現在、大阪でのメタボローム取材のため、新幹線のぞみの車中におります。窓の外は雨、西に向うほど、車窓を叩く雨音が大きくなってきました。
 米Metabolon社が開催するセミナーに参加します。先々週は東京で同社のライバルである、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT)もセミナーを開催しており、メタボローム研究、特に疾患関連バイオマーカー探索技術としての注目度が急上昇していることがうかがわれます。その鍵となったのは下記の論文で、前立腺がんのバイオマーカーとしてサルコシンを発見、しかもこの物質そのものががんを増殖させることを突き止めました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9718/
 この権利はMetabolon社が持っていますが、実は創業者でもある研究者が、同社を既に離れ米Michigan大学へ移籍、現在、ヒトのメタボロームの大型プロジェクトを立ち上げつつあります。しかも、今度の共同研究相手はHMTであるという複雑さです。いずれにせよ、Metabolon社のHPLC-MSか、HMTのCE-MSか、世界の受託メタボローム解析で一騎打ちの様相を呈してます。
 私としてはCE-MSとHPLC-MSの両方が必要であるという認識です。技術だけでなくヒトの代謝産物のMSプロファイルのデータベースと前処理方法が、受託解析ビジネスの勝者を決めると思っております。これからが長い戦いです。
 長い戦いといえば、昨夜9時半から始まったウインブルドンの男子決勝は一体何時に終了したのでしょうか?5:7、7:6、7:6、3:6、16:14で、フェデラーが結婚後絶好調のロディックを打ち破りました。まさに薄氷の勝利でした。ウインブルドンの最終セットにはタイブレークがありません。どちらかが2ゲーム差をつけるまで、果てしなく戦いは続きます。それにしても、合計77ゲーム。最短で勝てば18ゲームで終わるはずですので、実に4試合以上、決勝戦のプレッシャーの下で戦いを繰り広げ、しかも最終的には勝ってしまう、フェデラーとは何者のなのか?昨年の全仏でナダルに完敗して大泣きした男は、見事に挫折を糧に一段と成長を遂げました。ここまで来ると、不気味さが出るくらい、したたかで強い。絶対相手にしたくない選手です。
 もっとも本気で相手にしてくれるはずもありません。まったくの杞憂です。
http://www.wimbledon.org/en_GB/scores/cmatch/21ms.html
 早朝の出張を控えていたため、第4セットでロディックがフェデラーのサービスゲームを陥落したところで、これはロディックが勝利すると思い寝てしまったのが、大失敗。歴史的な試合の結末を見損ないました。しかも、ブルーレイでこの試合を見るのもあまりの長時間なので、一仕事です。週末、雨が降ることを祈りたい気分です。
 
 ここから再びバイオです。
 フランスのsanofi-aventis社がオープンイノベーションに挑戦することを宣言しました。この記事やプレス発表を読んでも良く分かりませんが、研究開発の効率を促進するために、外部の研究資源をどんどん活用することらしい。同時にリストラせずという発表もしており、労働組合との協議や、フランスベースの研究開発拠点は残すとも公表しています。こうした状況を見ると、世界的な景気後退と米国のObama新政権誕生による米国市場の収益性低下見込みなどに対抗し、米Pfizer社や米Merck社などの米国のビッグファーマは巨大買収を再び始めて対抗するという、ワンパターンの対応に終始しているのに対して、やはりフランス革命の国は違うという印象を持ちました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3683/
 大企業の研究所が創造性を失ってしまい(私はもともとあったかどうか疑っています)、技術革新、中でも急速に加速しつつあるバイオの技術突破に対して、常に後手に回っている、悪循環を断とうというのが、今回のsanofi-aventis社の一手です。Pfizer社なら現在の研究員をリストラして、バイオ研究拠点を社内に外部人材を招聘することで、整備したでしょう。同社が再生医療やバイオ拠点の開設はまさに、元バイオベンチャーの経営者を招聘して行いました。しかし、実際にはそれでは満足できず、生物製剤企業大手の米Wyeth社を買収、同社の再生医療やバイオ研究拠点を企画した人材は、09年5月にPfizer社を去りました。
 米国企業のように、リストラが簡単に行えない、あるいは行うことが正義ではないと考えるフランスでは、sanofi-aventis社のように、オープンイノベーションに研究開発の柱を移し、従来の社内の研究者に外部研究者と共同研究やライセンスを行う能力を再教育することで、大きな経済的な変化に対応しようというのです。中でも、社外の成果を低く評価する"NIH症候群"(Not Invented Here)を直し、創薬の全体のプロセスを理解した上で、同社にとって最も必要な技術やシーズを、最も適切なタイミングとコストで社内に導入する、技術マネージメント力が重要となります。今まで、中央研究所でぬくぬくと蛸壺に嵌っていた研究者は、蛸壺から出て、外界で餌を漁らなくてはならない時代となったのです。但しsanofi-aventis社の発表でも、自主的な退職は同社が全面的に支援するプログラムを用意すると、歓迎している感じが見え隠れします。
 オープンイノベーションは技術革新の激しい業界の終身雇用を守る機能もあります。しかし、残ったひとも勿論、自分自身を新しい創造的な研究開発環境であるオープンイノベーションに適合させなくては生き残れないことも事実です。自分の研究と外部の研究ネットワーク形成のバランスを取る、感覚を研ぎ澄ませなくてはなりません。
 10月、こうした新しい環境に皆さんが馴染めるか、試金石を用意いたしました。
 10月7日から9日、横浜で開催する我が国最大のバイオマッチングイベント、BioJapan2009です。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/2856/
 既に、25社以上のビッグファーマや我が国の大手企業が会場内に、ブースを設置することを決定、加えて世界30カ国以上、我が国の全バイオクラスター、そして我が国のバイオの研究開発を推進する、理研、産総研、東京工業大学、慶応大学など有力大学、さらに国内外のバイオベンチャー600社以上が参加します。参加企業数ば急速に増加中です。医薬、診断薬、医療機器、創薬支援技術、機能性食品、環境・エネルギー分野の技術シーズや共同研究の導入を是非、ここで実現願います。
 昨年は850件以上の面談を実現、今年は倍増したいと考えております。そのために効率の良い、マッチングソフトも完成、確実なアポイントの交渉を可能としました。しかも、今年は無料で無制限に活用できます。まだ、登録数が少ないうちに登録すれば、相手先からアポイントの声がかかる確率も高くなります。どうぞ下記よりご登録願います。今からメールで横浜でのアポイントを取ることも可能です。
https://exponet.nikkeibp.co.jp/match2009/?action_login_input=true
 マッチングソフトの使用法は下記をご参照願います(少し重い)。
https://exponet.nikkeibp.co.jp/match2009/manual.pdf
 今や研究者もIQだけでなく、EQも重要となったのです。
 今週もお元気で。