6月19日に開催予定のBTJプロフェッショナルセミナー、お申し込みになりましたか?申込者が殺到しております。近く、助手、大学院生、学生の無料募集もスポンサーのご厚意で開始いたします。残席に余裕がなくなる可能性もあります。
 どうぞ下記よりお早めに。今回は読者の誰もに関係する次世代DNAシーケンサーを議論します。予想外に急速にこの技術はバイオを変えつつあります。
 ご存知の通り、新型インフルエンザ対策にもDNAシーケンサーは大車輪で貢献しています。次のバイオの世界がここにあると思います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/090619/index.html
 さて、昨日から全仏オープン選手権が始まり、本格的なテニスシーズンの幕開けです。今年の日本選手のテーマはカンバックとなりそうです。故障からの復帰の錦織選手と、これが成功すれば空前絶後となる伊達選手にご注目いただきたい。いずれも過労と故障との戦いになりますが、何とかグランドスラムの本選での活躍を一目みたいと思います。伊達選手の抗炎症剤のコマーシャルに説得力があるのは、本当に辛い練習をこなして、今あるためです。
 何故か、首都圏での新型インフルエンザ患者の発生も少なく、関西圏では感染のピークが過ぎたという報道も出始めました。でもこれは本当でしょうか?勿論通常のインフルエンザと同様なら、このウイルスは湿度に弱く、感染力を急速に失います。そのため、感染は北半球で終息し、南半球に移るというのは合理性があります。政府が先週方針を変えて、感染が広まった地域(大阪や神戸など)では、封じ込め対策を撤回、季節性インフルエンザに準じた対策を実施しました。次善の策としては止むを得ないでしょうが、JRの通勤快速が多数の学生やサラリーマンを毎日、移動させている現状を見ると、感染者が少ない京都と滋賀県で本当に封じ込め対策を取るべきかは、極めて疑問です。我が国での感染例も増え、毒性が低いことが判明した今では、むしろ季節性インフルエンザとしての対策を徹底した方が良いと思います。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news5/2009/090521_3.htm
 狼狽する自治体や事なかれ主義から、今回の新型インフルエンザウイルスと比べ100倍以上も致死率が高い高病原性インフルエンザウイルスの感染防止対策を先週の金曜日まで墨守していた政府に対して、きちっとした見識を示したのが、京都大学でした。5月21日(メールでは6月21日と誤記してしまいました、申し訳ない)に患者が発生した京都府と京都市の要請で、京都府立医科大学など43の大学が休校しましたが、5月25日現在、京都大学は正常通りの授業を継続しております。大学として、最新の状況に基づいて、科学的に判断をしました。こうした大学の見識が、パニックに走ったり、科学的判断を放棄して現状と異なる対策に固執する政府を覚醒し、政策決定者が政府内外の研究者の情報にもう一度、耳を傾ける機会を生むと確信しています。
 神戸大学、兵庫医科大学、大阪大学、大阪府立大学、大阪市立大学、関西医科大学、近畿大学、京都府立医科大学などの医学系学部を持つ大学は、学生に患者が一人も発生しないのに、休校を決めました。
 自治体立の大学はスポンサーの言うことを聞かざるを得ないという苦しい状況があるでしょうが、何か、見識を示しても良かったのではないかと思います。科学的な情報が蓄積する大学であるからこそ、自由に発言すべきだったのではないでしょうか? 改めて、京都大学の首脳陣の判断に、敬意を示したいと思います。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/2558/
 もう一つ検証しなくてはならないのが、各自治体の感染症の調査体制です。
 神戸市は公衆衛生研究では先進地域の一つです。この地域に最初に国内感染例が発見されたのは、地域の医療関係者の意識の高さと、感染症の検出体制の質の高さにあったと判断しています。東京などで感染者がなかなか発生しなかったのは、観測する感染症調査体制の精度に問題があったと、どうじても思います。これだけの人口とこれだけの海外からの渡航者が流入する東京にしては、感染者の報告のタイミングが遅く、その数も少なすぎます。神戸でも海外渡航者を中心に遺伝子検査を行っていたため、国内感染例の遺伝子検査試験が数日間、検査に取り掛かるまで時間がかかったという報道もあります。
 患者がいなかったのか?患者を観察できなかったのか?
 この問題は、命にかかわる高病原性の鳥インフルエンザウイルスの感染防除には極めて重要な課題です。患者の発生例がない、もしくは少ない自治体の感染症検出体制の再検討はどうしても必要だと思います。たまたま、新型インフルエンザの発生がなかったからといって、喜んではいけないのです。この機会に足下の安全体制を拡充すべきだと思います。今週のScience誌で今回の新型インフルエンザウイルス、50株のゲノム解析の結果、このウイルスは系統樹を書くと、元となったウイルスから相当遺伝的に離れていることが分かりました。新型といっても最近発生した訳ではないのです。メキシコの寒村で生まれたウイルスは長い時間、豚とヒト、鳥との重複感染を重ねながら、感染力を増し、パンデミックを引き起こしたのです。世界中を見れば、こうしたパンデミック予備軍は多数存在します。文科省新興・再興感染症研究拠点形成プログラムで、神戸大学がインドネシアで、H5N1(鳥インフルエンザ)ウイルスのゲノム疫学調査を行っています。4州402頭を調査したところ、52頭がH5N1に感染していました。うち1頭に感染していたH5N1ウイルスはヒトの上気道細胞の受容体に結合する可能性を示しています。
 一難去ってまた一難。今回の新型ウイルス騒動を検証して、本当の意味で国民とその暮らしを守る対策を捻り鉢巻で立案しなくてはなりません。
 感染封じ込め対策も行き過ぎると、地域経済を疲弊させます。修学旅行や学会、イベントなどのキャンセルで、今判明している限りでも関西の観光業は深刻なダメージを受けています。
 そんなことを議論していましたら、「猩紅熱と書くと、平成11年3月に伝染病予防法が廃止されるまでは法定伝染病で、患者を隔離しなくてはならなかった。そこで溶連菌感染症と診断して、抗生物質で治療することが実際行われるようになった。今回も豚インフルエンザを、新型インフルエンザと名前を変えたので、過剰な対応を起こさざるを得なかった」という意見を耳にしました。一休とんち話ではないのですから、こんな言葉遊びで、国民の生命と経済に関わる感染症対策をお茶を濁すようではなりません。もっと科学者の声と最新情報、そして感染者の数だけではなく、病原体の感染力と毒性を勘案した、現実的で分かり易い対策が必要です。
 現在、新興・再興感染症拠点形成の次のプログラムを決める委員会に参加していますが、「インフルエンザウイルスは鼻腔(鼻の奥)で増殖するので、通常のうがいの効果は期待薄。日本からの論文しか、うがいの効果に関する研究はなく、海外ではあまり関心もない」という意見も出ていました。
 うがい、手洗い、マスクの感染対策3種の神器に対する再評価も必要ですね。
 今週もどうぞ、お元気で。