6月19日に開催する次世代シーケンサーのBTJプロフェッショナルセミナーの締め切りが迫っております。どうぞ下記のサイトより詳細の上、お早めにお申し込み願います。スポンサーのご厚意で学生無料招待枠も確保しました。どうぞ下記からご登録願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/090619/ 
 シャラポアの肩に貼られたテーピィングが痛々しい。
 相変わらず凄い闘志で、アンツーカーのコート上で雄たけびを上げています。まるで美女で野獣ですが、その叫びに哀愁が漂ったのが今年のローランギャロスです。スロバキアの新鋭に完敗、コートを去りました。肩の手術後の復帰戦でした。肩の負担を考え、サーブは全盛期を10-20km以上も速度を抑えざるを得ず、その分厳しいコースに打ち込むため、必然的にダブルフォールトが山積みとなりました。錦織、伊達、両選手も全仏は故障のためリタイアしました。いかに世界のトップで戦い続けることが、フィジカルにもメンタルにもぎりぎりの試練を選手に要求するのか、眼前に示しました。
 バイオテクノロジーでも、世界最先端で戦うためには、メンタルにもフィジカルにも厳しい状況に研究者が曝されますが、テニスと違うことは勝利の定義が多様であることです。テニスはゲームを制し、2セット、男子の場合は3セットを先に取れば勝ちですが、バイオの発見は再現性と必要十分条件さえ保証されれば、新たしい現象や分子を発見すれば勝ちとなります。つまり、テニスという種目には縛られず、何か新しいことを追求するという自由があるのです。
 世界でたった一人しか研究していないテーマを研究する者こそ確実な勝利者となるのです。
 但し、iPS細胞が直面しているように、一度、そのテーマの重要性が認識されると、一つのテーマに世界中が殺到し、全仏テニスのような過酷な戦いが始まります。初めの発見と、その後の現象の詳細な解明とその産業的な応用は、全く違う支援手法が必要であることを示しています。
 2006年までは4種の転写調節因子を成人細胞に入れて、初期化するというクレージーなテーマは山中伸弥教授のグループ以外は手をつけていなかった。Harvard大学のグループは、成人性幹細胞やES細胞から分化した前駆細胞に転写調節因子2種までを導入し、初期化をオーソドックスに研究していましたが「まさか4種も必要とは思わなかった」とその当事者は発言しています。
 しかし、その後、世界で続々と追試され、今や理想的なiPS細胞とそれから分化した理想的なヒトの細胞という目標に向って、世界で1000以上もの研究室が殺到するようになりました。こうした状況では、科学研究費補助金と同じ発想で、オールジャパンの研究チームを支援することは、誤り以外何者でもないでしょう。研究支援体制も進化させなくてはなりません。
 若手研究者に支援するためのギャンブル的小額の研究費(なるべくクレージーな本質的なアイデアに多数投資)とiPS細胞の研究開発やオーダーメイド医療実現化プロジェクトのように100億円から数1000億円の長期間に亘って投入する研究費では、支援の仕組み、参画する人材、支援資金源の多様性、産学官連携のあり方、研究評価とマネージメント体制にも技術革新を起こす必要があります。
 世界第一の自動車企業、GMが国営化された現在、我が国の政府の中には、iPS細胞のような大型技術革新は国営科学研究を進めるべきだという声もあります。しかし、これは本当でしょうか?私は絶対誤りであると思います。
 これだけ変化の早い時代に、国が資金を供給することは重要ですが、プロジェクトの運営や課題の選択を国が行うことは不可能です。賢明な米国政府はGMの経営には口を出さないと言明しています。政府はリスクを犯せません、また硬直的な人事システムでは才能も集められません。単年度予算では長期的、しかも機動的な資本投入も出来ません。しかも、利益追求という最終的な評価の仕組みを欠いては、国際的に市場を奪い、事業化を進めることも難しいでしょう。
 現在、2700億円を投入する大型国家プロジェクトが09年度の補正予算で計画されています。これを政府が課題をトップダウンで決める、実は自民党のF議員が決めるという噂もあります、という形が本当にワークするのか?心配です。分配だけは、可能でしょうが、本当に国際的な競争に勝ち残る研究運営の仕組みを創出することは考えられていません。このタイプの科学プロジェクトの経験が深い、科学技術振興機構(JST)ではなく、科学研究費補助金を分配している日本学術振興会(JSPS)に2700億円の基金を置き、このプロジェクトを遂行することも気になります。
 旧科学技術庁系のJSTと旧文部省系のJSPSの予算分配の均衡を図ったとしたならば馬鹿げた話です。日本の想像力を決める大型プロジェクトであればあるほど、金のばら撒き先だけでなく、その後のプロジェクト支援も真剣に検討する必要があります。今回は研究者を決め、その後、支援機関を決めるという新しい試みも行われる予定です。こうしたプログラム執行に関する新しいやり方を導入する意欲があるならば、もっと組織的にこのプログラムを成功に導く体制作りも支援機関丸投げ以外に、真剣に考える必要があります。こうしたことを考えることこそが、総合科学技術会議の本来の機能だと思います。
 今回は個の医療にまったく触れませんでしたが、現在、開催中の米国臨床腫瘍学会(ASCO)のメインテーマが個の医療であることをお伝えして、失礼いたします。
少なくともがん治療では個の医療の時代です。 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/2785/ 
 皆さん、ありがとうございます。
 どうぞ皆さん、お元気で。