東京は、素晴らしい秋晴れです。
 気温が高く、木の葉がまだ色づいていないのだけが残念ですが、まさに秋たけなわ。天高く私/あなた肥ゆる秋だけは避けなくてはなりません。
 先週のメールでもちらっと予告いたしましたが、名古屋市立大学や東京大学などが参加している厚生労働省研究班が、現在、C型肝炎治療で最も効果があるペグIFNとリバビリンの効果が少ない患者を選別するSNPsを発見しました。SNPsの影響の強さを示すオッズ比は22-27倍と極めて高く、このSNPsを持つ患者はペグIFNとリバビリンの併用で治療効果が期待できないことが明らかになりました。SNPsの信頼度を示すP値も10の-30乗と極めて高い数値でした。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5398/
 ペグIFNαとリバビリンの併用はC型肝炎治療の特効薬ではありますが、日本で重症C型肝炎の7割を占めるC型肝炎ウイルス1bに感染し、しかも血中のウイルス量が多い患者の約5割が効かないという問題が残っていました。
 月7万円から8万円の自己負担が必要な高額なペグIFNとリバビリン併用療法が効かない症例を選抜できるこのSNPsは極めて重要です。現在、臨時国会で民主党が提出を予定している肝炎法案にも影響を与える可能性があります。
 オーストラリアのグループも同じ結果を独立した研究で発表しており、科学的には
間違いないと考えます。
 もう一つ重要なことは、今回の研究が究極のC型肝炎治療法に繋がる可能性があることです。個の医療は個人毎に効果的な医療を開発するという意味もありますが、もう一つは何故、この患者さんに効かないのか?という原因を究明することによって、より多くの患者さんを救う新しい治療法の開発をも実現させます。
 今回、判明したSNPsはいずれもインターロイキン28B(IL28B)の遺伝子とその上流に存在し、SNPsを持つ細胞株ではIL28Bの発現が弱まることまで確認されています。IL28Bはインターフェロンλ3とも呼ばれています。IFNλ3はIFNλ1(IL29)受容体とIL10受容体の複合体と結合し、Jac/STATを通じて、インターフェロン応答遺伝子群の発現を誘導します。
 IFNα(ペグIFNα)はINFα受容体1と2の複合体と結合し、同じくJac/STAT経路でシグナルを伝え、インターフェロン応答遺伝子群を発現させる。つまり、ペグIFNαとIFNλ1とは受容体こそ異なるものの、Jac/STAT経路を共有して肝臓細胞の核内でインターフェロン応答遺伝子群を誘導していたのです。どうやらペグIFNαとリバビリンの併用が効果を示すためには、IFNλ3が正常に作用していなくてはならない、つまりC型肝炎ウイルスを駆逐するためには、IFNαとINFλ3の二つのシグナルを同時に入れる必要がある可能性が出てきました。
 ペグIFNαとインターフェロンλ3の併用療法が、究極のC型肝炎治療法となるかも知れません。少なくとも早急にこのアイデアを検証する必要があるでしょう。
 ウェブで情報を検索していたら、米ZymoGenetics社が昨日、2009年10月27日から、C型肝炎患者に対するペグINFλ(PEGを結合したINFλ)の臨床試験フェーズIIを開始、という発表を見つけました。
http://www.zymogenetics.com/ir/newsItem.php?id=1346567
 さすがにバイオベンチャーは早い。しかし、詳細を調べると同社が臨床開発中のINFλは実はINFλ1、つまりIL29でありました。少なくとも日本の研究グループの結果では、ペグIFN(IFNα)とリバビリンの併用の患者選択に関係するSNPsはIL24A(IFNλ2)とIFNλ1の近傍には存在していません。
 この事実が、ZymoGenetics社の足を掬いかねないと思っています。ILFλ1でもC型肝炎に臨床試験で効果はあるようですが、これはINFαと同等しか期待できないかも知れないからです。
 いずれにせよ、我が国の国民病であるC型肝炎を撲滅するためにもIFNλ3の研究を力強く推進する必要があります。マニュフェストでC型肝炎治療支援を公約している民主党には、医療費だけでなく根本的な治療法開発支援にも、是非とも頑張っていただきたい。
 最後に、12月21日午後、東京品川で「第二段階に入ったiPS細胞の臨床応用と創薬研究の課題」を議論するBTJプロフェッショナルセミナーを開催します。最先端の研究者と医薬品医療器機総合機構を交えて、真剣に皆さんと議論したいと思いますので、どうぞ時間を確保願います。
 今週もお元気で。