BioJapan2009にご参加いただき、大変ありがとうございました。
 昨年以上の熱気でバイオのプロフェッショナルの集いを行うことができました。台風をものともせずご参集いただいた皆さんにひたすら感謝です。
 BioJapan2010は、2010年9月29日から10月1日まで、再びパシフィコ横浜で開催いたします。皆さんどうぞ日付を確保願います。
 さて、10月10日のサッカー日本代表vsスコットランド戦ご覧になりましたか?なかなか点が取れずやきもきしておりましたが、自殺点を含む2点はまずまずの結果です。森本のゴール前のトラップとすかさず一回転したシュートは見事。フィニッシャーの能力を示しました。こぼれ玉を蹴り入れた本田の嗅覚も優れていました。清水エスパルスの岡崎も加えて、日本代表に3人もストライカーが誕生しつつあります。中盤だけ強い、今までのチームとは一味もふた味も違います。やっぱりサッカーは点を取らなくてはなりません。14日のトーゴ戦も楽しみです。
 しかし、9月30日に行われた欧州チャンピョンリーグのバルセロナvsディナモキエフとの試合と比べると、まだまだ雲泥の差がわが国の代表にはあります。このままでは南アフリカのワールドカップ、ベストフォーは夢のまた夢、もう一枚も二枚も大型ディフェンスを強化しなくてはならないのではないでしょうか?
 さて個の医療です。
 BioJapan2009で成功したベンチャー企業のセッションでおよびした、オンコセラピーサイエンスの角田副社長に、米国食品医薬品局(FDA)ががんの治療用ワクチンの臨床試験に関するガイドライン(案)を、2009年9月17日に発表したことを教わり、なおかつPDFまでメールしていただきました。
 がんワクチンは、外科手術、放射線療法、そして抗がん化学療法に続く第四のがん治療となると注目されております。わが国でも久留米大学・グリーンペプチド、東京大学医科研・オンコセラピーなどのグループが世界と実用化でしのぎを削っています。両社ともフェーズ3臨床試験に近く入る構えです。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5981/
 英国GlaxoSmithKline社の「MAGE-A3 ASCI」(悪性黒色腫、非小細胞肺がん)やドイツMerck Serono社の「Stimuvax」(非小細胞肺がん、乳がん)がフェーズ3の臨床試験に入っていますが、これは第一世代。ロシアで認可されて世界最初のがんワクチンとなった米Antigenics社「Oncophage」(腎臓がん)も、がん抗原全体を使うため第一世代と考えてよいと思います。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1976/
 日本の二社が追求しているがんワクチンは、日本人が幅広く認識するペプチド抗原です。日本人が一般的に持つHLAに結合するため、かなりの日本人に有効な免疫原性を持っています。特異的ががん抗原のエピトープを合成したがんワクチンを第二世代と名づけています。患者さんのHLAや自己抗体を解析して、ワクチンの有効性をあらかじめ予測可能です。まさに第二世代のワクチンは個の医療ともいうべきものなのです。
 がんワクチンに関しては、「効く、効かない」の議論が続いています。ひどい表現では「ただの水だ」という悪口も聞いていますが、どうやらこうした効能効果に関する論争に終止符を打ち、がん治療用ワクチンの臨床開発の明確な方向性を示したのが、9月17日にFDAのホームページに掲示され、現在、意見を募集中の「Guidance for Industry, Clinical Considerations for Therapeutic Cancer Vaccine draft」となりそうです。がんワクチン推進派も反対派もぜひ、ご一読願います。
http://www.fda.gov/BiologicsBloodVaccines/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/Vaccines/ucm182443.htm
 ポイントは、1)投与後に長期(6ヶ月以上)の観察をしないと、がんワクチンの治療効果を評価できない、2)投与直後では一時的にがんが進行する場合もある、3)化学抗がん剤とは異なり、転移がんやがん末期の患者で安全性や有効性の評価をすることは、患者の免疫システムを利用するがんワクチンでは難しい、4)がんワクチンの有効性を証明するには、患者の免疫システムの状況を測定する2種以上のバイオマーカーが臨床効果とともに必要である、5)がん患者の状態や事前の化学療法などの状況を勘案して、対象患者をがんワクチンでは選別する必要がある、6)がんの退縮をがんワクチンでは余り期待できないため、臨床試験のエンドポイントを工夫する必要がある---などである。
 とどのつまり、従来の化学抗がん剤と同じように臨床評価しては、がんワクチンの有効性を評価できないとFDAが宣言したのですね。少なくともがんワクチン投与後、半年の間には逆にがんが進行する場合もあるので、この間に着目して化学療法と比べると、「がんワクチンなど水に過ぎない」という悪口になるのですな。
 がんワクチンの臨床経験が蓄積されるにつれ、まだ原因は不明ですが、どうやらがんワクチンは投与後(投与量にあまり関係なく)、半年後ぐらいから効果が出てくることがわかったのです。6ヶ月以降はがん患者の生存にがんワクチンはかなり有効であることが、今後の臨床試験で続々と報告されると期待しています。
 ただし、問題は今までのがんワクチンの臨床試験が古臭い化学抗がん剤の臨床試験を下敷きに行われているという点です。これでは正当な評価が行えません。FDAのガイダンスきっかけに、欧米そしてわが国のがんワクチンの臨床試験計画は大きく変更を余儀なくされています。
 つまりこれからが、がんワクチンの臨床開発の本番が始まるのです。
 欧米のビッグファーマの後塵を若干拝していたわが国のバイオベンチャーも今やがんワクチン開発のスタートラインに横一線に並んだといえるでしょう。今こそ、熱い期待を寄せる時がやってきたと考えます。
 今週も皆さん、お元気で。