSF)のような科学者の組織が予算を受け取り、わが国が今必要な科学とはなにか、大所高所に立って、配分する仕組みが必要です。日本学術振興会と科学技術振興が、それぞれ旧文部省と旧科学技術庁の出先として、科学政策をまた先状態にしていることがそもそも、無駄であると私は思います。これでは、科学者は官僚の予算配分機構の添え物に過ぎません。両団体を廃止して、日本学術会議がNSF的な活動をすべきだとさえ思いますが、日本の科学者の近視眼的縄張り争いを見ると、3年計画で権限や予算を委譲し、人材の育成から始めなくてはならないでしょう。
 健康や医学研究に関しても、英国のMRCや米国のNIHなどのような、研究機関と研究資金の供給機関を設立すべきかも知れません。文科省と厚労省の研究や研究担当者の重複は多いのは当たり前で、基礎研究から臨床研究まで、シームレスに資金供給する仕組みが効率的です。
 ここ数年ブームとなったトランスレーショなる研究も、文科省と厚労省に医学・健康研究の資金供給が股割き状態にある次善の策でありました。一本化すべきだと思います。
 事業仕分けはこうした根本的な問題に切り込まなくては、単なる政治的なショーに終わってしまいます。
 人口が減少しているわが国で官僚機構の現状維持することはできません。橋本政権のようにただ足しただけの省庁再編では済まない状況です。独立行政法人化という見せ掛けだけの、国家公務員の減員ももう限界でしょう。退職金引当金と減価償却費を交付金で国が相変わらず支給する仕組みを残したため、実質的な官僚支配、財務省支配が強化されてしまいました。
 来年4月には厚労省関連のナショナルセンター(国立がんセンターなど)の独立法人化が行われますが、ナショナルセンターが負っている負債を完全に切り離し、退職金と減価償却の原資を一時に用意しなくては、国の交付金で支配されてしまいます。当然、天下りも増え、当初考えた研究やサービスの効率と質の向上とは程遠い独立行政法人となるでしょう。
 政府に資金がない段階で本当にこんなことができるのか?
 できないとすると、独立行政法人化することが良いことなのか?新政権は再考しなくてはならないと、最近思うようになりました。内閣府で医療に影響力を持つ国立がんセンター病院長の土屋さんにも頑張っていただきたいと思います。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/1475/
 結局、スーパーコンピューターなどのプロジェクトも、凍結ではなく、政策判断で復活が決まりました。今回の事業仕分けは予算編成とは、いかに鉛筆をなめなめ机上で作られる側面もあるのか?そして、予算のかなりの部分を官僚が天下っている団体が委託しているのかを、国民の前に明白に示したことは重要です。こうした無駄を徹底的に排除しながら、国としての科学研究への投資を実質的に維持、増加させることが重要です。この工夫を成就させないと、この国は科学投資を怠ってしまう可能性があります。21世紀にますますわが国が沈むきっかけを生むことになります。個別の事業の予算確保を訴えるだけでなく、科学予算投入の仕組みに対して、科学界の側から大胆な提案をする必要があると確信しています。当然、総合科学技術会議のあり方も、俎上に載せるべきでしょう。
 事業仕分けに関しては、原則を曲げて、匿名で皆さんのご意見を募ります。ブログまでご意見をお寄せ願います。
http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/
 12月21日の今年最後のBTJプロフェッショナルセミナーにお申し込みいただけましたか?掉尾を飾るのは「第二段階に入ったiPS細胞を創薬や再生医療にどう役立てるか?」というテーマです。皆さんとの激論を期待しています。
 あっという間にもう4分の1しか席が残っておりません。どうぞ皆さん、お急ぎ願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/091221/index.html
 今週もどうぞお元気で。