福島出張の帰りの新幹線でこのメールを書いています。窓外には田植えが済んだ田んぼの暗い土色の水面にどんよりとした曇り空を映しています。暗い水面にまるで緑の剣山のように稲の幼苗が茎を突き出しています。
 今にも梅雨入りを迎える雰囲気でした。
 来週、理研発のベンチャー企業が、SNPsのタイピィングと次世代シーケンサーを組み合わせて、新たな個の医療のためのサービスを開始することを発表すると案内がありました。いよいよ、次世代シーケンサーも研究室から臨床現場に貢献するところまで成長しつつあります。
 もう、この技術は夢の技術でも基礎研究でもなく、どうやって使いこなすかを議論すべきのなのです。
 6月19日に開催する次世代シーケンサーのBTJプロフェッショナルセミナーでは、我が国の主要な研究者と行政の担当者を招聘し、次世代シーケンサーをわが国でどうやって駆使するか?その体制整備はどう進めるべきかを議論したいと思います。
  センター化か?分散化か?
  今後技術革新はまだ続くため、いつ、どう投資すべきか?
  最大の問題として浮かび上がってきた、データ処理をどうするのか?
  事業化のロードマップは?........
 締め切りが迫っております。どうぞ下記のサイトより詳細の上、お早めにお申し込み願います。
 スポンサーのご厚意で学生無料招待枠も確保しました。どうぞ下記からご登録願います。
 http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/090619/ 
 さて、今週の月曜日のBTJ/HEADLINE/NEWSでも書きましたが、とうとう米国ではイヌのがん治療薬として標的医薬が認可されました。米Pfizer社がヒト用に実用化しているマルチキナーゼ阻害剤、「Sutent」の誘導体です。今後、ペット薬の分野にも、標的医薬が浸透し、いずれその標的を診断し、投薬する個の医療の道が拓かれたのです。イヌも幸せな時代になりましたね。
http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/2009/06/202936.html
●BTJ/HEADLINE/NEWSのお申し込み(無料)は下記からどうぞ。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?id=20025913
 昨日、三菱化学メディエンスを取材しました。同社は三菱化学系の診断薬メーカー、受託検査ラボ、安全試験の受託機関の3社が合併して誕生、今年4月から本格的に事業統合した企業です。
http://www.medience.co.jp/
 薬効評価から、安全性試験・前臨床試験、そして臨床治験のサポートまでの総ての領域で、製薬企業を支援することができる、我が国唯一の総合創薬支援企業です。
 そして同社が目指すものは、間違いなく個の医療の実現なのです。個の医療がどんどん拡大すれば、臨床試験におけるバイオマーカーの探索や解析、臨床検査と一体となった投薬(個の医療)など、同社がバイオ技術を集中投下する事業領域は拡大する見込みです。
 同社は2006年12月から、板橋区志村の事業所にバイオバンクを開設、我が国での臨床試験で収集した血液やゲノムDNAをGLPに準拠して預かる事業を開始しました。現在、我が国の大手製薬企業のほとんどから、受注するまでになっています。まだ、バイオバンクの試料から、ゲノムDNAを抽出して、ゲノムワイドにSNPs解析をするまでには、我が国の製薬企業のニーズは熟していないようですが、今後、市販後臨床試験による副作用の報告に対応して、遡ってバイオバンクで預かった臨床試験の試料を解析するケースもあるだろうと思います。ここで副作用に関連するSNPsやバイオマーカーが発見できれば、医薬品のドロップを防ぐことができます。
 医薬品企業としては、新薬のリスクマネージメントに貢献すること甚大ですが、患者にとっても、より安全性を確保し、有効性が保証された新薬を使うことができる点で、大きなメリットであると思います。
 マスメディアでは副作用が出るとまるで敵のように製薬企業を攻め立てますが、投入された資金や臨床試験に参加した患者さんの善意を失うばかりか、本来なら副作用が生じず、薬効を享受できる絶対多数の患者さんの治療機会を失うことに、思いを至る必要があると思っています。副作用に関連したバイオマーカー(SNPsなど)の発見は、副作用による有望新薬の機会逸失を抑止する最も有効な手段であると思っています。総ての臨床試験で、患者から試料を集めたバイオバンクを15-20年間保存することを、実現しなくてはなりません。厚労省ももっと臨床試験試料のバイオバンクを勧奨する手を打つべきでしょう。
 昨年9月に発表したPGxのQ&A(事実上のGCP基準下におけるPGx臨床試験のガイドライン)だけでなく、総ての新薬の臨床試験に患者試料の保存を義務付けるべきであると、私は確信しています。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/6362/
 我が国では、三菱化学メディエンス以外にも、ファルコやオーダーメイド創薬、メディビックなどが、バイオバンク事業に乗り出しています。バイオバンク事業は15年以上継続し、しかも試料の取り違えや個人情報の漏出などの事故がなくてはなりません。かなり信頼性構築のための、投資やノウハウが必要であるため、国家による認証制度なども検討しなくてはならないと思います。一度、預けた試料は患者さんの善意に応えるだけでなく、新薬の市場への定着と適正使用のために、確実に保存され、いざという時に解析できなくてはならないためです。
 今では昔話になったと思いますが、大学等の倫理委員会で、臨床試験終了後には患者の試料を廃棄しなくてはならないという大時代的な主張が多く、バイオバンクでの15年から20年の保存が頓挫したというケースもありました。
 倫理委員会の先生方も、是非ともバイオバンクの重要性を認識していただきたいと思います。ここが一番問題なのかも知れません。
 世界は、そして厚労省も変わっているのです。
 今週もどうぞお元気で。