12月21日午後、東京品川で今年最後のBTJプロフェッショナルセミナーを開催いたします。今回のテーマは「iPS細胞の再生医療と創薬への応用」。急速に展開するiPS細胞研究はとうとう第二段階に入りました。樹立方法やiPS細胞が成立する条件はほぼ明確になりました。次はこれを創薬や再生医療応用するための課題を明確にし、技術突破を行わなくてはなりません。この作業には、医薬品医療機器総合機構などの規制当局と企業の参画が不可欠です。
 京都大学の山中教授は本気でiPS細胞の臨床応用を考えています。また、神戸市の理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターの高橋先生も真剣にiPS細胞の眼科領域での臨床研究に取り組んでいます。また、アステラス製薬なども、iPS細胞の創薬研究への展開に着手しました。ここは皆さんと周知を集めて、第二段階に入ったiPS細胞研究をもう一つ前に進めなくてはなりません。
 さすがに皆さんの関心は高い。もう既に、残席は半分になりました。満員が予想されます。どうぞ下記よりお早めにお申し込み願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/091221/
 さて、個の医療です。
 今年から研究成果が報告されるようになった第二世代のGWAS研究は猛烈な勢いで、疾患関連遺伝子を発見しつつあります。過日、お伝えしたアルツハイマー病関連遺伝子(15個)の遺伝子を発見した英Cardiff大学を中核とした国際共同研究に続き、散発性パーキンソン病の原因遺伝子2種も同定されました。
http://www.nih.gov/news/health/nov2009/nia-16.htm
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5259/
 第二世代GWAS研究は集団中の頻度は稀だが、疾患の発症を強く引き起こす疾患関連遺伝子を洗い出すために、全ゲノムを対象に遺伝子変異を解析する対象者を1万4000人から1万6000人程度まで増加しています。第一世代の患者と正常人合わせて数100人から1000人と比べて10倍以上の対象者数です。これによって、集団での頻度が低い遺伝変異が検出可能となり、疾患を引き起こす力が強いために、進化の過程で集団から除かれて頻度が低くなる真の疾患遺伝子を見出すことができます。
 今回の研究はNature Genetics誌09年11月15日号に発表されました。米国国立加齢研究所に加え、欧米の研究グループの共同研究の成果です。日本のグループはこれとは独立にパーキンソン病のGWAS研究を行い、疾患関連遺伝子を発見していましたが、その成果も、今回の研究で比較活用されています。
 結局、1万4000人のパーキンソン病患者と正常人のゲノムDNAを解析いたしました。彼らが見つけたパーキンソン病関連遺伝子は、alpha-synuclein (SNCA) 遺伝子とmicrotubule associated protein tau (MAPT)遺伝子でありました。この2種類の遺伝子は、散発性のパーキンソン病に関連しているとしても、驚きはありません。いずれも神経変性に関与することが分子生物学・生化学的研究から報告されていました。
 しかし、この成果はこうした遺伝子の前後にあるパスウェイを研究することでパーキンソン病を治療する医薬品や病態を示すバイオマーカーを開発する重要な手がかりを与えます。対症療法や細胞移植の試行など、限定的な治療法しかなかった、パーキンソン病の克服に明るい話題を与えたと思います。
 第二世代のGWAS研究の成果をいかに効率的に新薬開発に結びつけるか?知財をどうするか?私たちの宿題を早く解かなくてはなりません。
 こう記事を書いていると、第一世代GWAS以前の伝統的な家系分析によって疾患遺伝子を探求していたアイスランドDeCode Genetics社が、自主的な破産整理(チャプター11)を申請したと09年11月17日に発表しました。誠に技術の変遷が激しいのがバイオの宿命なのかも知れません。
http://www.decode.com/News/news.php?s=32
 今週も皆さん、お元気で。